第6話


カバンを漁っている途中で、意識が戻り、紬は不思議そうに蒼とチャーミーを見つめた。

なので、今起こったことをすべて蒼が説明した。

「今のはアタシの得意魔法、”印象・記憶操作魔法”よ」

要するに、蒼は紬に、あたかもチャーミーが有名人であるように見える魔法をかけた。

これが、”印象操作魔法”というものだ。

「でも、これを使ってどう手助けするの?」

「この魔法を使って、お客様の日常に侵入するの。時には近くでお客様の様子を見守ったり、時にはお客様を助ける恋のキューピットになるのよ」

蒼の言葉に、”なるほど……”と、紬は納得したようにうなずいた。

「ワタクシの変装魔法は、生物でしたらどんな人間にでも変装できます。幼児にだって、社会人にだってなれるんだぜ……いや、です」

つまりは、生物であれば老若男女誰から依頼が来ても、問わずに引き受けるということらしい。

「というか、蒼さん、ただのお客様にこんなに種明かしをしてしまって、よろしいんですか?」

チャーミーが重要なことを告げると、蒼は慌てて”確かに!!”と立ち上がった。

「いや、だから、私は客じゃないので……」

紬がすぐさま訂正を入れると、”そういえばそうだったわ”と、蒼は腰を下ろした。

「あなた、好きな人はいないの?」

突然、蒼は紬を真っ直ぐに見つめた。

「好きな人は、いないです。そもそも”好き”というものがよくわからないので……」

気難しそうな顔で考え込む紬に、蒼は不思議そうに彼女を見つめる。

「おかしいわね。それなら、何でこのお店に導かれたの……?」

蒼は、紬とチャーミーの顔をそれぞれ見合わせるも、みんな不思議そうな表情を浮かべていた。

すると、紬は、”実は……”と、うつむきながら口を開けた。

「私、恋愛には疎くて。周りの恋バナにもついていけないことが悩みなんです」

少し恥ずかしそうに打ち明ける紬に、蒼もチャーミーも真剣に耳を傾けた。

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