第4話

「あの、ここって何のお店なんですか?」

紬の問いかけに、蒼の肩に乗っかっていたネコが、テーブルの上に飛び乗り、説明を始めた。

「ここは”はつこい屋”です。蒼さんの魔法の力で、お客様の初恋を実らせるお手伝いをしております」

「初恋を実らせる……?魔法で……?!」

魔法なんて、この世に存在するとは思っておらず、紬は驚嘆の声を上げる。

「こちらの蒼さんは、魔法使いなのです。オラ……じゃなくて、ワタクシは、その蒼さんに仕えるネコ、チャーミーと申します」

しゃべるネコの次は、魔法使いなんて、信じられない。

蒼の方は、顔立ちこそは整っているが、黒髪マッシュのヘアスタイルに、身長も体型も平均的な普通の青年に見える。

チャーミーは、相変わらずネズミにしか見えないけれど。

「魔法を使って初恋を実らせるって、洗脳とかってこと……?」

「そんな物騒なことはしないわよ!!」

紬が恐る恐る尋ねると、間髪入れずに蒼が言い返した。

「アタシと、チャーミーの魔法を使って、ちょっと手助けする程度よ。あとは、お客様の頑張り次第」

「客の頑張り次第なら、魔法に頼っても意味がないのでは……?」

紬がすかさず問いかけると、蒼が溜め息をついた。

「実際に魔法を見せた方が早そうね。チャーミー、見せてやって」

蒼が命令すると、”かしこまりました”とすぐさま応答した。

「ジンチェ・デ・ウホマ……!!」

チャーミーが呪文らしき言葉を並べると、彼の身体が光で覆われ、一瞬目を開けることすら出来なかった。

光が落ち着き、目を開けると、そこにはチャーミーの姿はなかった

「あれ?チャーミーは?」

紬が辺りを見回すと、”ワタクシでしたら、こちらです”と、低い声音が背後から聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る