第67話 戦いと成長
スターゲート本部を中心にして円形範囲に展開し、ゾンビを掃討する。そしてこの作戦は7つのチームで行われ、それぞれが扇状の範囲を受け持つことになっている。
円の外周である俺たちがゾンビを倒し、その内側は大量の無人機で安全の確認を行っている。進めば進むほど円は大きくなるのだ。
つまり、ある程度進んだら、同じチーム内でもバラバラになる必要がある。
戦力の分散は好ましくないが、チームの全員が固まって動いた結果、チーム同士の間を開けてしまったらゾンビを見落としてしまう可能性がある。これは仕方ない。
『異能力による戦闘が可能な
「すみません。一応今日まで射撃の練習はしましたが、もしもゾンビの大群と出くわしてしまったら、捌き切れるかは分かりませんね」
「異能力で足止めは出来ますが、効果が切れる前に全てのゾンビを撃ち抜くとなると……正直、厳しいかもしれません」
『そうか。なに、気にするな。おかしいのは一般男子大生に射撃能力を求めるこの世界だ。お前に落ち度はない』
「ありがとうございます」
虹枝さんのフォローを受け、蒼は申し訳なさそうに笑う。
『となると、勇人班と隻夢班の二つに分かれる事になるか……まあ、広がる穴はブレインドローンで何とか――』
「虹枝さん。私が蒼さんと一緒に行けば、班は三つに分けられますか?」
そう進言したのは、蒼と同じく腰の拳銃を握る
「私は異能力者じゃありませんが、射撃の援護くらいは出来ます。蒼さんの幻聴の異能力は強力ですし、二人分の射撃なら十分ゾンビの処理も追いつくと思います」
「唯奈、お前戦えるのか……?」
「見くびらないでよね。
エイム……? ゲームの用語か?
よく分からないが、唯奈が物事に対してこうも積極的に取り組むのは珍しい。兄としては応援してやりたい。
「虹枝さん。唯奈もこう言ってますし、三つの班になって進みましょう」
『……以外だな。シスコン気味のお前なら反対すると思っていたが』
「シスコンって……言い方! ちょっと過保護なだけです!」
『自覚はあるのか』
虹枝さんの呆れたようなため息が通信機越しに聞こえる。
『まあいい。班は多いに越した事は無いしな。それじゃあ
「わ、分かりました……!」
『勇人と隻夢は、一人で大丈夫だな?』
「ええ。頑張ります」
「全部蹴散らしてやるぜ!」
確認するような虹枝さんの問いに、俺と隻夢が返す。正直、また二連続で進化型が来たりしたらと思うと不安だが、まあ進化型はレアっぽいし、大丈夫だろう。隻夢は……
「おっと、そうだ唯奈、コレ持って行ってくれ」
俺は異能力でポータブルレールガンを生み出し、唯奈に渡した。電磁力でアルミ弾を超高速で飛ばすというコイツの仕様上、弾倉とは別に予備のバッテリーカートリッジも必要になる。が、そいつはティッシュ箱ぐらいのサイズがあり、持ち運びにはやや不向き。なのであらかじめセットしてあるバッテリー分の弾倉だけ、追加で渡した。
異能力が無い唯奈は、俺たちみたいに筋力が強化されていない。だからアサルトライフルやマシンガンなんかは扱えないだろうけど、比較的軽くて威力も十分あるこいつなら、問題なく扱えるはずだ。
「逃げる時に邪魔だったりしたら捨ててもいい。まあ弾数も多くはないし、緊急用として使ってくれ」
「あ、ありがとう」
やや面食らったような間が開いた後、唯奈は差し出されたポータブルレールガンを掴む。
「思えばお前には、護身用の金属バットとかちゃちい武器しか作ってあげてなかったしな。一人の戦力として戦うお前へ、兄からのプレゼントだ。頑張れよ」
「すぐ保護者ヅラするんだから、お兄ちゃんは」
視覚補助バイザーで目元を隠し、ポータブルレールガンを両手で抱える唯奈は俺に背を向けた。
「……お兄ちゃんも、頑張ってね」
背を向けたままかけられた妹の声に、俺はグッと親指を立てた。
「ああ。任せとけ!」
そのまま少し離れた場所でポータブルレールガンの調子を確かめる唯奈を一瞥し、俺は蒼のもとへ向かった。
「……ああ言ったものの、唯奈の事、実はかなり心配なんだ。お前にもこれをやる」
俺は異能力で手榴弾や閃光弾、発煙弾などを次々と生み出し、蒼のプロテクタースーツの腰回りに装着させていく。ついでに支給された拳銃の弾倉も追加で渡した。
「冷静な判断が出来るお前にはいらないかもしれないが、備えあれば何とやらだ」
「本当に過保護だね、君は」
苦笑する蒼に、俺は大真面目に頷く。何と言われようと構わない。もはや褒め言葉ですらある。
「唯奈の事、頼んだぞ。もちろん黒音も、お前自身も。全員無事でな」
「うん。全員無事で」
力強い視線を交わし、俺たちも分かれた。これからは、それぞれの持ち場は別々だ。
グランドクリーン作戦第一段階、本部周辺百メートルの安全確保。そして、現在位置は本部から六十メートル弱。残りは約半分だ。
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