第一章 「不思議なお店、はつこい屋」

第1話

その日の帰り道、紬は考えていた。

どんな告白をされたいかなんて、考えたことがなかったから。

だけど、考えれば考えるほど、なぜだかどんよりとした気持ちになる。

せっかく、晴れ晴れとしていて、雲ひとつ無いキレイな空なのに。

恋愛のことに関して考えると、何でこんなにもモヤモヤした気持ちになるんだろう。


そんな考えごとをしていると、突然強い風が吹き始めた。

目を開けるのも困難で、紬はカバンが飛んでいかないように、ぎゅっと強く手提げ部分を握った。

しばらくすると、強風も落ち着き、目を開けた。

そこは、先ほどまでいた景色とはまるで違っていた。

道路沿いを歩いていたはずなのに、車なんて一つも走っていない。

そう、ここは真っ暗な森の中だった。

草木が生い茂る中、少し進んだ先に、灯りが目に見えた。

とりあえず、灯りを目印に真っ直ぐ歩き始める。

灯りの正体は、小屋の中の電球だった。

その小屋は木製で、少し古そうな大きめの小屋だった。

屋根に飾ってある看板には、大きな文字で、”はつこい屋”と書かれていた。

どんなお店なのかよく分からないが、道を尋ねようと恐る恐る小屋のドアをノックした。

「すみませーん」

しかし、時間が経っても、中から返事はなかった。

なので、ドアノブをひねると、なんと、扉が開いてしまった。

「失礼しまーす……」

なるべく音を立てないように、ゆっくりとドアを閉め、奥へと歩き進んだ。

外観は古臭い感じだったが、中は意外とキレイに保たれていた。

灯りのついた部屋の前まで進むと、紬の前を小さな何かが横切った。

「きゃあっ……?!」

その物体は、思いのほか素早く、姿をとらえられなかった。

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