武将転生 島介の志! 〜劉備が死んでからの蜀で孔明を支えて中原を制覇するまでの長い長い道のり〜

愛LOVEルピア☆ミ

第1話 第一部


 おいおいなんだこの大軍は、俺だけの為に三万やそこらは居るぞ! 山間の盆地に『蜀』の軍旗を翻し、三方から軍勢が姿を現した。


「島右将軍へ申し上げる、私は費偉都督、貴公を陛下の前にお連れするように遣わされました。大人しくご同道願えないでしょうか?」


 孔明先生が常日頃口にしていた後進の一人ってわけか。納得の指揮能力だ。関興が軍勢を押し出して「そのような言は無用。力づくで連れ帰れとご命令ください!」相変わらずの態度を示して来る。あんな奴でも一応指示には従うつもりがあるようだ。


「断る。俺にはやらねばならんことがある。孔明先生の力になると誓ったその日から、誰の掣肘も受けんと決めた」


 どれだけ圧力を受けようと、どれだけ不利に立たされようと、俺は俺の意志を貫く! ここで折れては面目がたたん!


「されば! 丞相をお助けする為に!」


「くどい! なんと言われようと俺はこのような形で従うつもりはない!」


 孔明先生、やはり首都で捕らわれているわけか。いくらなんでも害するまでは無いだろうにしても、かなりの危機に瀕しているのには違いない。


「その気はないと言うではないか。では力づくだ! 者ども、掛かれ!」


 関興将軍がここぞとばかりに軍勢を進ませる。費偉も止めるようなことはしなかった。傍に居る李信が弟の李封に鋭く命じた。


「封、ご領主様を連れて離脱するんだ!」


 李信が親衛隊を引き連れて、数十倍もいる関将軍の部隊に切り込んでいく。李封が騎馬の手綱を曳いて、無理矢理に山へ向かわせようとした。


「舐めるな、島介はここに居るぞ! 全員掛かってこい!」


 これで逃げるなら死んだ方がマシだ! 軍に染まり数十年、これが限界というならそれで結構。無様な生き恥を晒すより、志を後進に残すだけだ!


 ここに至るまでに時間はやや遡って物語は始まる。



 朝露が滴り重みに耐えきれなくなった葉がしなる。雫が落ちて頬を濡らした。何だってまた外に転がってるんだか。やれやれだ。覚醒して目を開くと葉っぱと空が視界に入った、少し首を捻ってみると野原だってことが解る。


 ぽつんとひとりぼっち、見たことが無い景色だ。近所ってことはないだろことだけは解った。上半身だけ起き上がって自分を確認してみる。ゆったりとした布の服、下はおなじ素材のズボンだ。


 随分と慎ましやかな衣服だな、旅館の部屋着じゃないかって疑ってるよ。手にしている銀色に光る金属、四角で模様が刻印されている。文字なのかもしれない。これを手にしている理由……まあなんでもいいか。さて、どうしたものかな。


 立ち上がり体をほぐす。たっただけでは何も解りはしない。水たまりか、どれ。覗き込んでみると、二十代後半くらいだろう顔が映っている。これが自分か、若いな。


「取り敢えず歩いてみるか」


 あてもなく丘へと登る、近づくにつれ物音が耳にはいるような気がしてきた。丘の向こうに誰かが居るのだろう。上までやって来て右手で後頭部をさする。


「参ったな、これは専門外だ」


 石を積み上げて土を固めたであろう壁、長大な城壁という奴が見える。それを囲んで攻撃している兵士と、城壁で防戦している兵士。手にしているのは槍のような何か、名前はどうあれ命の奪い合いをしているのは確かだ。


 弓矢を使っていたりもして、ローテクというのが気になるな。遠いのでもう少し近づいてみると、小柄な人間が多い。小学生くらいの体格だな、でも髭を生やしているしアレで成人なんだ。


「昔の中国か?」


 顔つきがそんな気がした。でも最大の判断根拠は軍旗で、そこに漢字が記されていたからだ。太鼓が鳴らされると攻め手が一気に退いていく、撤退の合図だったようで姿が見えなくなるまでどこか遠くに行ってしまった。


