フィナーレ
いやー、これはいったいいつ終わるんだ……という空気になってまいりましたね。
大丈夫、分かっております。ご安心を。
いよいよ本日のフィナーレを飾る賞の発表に移りたいと思います。
ちゃんと聞いていてね。
表彰。
「とっても幸せで賞」。
ここまで、こんな謎の茶番に付き合ってくれてありがとうございます。
でも、私はあなたなら最後まで付き合ってくれるんだろうなと思っていました。
私、すごく幸せです。
あなたのことが、恋人として、尊敬する人として、よき友人として大好きです。
こんなに大好きな人と一緒にいられて、本当に幸せです。
あなたは私にとって世界で一番素敵な人で、私は他のどんな人生を歩んだ私よりも、一番幸せな毎日を過ごしていると自信をもって言えます。
本当にありがとう。
私を世界で一番幸せにした功績を称え、ここに表彰いたします。
どうぞ。……これに慢心せず、これからも励むことを期待しています。いいね?
……さて。
さてさてさてさて! これで本当に終わっていいのかな? 良くないね⁉
アンコール……いきたいよね⁉
ほら、あんこーる……あんこーる。一緒に!
アンコール! アンコール!
アンコールありがとう!
それではアンコールにお応えして、もうひと賞! いきましょう!
……これで本当の本当に最後の賞です。
「結婚しましょう」!
あの……この間は本当にごめんなさい。
あなたがプロポーズしてくれたこと、本当に嬉しかったです。
ずっとあなたしかいないと思っていたから。
なのに、あの場ではっきりと回答しなくて、すごく悪いことをしたと思ってます。
あなたが色々考えて準備してくれて、それはもう素敵なプロポーズでした。
嬉しくて、泣きそうなほど暖かい気持ちになって、でも返事しようと口を開いたときに思っちゃったの。
……私は全部してもらうだけでいいのかなって。
だって、私もこんなにあなたのことが好きで、あなたとずっと一緒にいたいと思っているのに「ありがとう、嬉しい」って言って受け入れるだけで終えてしまったら、私は納得できるのかと思ってしまったの。
本当にごめんね。
「待って。私も好きだから。私もプロポーズするから待って」って全然意味わかんないよね。
私、あれを笑って受け入れてくれたあなたは本物の変人だと思うわ。
初デートでビンタされても許すし、プロポーズを異常言動で保留にされても怒らないし、一体どうなっているのかしら。
私はあなたじゃなきゃ絶対ダメだなって改めて思ったわ。
とにかく、待たせちゃった分、私も絶対あなたが嬉しいって思ってくれるプロポーズしなきゃと思って、それが今日の表彰式でした。
どう? びっくりしたかな。
びっくりは……したよね。私、おかしかったもんね。
とにかく緊張と、もう気持ち全部ちゃんと伝えなきゃって思いでいっぱいで……。
ねー。ふだんはもっとお淑やかなのにねー。
はじめにプロポーズしてくれたあなたと比べたら全然だとは思うんだけど、それでもすごく緊張しちゃった。
凄いね。あなたはこれよりももっと凄い緊張を超えてプロポーズしてくれたんだ。
それが分かっただけでもしてよかった。
……いやいや、私が分かってるだけじゃ駄目だった。
私があなたといてどれだけ幸せか伝えたくて、こんなわがままさせてもらったんだから。
私の気持ち、ちゃんと全部伝わってるかなあ。
「お仕事頑張っているで賞」。
「家事ありがとうで賞」。
「旅行楽しみで賞」。
「運動しま賞」。
「もっと返事が欲しいで賞」。
……「お米買いま賞」。
「とっても幸せで賞」。
人生のどこを切り取っても賞になっちゃうの。凄いよね。
毎日が記念日。一分一秒が表彰。
本当にそうなの。あなたといると。
気持ちの問題なんかじゃないわ。
あなたって本当に凄いの。もちろん私も。
あなたといると、それに気付くの。
みんなが特別ともまたちょっと違って、私とあなたの特別なんじゃないかなって私は思う。
多分見つけたり、気付く人がいるかの問題だから。
よく言うじゃない?
「二人なら、喜びは二倍。悲しみは半分」って。
それと似ていると思う。
ひとりでも二人でも、元々の出来事自体は変わらないけど、自分の気持ちを見てくれる人がいることで、確かにひとりのときとは全然違うものになる。
それって気持ちの問題だけじゃないでしょ?
嬉しいときなら、誰かがそれを知っていてくれる喜びとか、一緒に喜んでくれる喜びで膨らむの。
そんな風に見てくれる人、気付いてくれる人がいることで変わるものってあって、私の毎日はあなたがいてくれるから全部特別になってるんだ。
ひとりでも見つけられる人は見つけられるから、そういう意味ではみんな特別って言ってもいいのかもしれないけど、それだってやっぱり見つける人がいないと駄目だから。
だから、これは私とあなたで見つけた特別。
あなたとじゃなくちゃ気付かなかった特別。
私の毎日を、特別にしてくれてありがとう。
私だけの話じゃないよ。
もちろん、あなたの毎日も特別なんだから。
いつもちょっと自信のないあなただけど、それは今日の表彰式で分かってくれたかな。
毎日働いて、毎日家事して、毎日自分や誰かのために生きて、偉い。
とっても素敵よ。
あなたも、あなたの人生も。
私がそれを知っているわ。
……うん、これで全部。
全然全部はまだ言えてないけど、ひとまず今はこれで全部。
私がこれだけ幸せなこと、あなたがとっても素敵なこと、
ちゃんと伝わったなら嬉しいな。
全部あなたのおかげで見つけた。
私、あなたと一緒にいられることが一番幸せだよ。
それにあなたを一番幸せに出来るのも私だって思ってる。
あなたのこと、愛してる。
だから……結婚しましょう。
頑張っているで賞 直井千葉@「頑張ってるで賞」発売中 @701kizotari
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます