第十六話 この世界の獣人の立ち位置

 今ねものすごく私は焦ったわ、


 そう冷や汗をかいてるのは、黒猫の江原咲である。


「危ない、バレるとこだったよ。」


 咲の後で、念話で話をかけてくる翔太がいる、

 羽を押さえて今は音を立てないようにしている、


 もしここにいるのが体調の整った獣人族なら、2人の存在はその優れた聴覚と嗅覚で察知されていただろう、だが、まともに食事もできていないウィリップ一家では、2人を察知することはできなかった。


「それにしてもずいぶんボロ小屋ね、誇り臭くて私はダメだわ」


 ウィリップの家は、もう家とは言えない、家畜専用の古屋と言うべきか、汚れていた、ホコリがすごく、ところどころに蜘蛛の巣がある、


「彼に着いてくれば、街はあることは分かっていたが、獣人とやらは、あんまりいい扱いを受けてるわけじゃないみたいだね。」


 3人はあの後、帰っていくであろうウィリップこっそり着いて行っていた。翔太が集落があるかもしれないと予想したからだ。予想通りウィリップの行く先には、村というべきか、森を抜け草原がありその中に小さな集落があった、そし獣人が虐げられている現実を目の当たりにしたのだ。



「この世界じゃ獣人は差別の対象なのだろう」




 この言葉を念話で聞いた冬季は、心が乱れた、



「それって、おかしくないか、だって!」


 その言葉を遮るように翔太が言った



「歴史で習っただろ、地球にも差別があった歴史がある、そうゆうことなんだ、俺たちの世界であんな平和が訪れたのは、素晴らしい先人のおかげであり奇跡なんだよ。」


 それは冷たい口調だった、この残酷な現実を見据えているように、


 3人は押し黙った


 今屋根裏にいるのは翔太と咲だけだ。冬季は村の外に隠してある、流石にバレたらまずいからな。と翔太が提案したのだ。




 あれからしばらく時間が経ち、時間的にはもう夜だ、



「母さんゆっくり休んでね」


 下から、ウィリップの声が聞こえてくる。




 その声を聴いて決心がついたのか、江原が言った。



「ねぇ冬季、翔太」


「なんだい?」


「どうした?」


「私、この子たちを助けてあげたいわ。狩りとか、それ以外はまだ思いつかないけど、色々助けてあげましょう。」


 咲は静かにそう言った、


 翔太が静かに笑った


「なんだ、僕も同じこと言おうとしてたんだ、気が合うね」


「俺も、こいつらのこと助けたい、俺たちでできることしてあげたい!」


 咲は、自分の案に乗ってくれた2人に感動の気持ちを伝えている、


 念話でその感情が2人に流れて行く。


「別に感謝することじゃないよ、僕たち日本人からしたら、助けたいって思っちゃうのが普通だよと思うんだ、」


「あぁ、そうだな、明日からウィリップの狩り手伝ってあげようぜ。必ずこいつら元気にしてあげるんだ。」



 3人は決心した。

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剣と鳥と猫は、異世界旅する! @pepef

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