「俺はどっちに肩入れしたらいいんだ?」


 どっちもどっちで解りゃしない。取り敢えずは城へ向かって歩き始める、野戦軍に近づいたら問答無用で拘束されかねないから。


「何者だ、怪しやつめ!」


 まったくだ、怪しいのは同意するよ。


「旅の者だ。戦いが見えたので寄ってみたんだ、俺を雇わないか?」


 一般の兵士よりも頭が二つや三つは大きいだろう身長、体重は二倍はある。商品としてはそこそこ魅力的に見えないか? 自分自身を売り込んで置いて、どうしようもない感想を自分で持つ。城壁の上の兵士が隣と相談していた。


「仕官か、名前は何だ!」


 名前、名前か。中国ぽくするべきだよな。するとなんだ?


「東海島の生まれで、姓は島、名は介、字は伯龍だ」


 日本って言っても通じないだろう、東の果てだってのが一番解りやすい。それだけっちゃそれだけだ。


「梅県の軍侯、李だ。県令へ引き合わせるゆえついて参れ」


 城門が少しだけ開かれて、中で手招きしている兵士が見えた。県令ってのは知事みたいなもんだったっけな。するとこいつは都のようなものか。黙って頷いて門を潜ると、先ほどの李の後ろを大人しくついていく。


 あっちこっちから奇異の視線を浴びる。素手の丸腰、警戒すべきはその体格だけ。こいつら相手なら五十でも百でも倒せそうだ。小学生相手に無双を決めるようなのを想像してみるが、どうにも気分が上がらない。


 城の中央にはもう一枚石壁があって、その先に背の高い建物があった。領主の城のようで、あちこちに『梅』『劉』の旗がたてられている。取り敢えず領主の名前が劉なのは解ったよ。それにしてもやっぱり中国なんだよなここ。


 建物に入ると、絨毯のような長い布が段上の椅子の前に繋がっていた。左右に複数人の男が立っている。李が片方の膝をついて畏まる。椅子に座っている男がこっちを睨んでいるな、俺にも膝をつけってことだよな、ああ解ったよ。膝をついて頭を垂れる。これから雇ってもらおうかっていうんだから、これ位はしておこう。


「仕官者を連れて参りました。見ての通り体格優れし者で、十人力で御座います」


「島伯龍です」


 余裕がある笑みで自己紹介をする。理由なき自信ってやつだ、そういうのが有効だって話だろ?


「梅県の劉県令である。島とやら、見掛けぬ顔つきだがどこの種だ?」


「大陸の東、海を越えた果てにある島で御座います」


 うぉ、こういう喋り方緊張するな! けど何だか面白いぞ!


「うむ、仙人が住まう島か。かのちには不老不死の秘薬があると聞くが」


 そういうったものを探しに大勢が出かけた。教科書にもあったことがら。笑っちゃいけないんだよな、真剣になって探してるんだから。


「不老不死は存じ上げませんが、万能薬であったりは御座いました」


 そうだ、病にも怪我にも薬はあった。けど寿命を延ばすようなものは千年先でも存在しないよ。


「万能薬か! 是非とも手にしてみたいものだ」

 

 俺に興味を持たせるために少し盛っておくとするか。吹いたってすぐにはわかりゃしないしな。


「某、故郷にて軍を率いておりました。多少の知識、経験があるので一つお役目を頂きたく思います」


 秘策有り。そうやって勘違いしてくれたら良いなと、詳しくはかたりはしない。大体状況も全然解っていないのに、余計なこともおいそれとは言えない。


「梅城を落とそうと、朱軍が押してきおる。これを退ける考えが欲しい」


「詳細をお願いします」


 李軍侯が簡単にまとめてくれた話によると、太守の諸葛玄を追い出そうとしているのは、同じく太守を名乗る朱晧というやつらしい。梅県は郡都から離れているので、自力での保持を求められている。大雑把な状況がこれだ。


