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 昨夜は、非常によく眠れました!

 朝食もとても美味しく、適量いただけましたし!

 本日は昼前が攻撃技能の試験で、昼食後が魔法の試験です。


 実技系は、正直練習不足という感じが否めません。

 広い場所が確保できませんでしたから、弓は全く試射できずに型の繰り返しのみ。

 魔法は予備試験の時にやっていた、調整程度での使用だけです。

 絶対に今回の本試験の方が、難しいことを要求されるはずですわ。



 ……なんて、身構えて望んだ弓の試験でしたが……

 的は動かないし、立ち止まって射るだけでしたので、全射命中でした。

 他の方々が当てられないのが、不思議なくらいです。


 わたくしと一緒の組で受けた方々が銅証の方や推薦者ばかりですから、もう少しお上手かと思っておりましたのに。

 中にはちゃんと引ききれず、矢が的まで届かない方すらいる始末。


 あ、きっと弓は皆さんあまりお得意ではなくて、剣など他の技能試験も受けるのですね?

 わたくしは弓だけですけど、技能があれば剣も槍も体術も受けることができますからね。


 皆さんきっと、いろいろなものに挑戦しようとしていらっしゃるのね!

 素晴らしい志ですね。

 わたくしももう少し力がついていたら、体術も受けたのですが……まだ無理ですからね。

 頑張っているのに、どうもわたくしは筋力がつかないというか、力がつかないのですよね……


 弓の試験は、あっという間に終わってしまいました。

 まだ他の方々の試験があちこちで行われておりますが、わたくしは許可をいただいて一度部屋に戻ることに致しました。

 僅かな時間とはいえ、汗をかいたので流したかったのです。

 その方が、気分良く昼食がとれますしね。


 そして多分、魔法の試験が終わった後は、この部屋に戻ることはないでしょう。

 自分の使った寝床の掛け布や敷布を洗って、【南風魔法】でしっかりと乾かします。

 綺麗に畳んで置いておけば、この部屋に戻らないと解っていただけるでしょう。

 床も掃除しておきましょうね。


【浄化魔法】が使えたら、もっと簡単に早く綺麗にできるのかもしれませんわね。

 どんな訓練をしたら、手に入るのかしら?



 お昼はまた三皿、食べきってしまいました……

 だって、お魚の焼いたものだったのですもの!

 肉よりは重くないというか、するするっと食べられてしまうのです。


 味は……昨夜とあまり変わらない味付けでしたが、それなりに美味しかったです。

 それなのに、わたくしは今、持ってきたお菓子まで食べているのです。

 お昼は、食堂ではお菓子がつかないのですよ。

 だけど、甘いものが食べたくなってしまったのです。

 食べ過ぎですよね、明らかに……また、中庭を散歩いたしましょう。



 ぷらりぷらりと中庭を散策しておりましたら、いきなり呼び止められました。

 ……ベルディアさんです。


「ヒメリア! よかった……試験、受けられたんだね!」

「お久し振りです、ベルディアさん」


 ちょっと、よそよそしいくらいの挨拶を返しました。

 ですが、どうもベルディアさんには通じなかったようです。

 おそらく、この様子もどこかで試験官が見ています。

 身分的に下のベルディアさんが、わたくしに対して全く礼を取っていないことが見られているとしたら……減点でしょう。


 ですが、それを注意したり、窘めたりすることはわたくしにはできません。

 今は試験中で、わたくしは教官でもなんでもありませんから。

 しかも、同じ受験生の方に『指導』など、誰であっても失礼になってしまいますわ。

 こういう細かいことを、いつもオリガーナ様に注意されていたのに……全然身についていらっしゃらないのですね、ベルディアさん。


「ヒメリアがいなくなった後、メラニエーラは推薦が取り消されてしまったし、フェシリステ様は謹慎になったんだよ」

「左様ですか」

「……それだけ?」

「他に、何が?」

「ヒメリアが出ていったから、そんなことになったんだよ?」


「……あなたは、全ての事情をご存知で、そのようなことを仰有っているの?」

「知らないよ。だって誰も教えてくれないのだもの! でも、ヒメリアのせいだってみんな言ってる」

「みんな……とは、具体的にどなたが?」

「え……? えっと、他の……推薦者のみんなだよ」


 ああ、この方、やはり話になりませんわね。

 自分が蚊帳の外だったことが不満なだけで、正しいことを見極めたいというわけではないのですね。


「あなたは真実を、事実を知ろうともせず知りもせずに、わたくしを非難なさるために声をかけたの?」

「だって、心配したんだよ!」

「それは、あなたの心の中だけのことでしょう? わたくしのことを何も知ろうともせずに、勝手なことを仰有らないでください」

「ヒメリアが何も言ってくれないから!」

「あなたに言ったところで意味がないと解っているから、どなたも何も仰有らないしわたくしも言わないのです。それくらい、お解りいただけませんか?」


 ベルディアは多分、わたくしを罵倒したいのでしょうね。

 そして聞きたいとしても真実ではなくて、自分が満足できる情報だけ。

 わたくしがする『言い訳』を聞きたいのかもしれませんわね。

 でも、何を言われようとわたくしは、この方に何ひとつ話す気はありません。


「試験のご健闘を祈っておりますわ。それでは、ごきげんよう」


 二階の窓から、中庭の端から……視線を感じます。

 試験官でなかったとしても、彼女の態度は彼等の瞳に良い印象には映らなかったでしょう。


 もう、弓を触ること……できないかもしれませんわね、ベルディア。

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