閑話 帰宅



― 一九四二年二月某日 長崎県 長崎市 某所 ―


あれから、約四ヶ月が経ち四度の作戦に参加した僕ら一航戦、加賀航空隊は不時着水含め四機の損失がありながらも作戦に特に問題はなく、快進撃を続けていた。

しかし、座礁という予期せぬ事態によって佐世保港に帰投、修理を受けている。

そんな最中、せっかく帰ってきたのだからと休暇をもらったので、愛しき妻、和子とその子供たち鉄男、そしてまだ見ぬ晴也が待っている家へ続く道を急ぐのだった。


「ただいま~」

「っ!お帰りなさい。鉄男たちが待っていますよ。

鉄男~!父ちゃんが帰ってきましたよ~」


「ほんと!?」

「ええ、嘘じゃないわよ」

「ちょっとまって!」


まだ幼さが残りつつも前見たときのようにトテトテといった感じではなく、ダダダダダと軽快に走ってきている音が聞こえ出したころ。

ぼそっと。


「帰るときはご連絡をください。ちゃんとお迎えの準備をして待っていますから……」


と、小声で言われ少々申し訳なく思うのだった。


「とうちゃん!おかえりなさい。」

「おう、ただいま。鉄男、いい子にしてたか?」

「うん!とうちゃんも元気だった?」

「もちろんだ。父ちゃんお国のために遠い海で頑張っていたんだぞ~」

「そうなんだ。やっぱ、とうちゃん凄い!僕も大きくなったらとうちゃんみたいな飛行機乗りになる!」

「そうかそうか。それじゃあ父ちゃんももっと頑張らないとな。そうだ、晴也は?」

「晴也ね、居間にいるの!こっち来て」


鉄男に腕を引っ張られながらやってきた部屋には一人の天使がいた。やはり赤子というのはいつ見ても可愛いな。


「よ~し、おいで!」



そこには戦の中にいることを感じさせぬ幸せな一つの家族があった。

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