 場所は予章、時代は百九十年代半ばだろうことが解った。なんてファンタジーな展開なんだよ! マイナーすぎて良く分からんぞ。まあ援軍があるわけではいけれど、主たる目標にもなっていないわけか。三国志の時代、俺は詳しい方ではないが漫画くらいは読んだことがある。大いに誤っている部分はあるとしても、何と無く理解出来る部分もあるか。


「城の防備を固めます。現状の視察をさせていただきたく思います」


「うむ。そなたを佐司馬に任じる、梅軍への助言を許す」


「御意!」


 この佐司馬とは、読んで字のごとく兵馬を司るものの補佐、つまりは士官で参謀のようなものだ。兵士ではないけれども、直接の部下も居ない。城の規模や人数を把握しようと努める、まずはこれからだ。


 聞くところによると七メートル程の高さの壁、二百メートル前後の囲いの中に二千人が暮らしているらしい。軍兵は百人、李軍侯と劉校尉が指揮を執っていた。全人口の五パーセント、現代軍が戦時に三から四パーセントになると大動員と言われるが、それを簡単に超えてしまっている。


 中国では少佐のことを少校と呼ぶけど、校尉って文字から来てたのか。すると軍侯は軍曹なんだろうな。俺のは一体何なんだ? 見て回りながら、李に色々指摘してやる。


「城壁が有効な戦場だ、もっと木材やら石を集めさせろ。城内の女子供にも水を確保させるんだ。物資は城壁の上に積み上げるんだぞ」


 そうだなと李も頷いている、指摘はそれだけではない。


「男は強制徴兵を。陥落したら皆殺しにされるぞ、拒否する奴は追放してしまえ! 木の皮から紐を作るんだ、木材を繋いで防備の増強をしろ! 城壁の四隅に足場を増設して張り出す形で横から射撃する拠点を作れ。城門前にも進撃路を置くぞ。堀を作って防御拠点にもする。万が一に備えて城門上には大量の土砂を置いて封鎖の準備をさせろ!」


「ちょ、そんなに一気に言われても覚えきれません」


 次々と改善点を指摘されて、半分泣きそうになりながら暗唱しようとしている。文字が書けないのか、そういう時代だ仕方あるまい。ところが話を聞いていた子供が木片にメモを取っているではないか。


「貴方は道理にかなっていますね」


「君は?」


 貧相な身なりをしている兄弟がいる、上が小学生で中学年あたりだろうか。栄養状態が悪いんだ、もう少し上かも知れんが。


「葛です、一つ手落ちが」


「あっちへいけ小僧」


 李がしっしと手を振って追い払おうとしている。


「まあ待て。阿葛(葛くん)、何だろうか教えて貰えたらありがたい」


 目を見て真剣に訊ねた、これは自分の為でもある。葛は驚きもしなかったが、無言で立ち去ることもしなかった。


「敵に皆殺しにされる、根拠がありません。もし懐柔してきたら城内が割れるでしょう」


 ふむ、確かに俺のデマだ。どうしたものかな……こういうのは?


「この小さな町で余所者は存在自体が噂になるだろう。つまりは俺が近くで見てきたってのはどうだ?」


「それで宜しいのではありませんか。恨みを晴らすため梅県に志願して協力しているなら筋も通ります」


 うーむ、何なんだこの子供は。


「では阿葛に頼めるだろうか、近隣で虐殺があった、そうあの男が憤っていたと」


 懐から銀の四角を二枚とも取り出す、どうせ俺には不要だ。


「俺にとって価値ある話だった。全財産を君に譲ろう、ありがとう阿葛」


 これっぽっちで何になるかは知らんが、食うに困るのも先になるだろうさ。すると葛も懐から一枚の刀銭を取り出した。


「我等兄弟の全財産です、交換致しましょう」


 差し出された銭を見詰める。百円玉と差はなかろうが、気持ちは清々しい。


「なるほど、これなら対等だ。俺と君とは掛け値なしの盟友だ、こんなところで死ぬなよ」


 一人の人間として葛と挨拶を交わしてその場を去る。


「李軍侯、兵の視察だ」


 当然、劉校尉にも会うことにもなる。屯所に行くと鱗のような板を括りつけた鎧を着た中年が現れる。


「島佐司馬です。劉校尉、よろしくお願いします」


「そなたがそうか。良い体格だな。軍を指揮していたらしいが」


「二百人程度なら直轄可能です」


 中隊を指揮していた頃を思い出して即答する。声が届く範囲を指揮可能範囲とする、太古の昔からある目安の一つだ。


「ならば民から二百を徴兵し指揮せよ。武器庫より五十のみ持ち出しを許可する」


 五十は渋いな! だが常備が百人なら数の限界か。やれることをやるまでだ!


