第八話 再び集う者達の名は
― 一九四五年五月二四日 海軍木更津航空基地
首都防空隊 side鮫島―
南雲が死んでからもう二年半が経とうとしています。
この二年
帝国軍は四三年四三年五月、アッツ島で初めて玉砕が起こりました。
要は全滅したということです。
一〇月。一時、太平洋側にいる米空母をすべて、撃沈、または撃破し戦局を優勢にしたものの、敵潜水艦等の猛攻により南方のガダルカナル島への支援が滞ってしまい戦局は泥沼化しました。
四三年十二月大陸打通作戦、通称俊一号作戦を発動させ、中華戦線を押し上げましたが、幾度かの海戦で
その後、餓島からは撤退
翌年四月、山本長官が戦死なされるという大事件が起こり、軍部は大混乱に陥ります。
そして、四四年六月十五日本土が敵の新型の大型爆撃機によって初めて空襲されました。
迎撃網の構築や、襲撃が夜間だったこともあって損害は少なかったようですがその予想以上の性能に軍は舌を巻いていました。ですが、双発戦闘機や、新型の迎撃機を用いることにより、三度目の空襲では十四機以上を撃墜する大戦果をたたき出すことに成功します。
しかし、同年八月にマリアナ諸島が陥落、これにより本土の多くが爆撃圏内に入ることとなってしまい八幡製鉄所付近の重工業地帯以外にも関東の重工業地帯などが爆撃されるようになりました。
そして今日、四五年五月二十三日大規模な空襲があるとの情報から海軍航空基地には各地から集められた多くの迎撃部隊が集結していました。
「お久しぶりです。小隊長、今は大尉殿ですか……おめでとうございます。
噂は耳にしておりました。腕は落ちるどころかますます上がっているようですね。」
「貴官こそ、おめでとう。青葉一等飛行兵曹、お久しぶりです。それと、世辞はいいよ。青葉一飛曹の方がたくさん、階級が上がっているのではないかい?全く、羨ましいですよ。」
「いえいえ、戦時特例でどんどん階級が上がっただけですから、嬉しくはありませんよ。」
「それは私も一緒です。全く……虚しくなる……」
この年齢で、そこそこの戦果を挙げているとはいえこれだけ階級が上がるということは、そこにいたはずの人間がいないということです。
「ここに来る前は中隊長までやらされたのです。まったく、味方が死んで階級が上がるというのは気分のいいものじゃありません。」
「すみません。」
「いや、いいんです。皆、わかっていますから……
そういえば、鈴木は?元気してるのですか、貴方は確か鈴木と仲が良かったでしょう?」
「ええ、詳しくは軍機だそうですが、何やら新兵器を利用した部隊に配属されたらしく、張り切っていましたよ。」
「そうか、彼のことです。より強くなって帰ってくるでしょうね。」
「確かに、そうですね。というかそうでないと困ります。」
「そうか……それにしても、全く腐れ縁ですね。また同じ小隊になるとは、また、私が小隊長で、君も同じ第十三小隊です。ほんとに腐れ縁にもほどがあります。」
「そうですね。全く、いやな縁を持ったものです。」
「そりゃあ、どうゆうことです?青葉一飛曹」
「小隊長の部隊にいると碌な目にあいません。他の隊にいて、よくわかりました。」
「ははは!確かにそうかもしれませんね!せいぜい死なないようにしてください。」
「はぁ、了解しました。ところで小隊長ほかにあと誰がいるんです?鈴木はさっき話した通りですし……」
うん?ああ、そうでしたね。えーっと
「安田と前田という方らしいです。即席の小隊になってはしまいますがうまく連携をとれるようお願いします。」
「了解」
安田と前田さんですか、どんな人なんでしょう?
「あの~すみません。失礼ですがちょっとよろしいですか?」
「何か、用か?」
「ええ、私、前田と彼、安田というのですが第三○二海軍航空隊の第十三小隊の方を知りませんか?」
二人で顔を見合わせる。
「えーと…私たちが第十三小隊の者で…私は、青葉一飛曹です。安田二飛曹、よろしく」
「私が小隊長の鮫島大尉です。よろしく頼みますね。」
「よ、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
それにしても、わからず同じ小隊に声をかけてきたとはなんとも奇遇なものだ。
こうして我々第十三小隊のメンバーがそろったのだった。
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