クールな幼馴染と放課後(改)
放課後。
苦痛でしかなかった学校の授業が終わり、ようやく帰宅の時間がやってくる。
教室で友人たちと別れの挨拶を告げ、幼馴染と共に昇降口に向かう。
だが、そこで事件は起きた。
「あれ?」
「どうしたのかしら?」
「いや……」
家に帰る為に下駄箱を開けてみれば、そこには何かが入っていた。
──何だこれ?
怪訝に思い、手に取る。
その正体は1通の封筒であった。
「お手紙ね」
「うん」
差出人は女の子だろうか。
裏返してみるとそこにはハートマークのシールが貼られてある。
しかし、それ以外に封筒には何も書かれていなかった。
「……何これ?」
下駄箱に挟まれてあった謎の封筒。
厚みはない。
軽くふってみると、中からシャカシャカと音がした。
「何か入ってるわね」
「そうだね」
もう一度、じっと見てみる。
汚れ1つない綺麗な封筒。
丁寧に貼られたハートのシール。
中身は開けてみないと分からないが、うっすらと文字が見えた。
そして、1つの予測が立つ。
「まさか、ラブレター?」
「……気になるなら、開けてみたら?」
下駄箱に置かれてあったと言う事……。
その可能性的には十分にあり得る。
僕は「やってみるよ」と答えた。
「あら、随分と落ち着いているな……」
「いや、以外と困惑しているよ」
初めての経験だからな。
そんな事を思いながら、ぺりっとシールを剥がして封筒を開ける。
予想通り、中には折り畳まれた1枚の紙が入っていた。
なんの変哲も無いただの紙だ。
「見ないの?」
「そうだね」
2つに畳まれた白い紙。
ただ、いざ開けようとするとドキドキしてきた。
大きく息を吐き、パラっと紙を開ける。
そこには立った3行の文字が書かれてあった。
一番上には僕の名前。
その下には『好きです』と告白があり、そして一番下には『お返事を待っています』とある。
どう見てもラブレターだ。
「……」
一体誰が?
まったく予測がつかない。
ただ、何だろうか。
この文字。
どこかで見た事があった。
……誰だったかな。
記憶を遡ろうとするが、「どうだった?」と幼馴染の声で止められる。
「ラブレターだったよ」
「そう……それで返事はどうするつもり?」
「まずはこの手紙を送った人を見つけてからだね」
「それが良いわ」
ただ、問題はいくつかある。
まずは手紙の送り主の見つけ方。
名前が無い以上かなり困難だろう。
それに、だ。
これがドッキリの可能性もある。
嘘告の可能性だって、捨てきれない。
さて、どうしようか。
対策を考え始める。
──そんな時だった。
いきなり、ポケットがブーと低い音を立てながら、バイブしたのだ。
「ん?」
「メールみたいね。 貴方のお義母様からじゃない?」
「母さんから?」
何用だろう。
スマホを取り出す。
そのロック画面には鈴華が予測した通りに母さんからのメールの通知が来ていた。
スマホをロックし、チャットアプリを開く。
そこには『デパートである物を買うように』と書かれていた。
「マジか……」
「どうだったの?」
「デパートでお使いをしてこいだってさ……」
最悪だ。
夜には公園に行かないといけないのに。
まったく面倒である。
「なら、変わりに私が行くわよ?」
「いや、大丈夫だよ」
かなり買い物リストが多かったし。
彼女1人じゃかなりキツいと思う。
「なら、私も付いていくわ」
「それは助かるよ」
封筒を鞄の中にしまい。学校を出る。
僕たちが向かう先は駅前のデパート。
門まで続く校庭で、何人かの生徒からのとんでもない殺意の視線を向けられたような気がしたが、気にする余裕はない。
だが、そんな悪意の視線ではなく「さようなら」と、微笑ましい視線で声を掛けてくれる優しい生徒も居てくれた。
「また明日会いましょう」
昇降口に降りて、そのまま校門に向かう。
すると、後ろから警備の人から声が掛かった。
「大丈夫ですか?」と。
「問題ありませんよ。 私がしっかりと隣にいますから」
「本当に?」と本当に心配そうな声。
でも、鈴華はキッパリと答えた。
「はい、何も問題ありません。なにせ、私たちは婚約者ですから」
そう言って、クスッと笑う鈴華。
……婚約者?
今、婚約者って言った?
本当ならここで問い詰めたいことだが、流石に今はそんな時間では無い。
「……」
仕方ない。
全てが終わったら、じっくり質問するか。
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