「畏まりました、徴兵時まで李軍侯をお借りします」


 何せ顔役が居なければ信用されない。流石にそこは承諾してくれた。反故にされないうちに武器庫に行き、五十の装備を持ち出してしまう。まずは自分用を身に着けてしまった。


 革の鎧に槍か、こいつは自身が驚きだ! 服を引っ掛けるための突起物がある槍。これを槍と呼ぶかは疑問があったが、名前よりも性能だ。鎧を貫くには強度が不足しているように見えたが、無いよりは遥かにマシだろう。民を城の中心にあつめて軍侯を隣に置いて声を上げた。


「劉校尉の命令で兵二百を徴兵する。志願者は前へ出ろ!」


 困惑している民から、十人ばかりが進み出た。一様に体が小さく、農民そのもの。


「十人には装備を与える。あと百九十だ、最後は強制的に徴兵するぞ!」


 どうしても徴兵されるだろう青年層が仕方なく志願した。それでもあと三十人位足りない。演台から降りて男達の前を歩く、こちらと視線を合わせないようなやつらがそこそこいる。


「お前、何故志願しない」


「おっかさんが病気で、オラが死んだらおっかぁを看病する者が居なくなる」


「城が陥落したらどのみち皆殺しだ、志願しろ!」


 目の前で強く言われてしまい、仕方なくそいつは志願した。さらに数人指差しして問う。


「お前らは何故志願しない」


「朱太守は朝廷から任命された本当の太守って話だ、ならここの主もそうなるべきだろ?」


 そういう話だってのは知ってる。だがそれを認めるわけにはいかないんでな。


「三人とも同じか?」


 顔を見合わせて頷いている。不平分子という奴だ。


「そうか、なら徴兵はしない」少し表情を緩めて微笑みかけてやると、三人もほっとした顔で口元を緩ませる、だがすぐに眉を寄せると「三人を追放する! 敵に協力されては困るからな」


「なんだって!」


「梅城は一致団結してことにあたる必要がある。敵に通じそうなやつらを養うつもりはない! 出ていけ、さもなくば殺すぞ!」


 肩を怒らせて凄むと、三人は脱兎のごとく逃げ出した。


「これが最後だ、志願者は居るか!」


 すると都合二百を超える男が集まった。病弱者や若年、老年者を弾いて数を調整する。


「お前も外す。城内で死傷者の処置をするんだ」


「オラが? へい」


 母親の看病があると言っていた男を最後に外した。最初に志願した十人を二十長に任じ、五人で一組を作らせて兵をまとめさせる。話をしてみて二十長から二人を伯長にし、部隊を半数ずつ指揮させることにした。


「烏合の衆とはこれだな!」


 何はともあれ自宅から刃物を持って来るように命じた。それを棒きれにくくりつけさせて、槍もどきを作り上げる。長さは強さになる、そういった武器は絶対に必要だ。予備には太めの木の根を掴みやすく加工した、棍棒という奴だ。これならば無制限に手に入るので、可能な限り作りつづけさせる。


「竹を割って盾を作れ、腹に巻いて鎧にしろ、水を入れて脇に置け、砂を詰めて敵にぶつけろ!」


 竹は幾らでも使い道があるぞとあちこちから採取させる。中国は竹林がこれでもかというほど存在している、先端を斜めに切れば竹やりも作れる。炙れば固くもなった。


 しかし、これで戦えとは俺も酷いことをいっているな。まともに叩けば一発で崩壊だ。弓矢は高価な品だ。それこそ工業製品のなかでも上から数えた方が早い位に。ゆえに貧乏な軍では飛び道具が少ない。イングランドの長弓兵は当時、世界で一番コストが高い戦争の手段でもあった。


