第40話 新たなラスボス、そしてノブナガの新しいスキル

「ええ!?、マジ!?織田信長やられちゃったんだけど!!!」


「だから言ったろ。ラスボスなんてコロコロ変わるって」


「だけどさぁ!!!」


「まあ、より手強くなったってことだ」


「え、そうなの?」


「、、、そりゃそうだろ。織田信長を倒してその座を奪ったんだから」


「でも謀反ってことは光秀みたいに卑怯な感じでやったんじゃないの?」


「違うな。このゲームの中の信長はひどく謀反を恐れていたように見える。そんな動きをしていた。俺ならあんな風に天下取りを進めはしない。この世界の織田信長はここぞといった大きな場面で博打を打てない小心者だ」


「え、でもめっちゃ勢力伸ばしてたじゃん!」


「織田家の家臣たちはみな優秀だ。あいつらがいればあれぐらいは簡単にできる。だが所詮将の器ではない織田信長にこれ以上は無理だった。ならばやれるだけやらせた後にさっさと首を取ってやろうと思ってたんだが。俺より早い奴がいたな」


「まあこっから織田信長のところって遠かったからね」


「いや、もし近くにいても俺は出遅れていただろう」


「そうなの!?」


「俺なら欲を出してもう少し待っていたはずだ。だが織田を討った男は冷静に考え確実に得が出来るタイミングで動いた」


「で、でもそれって織田信長と一緒で大勝負ができない小心者ってことじゃないの?」


「いや、『出来ない』と『やらない』は全く違う。しっかりと計算して動いている。将の器だ。大一番ではちゃんと命を賭けられる男だろう。そんな奴が織田信長の持っていたものをすべて手に入れたんだ。かなりえげつないラスボスになったな」


「ごくり」


織田信長を討った腹心の名はA.H。プレイヤーだ。


そんなにすごいのにゲーム内で一度も名前の挙がったことのない無名プレイヤー。


だけど彼は一夜にして織田信長の持っていたものを綺麗にもらい受けた。


そしてノブナガが戦国最強の武田を倒したこともあって、この戦国時代のトップへと名乗りを上げたのだ。


「でも戦国最強の武田を倒したんだからもうあとはA.Hを倒したら天下統一。全クリってことじゃないの!?」


「いや、織田とやる前に武田よりも厄介な連中が残ってる」


「え!?武田より!?だって武田は最強なんでしょ!?」


「大名ではな」


「どういうこと?」


「一番厄介なのは宗教。本願寺と延暦寺だ」


「それって仏教の人?」


「ああ、僧兵だ」


「僧兵?そういえばなんか戦国時代にそういうのあった!」


「あいつらが一番ウザい。死んだら極楽に行けると信じてる狂人どもだ。連中は死を恐れずに戦う。そもそも死にたいんだから」


「マジ?宗教ってヤバいんだね」


「兵を戦わせるときに一番重要になるのは士気だ。それが勝敗を分けることは多々ある。だからこそ指揮官は兵の士気を上げることに最も力を注ぐ。なのに宗教ってのは簡単に人を狂戦士に変える」


「、、、うん、なんかヤバそうな印象を覚えました」


「いまいちわかってないだろ、お前」


「ごめんなさい。士気とかがあんまりピンと来てない」


「だと思った」


「なのでもっとわかりやすく説明してください!!!私気になります!!!」


「はぁ」


「ちょっと!溜息つかないでよ!!ランちゃん凹むよ!!ホントだよ!!!本当に凹んじゃうんだからね!!!」


「大将を倒せば戦は終わりだ。だが連中の大将は神。存在しないんだよ。そして基本的に軍隊ってのは3分の1がやられたら負け。そこからは撤退だ。でも僧兵は死にたがり。最後の一兵になるまで、いや最後の一兵になっても向かってくる。つまり勝ったとしてもウチの被害は普通の戦の3倍ってことだ」


「ホントだ。めっちゃウザい」


「だから俺は神ってやつが嫌いなんだよ。俺の兵を山ほど殺しやがって。可成もあいつに殺された」


「あ、森可成だね!凄い強かったんでしょ?」


「強かったよ。めちゃくちゃな。だがもっと強いのは父の跡を継ぐ長可だ。あれこそ一騎当千。敵になると思うと面倒だ」


とか言いながらノブナガはなんだか楽しそうな顔をしていた。


まあそれはそうとして、私には聞いておかなくてはいけないことがある。


「ていうか何でノブナガそんなハイスピードでレベル上がってるの!?絶対おかしいよ!絶対私の方がレベル上げしてるもん!何か隠してるでしょ!」


「・・・」


「この前の真田戦だっておかしい!武田信玄と戦った時より強くなってたよね?信玄と戦ったときは全力だったはずなのに!いくら信玄を倒したからってそんな急激にレベルが上がるわけない!教えて!教えてくれなかったら泣くよ?それはもう盛大に」


「ちっ!わかったよ。第六天魔王のスキル『搾取する者』のおかげだ」


「搾取する者?」


「俺は領地に住む全ての民たちが獲得した経験値の5%、家臣たちの経験値の10%を貰える」


「民5%?家臣10%、、、。ズルっ!ノブナガズルっ!!!つまり私たちが頑張って倒した真田十勇士の分の経験値も入ってたってことだね!!!ズルっ!ノブナガズルっ!」


「しょうがないだろ、そういうスキルなんだから。パッシブスキルだから切ることもできないしな」


「自分だけ楽してレベル上げて~。もう!!!私も楽してレベル上がるようにして!!!」


「はぁ!?」


「いいから考えて!なんとかして!」


「いや、なんとかって言われてもな」


「経験値を分け与えられるみたいなスキル獲得してきて!」


「そんな無茶な」


「いいから獲得してきて!!!」


ノブナガのズルレベル上げに怒った私はノブナガに無理難題を押し付けてしまった。


3日後(現実では6時間)、ちょっとした家出を敢行した私だったが、さすがに言い過ぎたなと思い、ノブナガの元に帰って来た。


すると、、、


「獲得できたわ」


「え、何が?」


「いや、だからお前が言ってた経験値を分け与えられるスキル」


「え!?」


「『分け与える者』だってよ。まんまだな。これでお前にも経験値分けてあげられるわ。だから機嫌直せ」


え、マジで獲得してきたの?そんなとんでもスキル。てか私の機嫌直そうと頑張ってくれたってこと!?、、、マジノブナガLove!!!ツンデレが過ぎるぞ!ノブナガ!


よし、許してあげようではないか。そして経験値もたんまりもらってあげようではないか。


「もう!しょうがないから許してあげるよ!」


「じゃあ持っていけ。レベル10分ぐらいあるぞ」


「よっしゃー!!!」


という訳で私のレベルは10上がった。超楽だった。ふっふっふ、これでもう私は無敵!!!何もしなくても強くなれる!!!もう一回言う!超楽!!!


そんな絶好調の私たちだったが、ノブナガ軍の侵攻は滞っていた。その原因となっていたのが本願寺である。

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