第3話 5度目の人生

四度目の人生を自らに終わらせ迎えた五度目の人生。


死ぬ前に強く望んだ彼女に会えたのは十五歳の時だった。

学校に向かう道の途中にあるカフェ。

今までの人生ではいなかったはずの店員。

彼女は今回の人生では年上らしい。

年齢の変化分には多少見た目の変化があったが見た瞬間すぐに気づいた。

やはり彼女は変わらぬ人生の中で唯一変化がある存在なのだ。



いきなり話しかけたらきっと警戒される。

自分の欲を抑え込みながらその店の客として通いつめた。

常連客として顔を覚えてもらえて、会話やその人の笑顔が増えてくたびに多幸感が溢れ心が満たされていた。


同時に前回の人生でこんな素敵なこの人の人生を短く終わらせてしまったという罪悪感が

じわじわと心を侵食していってた。


着々と時が過ぎ私は18歳になっていた前回のあの人が亡くなった年だ。

そう思うと言葉には表せないほどの罪悪感、自分の欲を優先し前回のあの人の死因を作ってしまったのにまだ彼女の隣に居続ける自分自身への劣等感、なんとも言えない軽蔑感全てが心苦しかった。



ある日の夜、色々な感情を抑え込めず、泣いてしまって我慢できずに彼女に全てを打ち明けた。

彼女は、

「もし貴方の話が本当にあった話だとしても私が望んでやったことだから気にする必要はないよ」

少し可笑しそうに笑って言った。

きっと彼女からしたら仲の良い年下が悪夢で泣いていた。だから慰めた。そんな感じの可愛がり感覚で言った言葉にすぎないのだろう。


だが四度目の人生の時の彼女にもそう言われてるような感覚に陥り、心が少し軽くなった。


自分自身もたいそうちょろいとは自覚はしている。彼女の一言一句でこうも気持ちが変わるとは。





そしてやはり突然死は訪れる。

今回は二十五歳の夏。

友人や何気に十年程の付き合いになっていた沖縄旅行の海水浴中の出来事だった。

たまたま私がいたとこにはオニダルマオコゼだったかな?

そんな名前の有毒生物がいたらしい。

でも、何気に今回の人生は楽しかった。

今回で人生が終わっても気にしないほどに。

走馬灯を見ながら、そう思いながら目を閉じた。

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