 現代の弓矢、あれだって矢が一本で万単位するのはあまり知られていない。クロスボウの矢とはケタが違う。そんなこともあって、世界で一番安い飛び道具、石を集めさせた。拳位の大きさのものを選別して積み上げていく。これをぶつけられたら痛いだけでは済まない。いくらでも手に入る上に、真上から落とすだけでも脅威になる。


「城の周りに堀を作るぞ、深い程に有利だ」


 これには農工具が大活躍した。鍬や鋤には銅が貼り付けてあって、かなりの掘削能力を示したのだ。近くに河がないので空堀にしかならなかったが、それでも梯子を掛けるために一メートルの高さが稼げた。


 接近戦になったら圧倒的に不利だ。この対策をせねば。一部が城壁に上がって来るのは仕方ない、むこうも命がけで来ている。そこから傷口を広げないための何かを思案だ。かかった梯子を外す手段は無いか? Y字の長い棒を作れば危険は少なく押せるか。


 紐や鎖で弧を描くような武器も城壁の防御では有効だろうな! いかに身を晒さずに対抗するかを吟味して制作にかからせる。応急処置としては満足いくレベルの品が量産された。数回使えば壊れるだろうが、被害者の命は常に一つだ。


 そうだ、あちこちで湯を沸かしてやろう。かけられらた戦いどころじゃなくなるぞ! それに、煮沸しておけば飲料にも、治療にも使える。何も一撃必殺ばかりが戦いではない。やる気を失わせることが出来ればそれで充分なのだ。


 要所に正規の兵士が居るので、こちらのは補助として頭数になればそれだけで充分だからな。後は進撃路か、どうしたものかな。敵は攻撃を集中してくるだろうし、こちらも正規の部隊を置く必要があるな。


 完全に籠るのも手だが、反撃をしてこないと解れば厳しく攻めて来るものだ。そのあたりの駆け引きを無くしてしまうのは上手くない。劉校尉に相談した結果、正規兵十を与えられ、俺がそこを守備するようにということで落ち着いた。


 やってやろうじゃないか! 左右にやぐらを組んで支援だな。木材や竹を組んで二人が上がれるようなものを設置した。上の方で板を渡して、城壁に撤退できるようにもしておく。燃やされないようにあらかじめ湿らせ、泥も塗っておくのを忘れない。


「敵がどれだけいても、一度に攻めてこられる数は決まっている。心配はいらん、俺に従えば勝てる!」


 数日の準備期間はあっという間に流れた。道具の調整に葛が助言し、強度が増した。どうやら大工の家庭にでも生まれたらしい、薬草の類まで知っていた時には驚いたものだ。


 劉校尉の部隊では一切取り上げなかったが、こちらの民兵隊では様々と意見を取り上げた。発案者が誰であっても、内容にスポットを当てて。薄気味悪いが天才は存在する。有能ならばそれを遇するべきだ。民兵の助言者に、参士なる地位を作って食事が配給されるように手配してやった。働きが有るなら、子供でも一人前の報いを受けるべきだ。


「朱軍がやって来たぞ!」


 偵察に出していた青年が息を切らしてかけて来た。近くの県を攻めていたのか、休んでいたような風ではない。


「全員配置につけ、火をおこせ!」


 戦闘準備をさせて自らは劉校尉のところへと向かった。城門の真上が指揮所になっている。


「劉校尉、戦闘準備をさせました。いつでもご命令を」


「うむ、ご苦労だ。防備を整えた功績、後に上奏しよう」


 一定の地位に在る者は朝廷という中央政権に報告をする義務を負っている。人材の推挙については柱となる内容でもあった。


「全ては勝ってからで」


「門下の指揮は任せる。城壁は心配するな」


 城外の砦を任されたが、それは捨て駒とも言えた。それでもまだ後ろがあるだけ望みが持てたが。

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