第3話

「うわぁっ……?!」

そんな紬に気付いたネコが、慌ててこちらに駆けつけた。

「まったく……また居眠りして。アオイさん、起きてください」

ネコは小さな身体を駆使し、蒼の身体をあちこち叩きつけた。

「起きてください、お客様がいらしてます!!」

蒼の髪の毛を引っ張ったり、腕に噛み付くも、蒼はピクリともしなかった。

そんな蒼に、ネコはとうとう痺れを切らした。

「起きろっつてんだろーが!!」

ネコは蒼の耳元まで移動し、大声で叫んだ。

すると、蒼は驚いたように慌てて起き上がった。

「ご、ごめんごめん、作業中に思わず寝ちゃった」

苦笑いを浮かべながら、頭をかく蒼に、ネコはふてくされたように頬を膨らませた。

「寝ちゃった、じゃないですよ」

蒼は向かい側の一人用のソファ方へ移動し、置いてけぼりの紬を奥に座るよう、うながした。

「改めまして、ようこそ”はつこい屋”へ」

蒼は目を輝かせながら、紬を歓迎した。

そんな蒼とは対照的に、紬は慌てて首を振った。

「わ、私は客ではなくて……!」

紬の様子に、蒼はキョトンと固まっていた。

「え、でも、このお店に来たってことは、SNSの宣伝か、何かを見て来たってことよね?」

確かにこんな森の中にあるお店は、何か宣伝でも見ない限り知ることはないだろう。

「いや、ここに来たと言うか……気が付いたらここにいて……」

紬は、ここまで来た経緯を蒼に詳しく説明した。

すると、蒼は腕を組み、何かを考え始めた。

「もしかして、あなたがこのお店を必要としたから、ここに辿り着いた……とか?」

「このお店が必要……?」

紬は、その言葉の意味が分からず、店の中を見回した。

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