幕間
第14話 虹枝心白の手記
■月■日
自分で言うのもなんだが、どうやら私は根っからの研究者らしい。自分の行いが形として残らないのが我慢ならないようだ。なので日記を書く事にする。これを読んでいる者が、どうかこの日記を焚火の燃料にせず読んでくれる事を願う。
街にゾンビが見え始めてから一週間程が過ぎた。あれから本部からの通信は途絶え、いつの間にかサイト01からの定期連絡も来なくなっていた。大体予想は出来ているが、私たちは見捨てられたのだろう。それはそれで好都合だ。私たちは私たちで勝手に生き延びさせてもらおう。
■月■日
他の施設と音信不通なのは警備員の人達も知っているようで、自分たちだけでも頑張って生きていこうと誓い合った。彼らはこの組織には珍しく人の心があるようで、子供たちの保護にも協力してくれるようだ。とてもありがたい。
■月■日
ここにはもう何ヶ月も籠っていたから、地下生活も慣れたものだ。皆の調子も変わりなく、私もいつも通り死ぬほど疲れた。地上はゾンビがウヨウヨいるだろうし、やはり地下は安全だ。
ちなみに『ゾンビ』というのは科学的な正式名称ではないが、この呼称が一番伝わりやすいだろうし、きっと既にそう知れ渡っているだろう。どのみち何と呼ぼうが、彼らはいつでも血と臓物を垂れ流しながら駆け寄って来るのだし、名前などどうでもいい。
■月■日
警備員を連れて現状確認を兼ねた食料調達に出かけたが、すぐに引き返してきた。思った以上にゾンビが多い。やはり都心部ともなると元々の人口が多いから、必然的に危険度も増すわけだ。アレが人類の成れの果てと考えるのは、とてもじゃないが良い気分にはなれない。
一番酷かったのは、とある民家に隠れていた生存者が目の前でヤツらに喰われていたのを見た所か。喰われていた彼は最後の最後まで視界にいる私たちに助けを求めていた。実験に使われて死んでいった子供たちと重なる。彼らも誰かに助けを求めていた。そして私はその誰かになってやれなかった。クソ、最悪な気分だ。
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