第五話 発進準備!


あれから俺たちはMI作戦、言うところのミッドウェー攻略作戦に参加することになった。

この作戦、何故かは知らねえが情報は筒抜けでな、攻撃目標の情報は艦内で極秘扱いされていたにもかかわらず港で新米の運搬員が


「次はミッドウェーですね。」


なんて言ってきた日は大層驚いたもんだ。全く、これらの情報が敵米英に伝わっていないことを祈るばかりだぜ。

ちなみに、このことを聞いた鈴木はさよ子の仇を取るとか何とか言って意気込んでいたがな。全く死なねえといいが。

参加兵力は航空撃滅戦用の尖兵として我々第一航空艦隊として

空母赤城、加賀、飛龍、蒼龍を含む

空母四

戦艦一

重巡洋艦じゅうじゅんようかん

軽巡洋艦けいじゅんようかん

駆逐艦くちくかん十二

油槽艦ゆそうかん八隻。

上陸作戦の際の主力艦隊として後方に連合艦隊旗艦大和やまと、直掩用として空母鳳翔ほうしょう瑞鳳ずいほうなどを含む

戦艦九

空母二

重巡八

軽巡五

駆逐艦三九

水上機母艦四

工作艦一

油槽艦一〇

輸送艦一三

さらに偵察用に前衛艦隊が出貼てって、軽巡一、潜水艦母艦五、潜水艦二三

総数空母六

戦艦一〇

重巡一〇

軽巡七

駆逐艦五一

油槽艦一八

輸送艦一三

水上機母艦四

潜水艦母艦五

工作艦一

潜水艦二十三

哨戒艇などを含めれば一三八隻以上が参加する連合艦隊の総力を挙げた一大作戦だ。

そんな重大な作戦であるのだから、俺を含め、小隊一同意気込んでたんだ……




― 一九四二年 六月四日 日本時間 午後一〇時三〇分

           (現地時間 五日午前一時三〇分) side 南雲―




「一番機発艦!帽振れ~!」


その号令に合わせ、目いっぱい帽を振る。


今回は、攻撃隊に参加するんじゃなくて艦隊直掩勤務だ。

あ~あ、久しぶりに暴れられると思ったのによ

艦隊を護衛する大事な任務とはわかっちゃいるんだが、戦いの頻度と規模はちいせえしなあ……


「ああ、行ってしまったね。さあ、みんなどちらにせよ敵が来るだろうから、準備を怠らないように。では、攻撃隊発艦完了までは英気を養っておいて。以上解散。」

「「「はっ!」」」




―加賀 格納庫内―




そういや、今日は饅頭の日だったな。

よっしゃ!いっちょ鮫島のやつと食いに行くか。


あ、いや、そういえば鮫島のやつは会議だったな……うし、しゃあねえあいつら誘うか。

相変わらずあっついなあこの船は……お?いたいた、

うん?なに話しているんだ?


「……おい、落ち着け鈴木。確かに、攻撃隊には参加できなかったが、どうせ奴らはこっちに来るんだ。なにも奴らを殺れねえわけじゃないんだ」

「……そう、だな。だが、やってきたやつは全部落とす。それが、復讐の始まりだ。鬼畜米英共め、俺からさよ子を奪ったこと、後悔させてやる。」


お?やる気十分なんだろうが。方向性が、ちと不安だな。

よし、なら誘うついでに発破をかけてやろう。


「ははは!その意気だ。鈴木!ただ、空戦中に目の前の敵だけに気を取られて落ちるようなヘマはするんじゃねえぞ。」

「な、南雲さん!」

「ご、ご苦労様です。」


驚きつつも、まあ、そこは皇国軍人。先輩への礼儀のつもりかご丁寧に敬礼をしてやがる


「堅苦しいのは嫌いだと前から知ってるだろうが!まぁ、ご苦労なこった。さて、そろそろうちらの出番だろう。だから、飯は忘れんようにな。

たらふく食わんとまともに戦えん。確か、今日は配給で饅頭があったはずだ。俺はお前らの分の饅頭をたらふく腹に入れていくとする。お前らもいくぞ!」

「「はっ!」」


「……戦場だとは言ってもな、笑うときは笑え、じゃねえと面白くねえ」

「お話のところ失礼します!出撃の準備ができました。ご搭乗願います。」

ちっ、饅頭はお預けかよ、あれ食わねえと調子でねえんだがな……

「了解した。出番だ、行くぞ。饅頭はお預けだ。」

「「はっ!」」


はあ、まだ、硬てぇか。

これは、一つ昔ばなしでもするか。


「一応、もう一度言っておくがな、鈴木よお。確かに、敵を落とすには腕が必要だ。そして、この間からのもう訓練でそれをある程度お前は手に入れた。

だけどな、そんな状態のおまえじゃぁ帰ってこられん、目の前の敵だけに視野が狭まり敵に返り討ちにされるのがオチだ。そうなってはお前のやりたい復讐の続きもできんだろう。

……復讐なんてのは虚しいだけだ。

昔……と言ってもお前たちが来る二年ほど前だったか?

昔から一緒だった幼馴染が目の前で敵に撃墜された奴がいた。

そいつはその瞬間これまでほとんど表に見せなかった復讐の火をつけた。お前みたいに人一倍訓練にも励んでいたから、へまを犯すような奴じゃあなかったんだ。俺より強かったかもしれねえ。

でもそいつはあっさり死んじまった。なんでだと思う?」


「……分かりません。」


「それは、重爆の援護をしていた時だった。敵がわんさかやってきてな。そいつは真っ先に突っ込んでいった。最初はな、そりゃあもうすさまじい戦いぶりだった。バッタバッタと敵を打倒していったんだ。

……だが気づくと奴は的中の真っただ中にいやがった。

いくら何でも何機もの敵に囲まれて勝てるわけないし、重爆隊から離れっちまって俺たちも援護すらできない。

あっちゅう間に撃墜された。仮にも奴は何機もの敵を一瞬にして落としたエースだ。敵の勢いも盛り上がってな重爆隊を守り切れなかった。」


「……私は、そんな失敗はしません」


「はぁ……まだわかんねぇのか?

別にな、お前が一人で自殺したところで悲しみはしようがここの奴はそんなに困らねえ。

ただ、そのせいで墜とされる同胞がいる、散る同胞がいる、死ぬ民間人がいる!俺たちは軍人だ。

命令は果たさなきゃなんねえ。護衛という初歩的な命令も果たせない奴に私事を挟む権利はねえ!

それが、手前みたいなのを生み出さないためにできる最善手だ

死ぬならなあ一人で海にでも飛び込んでろ!他人に迷惑をかけんな!」


「……ッ!

……了解しました。では今日は冷静に敵をバッタバッタと落としてやりたいと思います!」


「おっしゃ!その意気だ。さあ、小隊長はいつの間にか搭乗してやがる!怒鳴られんうちに俺らも続くぞ!」

「「応!」」


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