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今日はできあがった制服を各領地の『代行役所』に届けに行くというバーラムトさんについて参りました。
近衛省舎の近くにあるのですが、各領地によって使っていらっしゃるお部屋の広さが全然違っております。
領地の広さや衛兵隊員の数でも違いが出るのですが、広い場所は当然税金や使用料が高いのだそうです。
豊かさでも、各領地には結構な違いがあるのですね。
「どこの衛兵になるかで待遇も変わるだろうからね。ここはとても参考になると思うよ」
入る前にバーラムトさんが、こそっと耳打ちしてくださいました。
豊かなところでは毎年衛兵も多く増えるし、待遇も勿論良いのですがなんと言っても制服の替えが多く支給されるらしいのです。
それは見逃せない条件ですね!
だいたいは平時用二着と式典用で三着なのでしょうが、セラフィラントやロンデェエストなどは季節ごとに生地が違ったり、男性と女性で違う形だというのです。
やっぱり、セラフィラントは豊かなのですね……
代行役所のお部屋は一番広く、そして最も衛兵志望者に人気のある領地なのだそうです。
セラフィラントには『海衛隊』という、海の護りに秀でた方々もいらっしゃるといいますから衛兵隊の人数もとても多いみたいです。
船に乗って外洋に出ることもあるのだとか……!
セラフィラントの船は大変心地いい船でしたから、ちょっと気になります。
そして、セラフィラントの次はロンデェエストが大きな事務所でしたが、意外なことにそんなに大きな事務所ではないリバレーラの方が、かなり人気があるらしいのです。
「リバレーラって……かなり昔に『事件』があったと伺ったのですが、それでも人気がありますの?」
「ああ。その時に従者家系がまったくいなくなったから、かえって『面倒事』がないんだよ」
バーラムトさんは軽い口調で仰有います。
わたくしが『従者』でないことを、ご存知だからだと思うのですが。
だけど、ちょっと複雑な気持ちです。
従者がいない方が、面倒事がない……って。
でもそうかも知れませんよねー。
エイシェルスのヘッポコっぷりや、ニレーリア様の所にいたあの方々を思い出すと、絶対にもう、存在が『面倒』ですもの。
「しかも、リバレーラはご領主様も次官様も女性だから、女性の神官や商人ももの凄く多い」
「働いていらっしゃる方々にも、女性が多いのですか?」
「うん、そうだね。しかもとてもお強い方が多くてねぇ。リバレーラの女性に憧れる男も多いんですよ」
「まあ、男性が強い女性に憧れますの?」
わたくしが不思議そうな顔をしていたのが面白かったのでしょうか、バーラムトさんはとても楽しげに、そりゃあそうだよ、と仰有います。
「腕っぷしなんてものは身体と魔法を鍛えれば、誰だって強くなるものだからね。だけど、リバレーラの女性達には心の強さがあるんだよ。『不屈』とでも言うのかねぇ」
心の強さ。
今のご領主様から五代ほど前に起きた『大事件』。
その時にリバレーラ次官リヴェラリム家の家格と、臣民からの信頼は地に堕ちたと言います。
でもそれを乗り越えて、凶事の記憶を払拭するほどの支持を勝ち得たのです。
「リバレーラの方々の素晴らしいところは、家格なんてものより臣民の心を大切にしてくださったことだ。だから、あれほどまでに早く立ち直り、領地もあそこまで豊かになったんだよ」
今でも領主様や次官様達は積極的に臣民の意見を取り入れて、新しい産業作りに注力なさっているとか。
従者家系の者達からは侮られ、馬鹿にすらされていたというリヴェラリム家。
そんなくだらない
「あのご領地の女性達にはね、そういう力強さ……『再生する力』があるって思うのさ」
そう言って、ちょっと照れくさそうに、ティアルナもリバレーラの港町出身なんだよ、と教えてくださったのです。
……もうっ……
でも『再び立ち上がる力』というのは、とても素敵です。
リバレーラは臙脂の制服も素敵でした。あの地の衛兵になれたら……素晴らしいかもしれません。
ですがその後も、ルシェルスやエルディエラの制服を見ながら、やっぱり素敵で目移りしてしまいます。
シュリィイーレがここに事務所をかまえていないのは、直轄地だからなのでしょうね。
でも、どちらの事務所も男性が多くて、あまり女性が着ている姿が近くでは見られませんでした。
ちょっと残念です。
外に出た時に、近衛の方とすれ違いました。
……近衛の制服って、結構派手なのですね……
きらびやかなのですけれど、絶対に素早い動きができなさそうな作りです。
剣もまるで飾りのようですし。
絶対にあの方達、赤シシすら狩ったりできないと思います。
やっぱり、衛兵隊の方が強そうで好きです。
なんだか、初心にかえれた気がいたします。
しっかり頑張って、絶対に後悔しないようにしなくては!
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