第2話 繰り返される人生

私は栗原 幸(くりはら さち)。

ごく一般的な家庭の一人っ子として生まれた。

だが不思議な事にこれで七度目の人生だ。

しかもいつもこの名前でこの栗原幸としての人生を歩んでる。



一回目の人生は面白かった。

体験する全部のことが新鮮で世界が鮮やかだった。

だが二十九歳のときに仕事帰り飲酒運転の車に轢き殺された。


二回目のもてはやされてた。

なんせ二十九歳の頭のやつが赤ん坊からやり直してる。

そりゃあ、天才としてもてはやされるのは時間がかからなかった。

だが時間が過ぎれば凡人扱いに変わった。

当たり前だが中の人間は二回目の人生だから他より上手くできてるだけで新しく学ぶことについては他の人達と同じかそれ以下の能力だったからだ。

そしてこの人生も三十歳を迎えられずに死んだ。

確か死因は歩いてたら上から鉄柱が落ちてきたらしい。

死ぬ直前に鉄柱が見えたからそうだと思う。

即死だったのか痛みとか当たった時の記憶とかは覚えてない。


三度目の人生は気をつけた。

一回目の人生、二回目の人生でやらかしたことを今度は上手く生きれるように人間関係や立ち回り方を気をつけた。

それは過剰な程に気を使ったよ。

死にたくなかったから。

そしたら塾の帰り道に通り魔に刺された。

17歳の暑い夏のことだった。

一番気を使って生きた人生なのに一番早く死ぬなんでどんなゴミ人生だよ。まったく。


四度目の人生は一番思い出深かった。

十二歳のときに一度目から三度目の人生では出てこなかった転校生という存在が現れただ。

この子はとっても綺麗な女の子で一躍クラスの人気者になった。

私はこれは何か変わる!この変化はこの繰り返す人生を終わらせれるきっかけになると思い積極的に絡みに行ってすぐに仲良くなったよ。

しかもとっても!親友レベルの仲の良さに。

十四歳になる頃には繰り返しの人生のことなんて忘れてその子と一緒に人生を楽しんでたよ。

でも十八歳の高校の卒業式の日の帰り道だった。信号無視のトラックに轢かれそうになった私をあの子は押し倒し私を助けた。

でも私の代わりにあの子は亡くなった。

目の前に広がる血の海が、

何故か安心して笑うあの子の顔が、

少しずつ細くなる息が、

全て嘘で、夢であってほしかった。

その後日に私は初めて次の繰り返しの人生を望んだ。大好きな親友のあの子に会うために。

自分の首に縄をかけ乗ってた椅子を蹴り思い切り勢いよく縄に首を食い込ませた。

とても痛かったがあの子にまた会える可能性があるならと思うとその行為は苦ではなかった。

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