前日譚─3

真っ白な制服を青いシミが染めていく。

初めての事態だ。だがいつかこうなることは予想していた。

だから皆、こうなった時の対処法は事前に何度も打ち合わせを済ませていた。


「保健室へ運ぶ前に全員シルシを千切れ!」

ハルマの指示で、直ぐさま各自小指の付け根に巻いていた糸を千切る。

「これでメトへの負荷が減るはずだ。皆、わかっているとは思うが再確認をしよう。

シルシが無いとメトと私達とのツナガリが切れ、青の侵食から護って貰えなくなる。

外出は青に染まるリスクがあるから絶対に出ないように。

外気すらなるべく吸わないようにしろ。」

みなが頷き了承したことを確認し

「よし、メトを保健室へ!」


──────────────────────

「──んえ、あれ……」

「っ!目が覚めたぞ─」

言い終わるか否か、我先にとベットに集まってメトの無事を確認する為に駆け寄る。

「わわわ!みんなどーしたの?メトのベット取り囲んで。ちょっとこわいよ〜」

そういつも通り無邪気にへへへと笑う彼女を見て、安堵の声が重なる。

「メト、あなたが血を吐いて倒れていて。だから保健室に運び込んで……それで、大丈夫?体調はどう?」

「ユノ!えへへ、そっか。ついに倒れちゃったんだ。まだ大丈夫だとおもってたんだけどな……ちょっとだけあたまが痛いけど、でも大丈夫そうだよ!」

そう笑いながら自分の服を見て、ほんとだあお〜い。と他人事のように笑っている。

だが、はっと気付いた様に顔が強ばり

「まさか、みんなシルシを外したんじゃないよね。」

メトには、自分に何があってもシルシだけは外すなと言われていた。

「いや、外したよ。メトが必要以上に苦しんでまで助かりたくは無い。」

ハルマの言葉に、メトはむすっとした顔で

「メトは、皆とのお別れが早まる方がいやだ。メトが倒れたって死ぬわけじゃないもん」

そうは言っても……と説得するも効果はなく、メトはぶすくれてしまった。

「困ったな……」

頭を搔き悩むハルマに、シセが大丈夫。と声をかけ言う

「メト、安心して。

シルシが無くてもぼく達はすぐ青に染まるわけじゃない。

ちゃんと注意すれば侵食はある程度予防できるから、

もう少し休んで、メトが沢山元気になって、

そしたらまたシルシを繋いでくれるかな?

ぼく達もメトと沢山一緒にいたい。けど、無理だけはして欲しくないの。」

ゆっくり、しっかり、メトのショートヘア撫でながらお願いをした。


「わかった……次繋ぐまで絶対に染まらないことっ!これがじょうけん。メトとのやくそく。みんな、次は絶対守ってね。」

あぁ。わかった。と皆が承諾し、順番にメトと指切りをしていく。

「全く、流石みんなのお姉ちゃんシセだな。あのメトをこんな簡単にな宥めるなんて。」

「ハルマだって頼れるまとめ役じゃない。お互い様よ。」

そんな光景を見たケルンもため息を零す。

「ほんと、男が生き残ってなくて良かったわね。みんなシセに夢中になって使い物にならなくなるもの。」

「同性の私達でさえちょっと危ないのにね。」

そう言って苦笑うユノ

ケルンはまたため息をし

「業背負い少女メトにお熱なあんたが何言ってんだかね。」

小声で呟きユノを小突くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る