第38話 ノブナガVS真田幸村

『ラン、真田が攻めてきたぜ』


「わかってるよ。そのためにノブナガは真田軍にマーキングしてたんだ。トリの炎を使って」


そう、ノブナガはすでに手を打っていた。真田の動きを逐一把握するために。


トリに片っ端から燃やさせたのは真田幸村を殺すためではなく、真田軍にマーキングを行うためだったのだ。


そして私はノブナガから頼まれている。


武田を倒した後に攻めてくる真田をぶち殺せと。


「トリ、コロポックルズ!!えっちゃんの合図で一気に真田を制圧するよ」


『わかってる、旦那の命令だ』


『ノブナガ様の命令ならやるしかねーよ』


『ノブナガ様の命令は絶対なんだよ!』


うん、やっぱりなんかしっくりこない反応だけど、それでも今はノブナガの命令が最優先。


「誰を敬おうが今はどうでもいいよ。ただ敗北は許さない。真田を皆殺しにしろ!!!」


『『『了解!!!』』』


式神たちは真田軍を殲滅するために一気に攻め込む。


真田幸村は私たちで殺す。





「幸村様!我らの動きに気付いていたかのように、ノブナガ軍の式神たちが全勢力で私たちを狙って来ています」


「なるほど。読まれてたってことね。だがその程度で覆せるような戦況じゃないだろう。大将のノブナガ自身が虫の息だ。このまま力尽くでノブナガ軍を潰す」


「はっ!わかりました!殿の思うがままに!」


「ではお前らも強化するぞ。集まれ、真田十勇士」


「「「「「「「「「「はっ!!!」」」」」」」」」」


すぐに俺の前に全員が集まる。本当に優秀な連中だ。


そんなこいつらを俺のスキルで最強のキメラに変える。


「自分の動物はちゃんと連れてきてるな」


「もちろんです」


十勇士たちは自分に最も合った動物を選び、普段はペットとして育てている。つまり武田軍のような付け焼刃の合体ではない。


合体後の戦闘能力は一気に跳ね上がるのだ。



猿飛佐助×猿


霧隠才蔵×カメレオン


三好清海入道×牛


三好伊佐入道×蛇


穴山小助×オオカミ


由利鎌之助×虎


筧十蔵×馬


海野六郎×魚


根津甚八×モグラ


望月六郎×カラス



これがうちの十勇士の最強状態だ。


各々の動物と融合した十勇士はノブナガ軍に向かって駆けていった。


動物と融合した十勇士たちなら式神にも引けを取らないだろう。なら数で圧倒的に有利なうちの勝ちだ。


「おい!酒持ってこい!」


「は、はい!」


「勝利の美酒だ。もう飲んでいいだろ」


「はい!幸村様の勝利はもう約束されています!」


武田がやられたのはラッキーだったな。手負いの武田より、手負いのノブナガの方が断然楽だ。警戒すべきは式神だけ。そしてうちの十勇士は式神を超えている。


さあ、ノブナガ軍を蹂躙しろ。我が十勇士たち。





なんかヤバそうな連中が攻めて来た。


十人。全員が動物と同化している。うん、キモい。


「トリ!なんかキモいから全部焼いちゃって!」


『ああ、全部焼く。それで終わりだ』


トリは迫ってくる十人のキモ勇士たちを一瞬で焼き尽くす。


だが十勇士たちの勢いは衰えることなくノブナガが倒れている本陣に攻め込んでくる。


「ちょっと、トリ!全然焼けてないじゃん!!!」


『知るかよ!俺の炎で焼けないやつがいるなんて聞いたことねー!!!』


「じゃあコロポックルズ!連中を凍らせて!」


『任せろ!!!』


『任せるんだよ!!!』


「マカ、俺たちも行くぞ!」


『わかってるわ、タライ!ノブナガは役目を果たした。次は私たちの番よ」


コロポックルズとマカミの力で辺り一面が一瞬で凍り付く、もちろん十勇士たちもだ。


「ふぅ、これで一件落着だね!」


絶対一件落着だと思ったし、自信満々で言っちゃったんだけど、、、



バリバリバリバリン!!!


十勇士たちは簡単に氷を打ち破って来た。うん、変わらぬスピードで進撃してきよった。止まることを知らない彼らを見て私は思った。凄くキモイと。


『ラン!炎も氷も効かないみたいだぜ?どうする?』


「私に聞かないでよ!あのキモキモ団やばいって!」


『とりあえず俺は焼くことしかできない。黒炎を使わせろ!』


「もちろん!トリ!やっちゃって!!!」


『了解』


―地獄の業火―


トリは消すことのできない地獄の炎をまき散らす。


ちゃんと焼かれているのに十勇士は勢いを落とすことなく前進してくる。


「なんで焼けないのよ、あいつら!」


『俺の炎に耐えられるってことは耐性を持ってるってことだ』


「耐性?炎耐性はあるけど地獄の炎に耐性なんてあるの?:


『ないな。だから作ったんだろ。真田幸村は新しい生き物を作り出すんだろ?なら新しい耐性を作ってもおかしくない』


「えぇ!?じゃあめちゃめちゃピンチじゃん!」



―斉天大聖―



神猿ハヌマーンと融合した猿飛佐助がトリの首を獲ろうと尖らせた爪で襲い掛かってくる。


『ちっ!猿ごときが俺の首をそう簡単に獲れると思うなよ!』


トリは漆黒の炎に包まれ、その本当の姿を現す。真っ黒な翼を生やした人型の姿。堕天使という言葉が似合う不吉な男だ。


トリは孫悟空のパクりみたいな姿の猿飛佐助を殴り飛ばす。


もちろん地獄の炎を纏った拳でだ。


「もしお前らごときがノブナガ軍に勝てると思っているなら、同情するよ。そのバカさ加減にな」


「死ね!!!」


トリの背後から突如カメレオンと同化した霧隠才蔵が現れてトリに切りかかる。


カメレオンと同化することにより、完全な透明人間となった才蔵を捉えることは高レベルの式神たちでも難しい。


だがトリは、いや火之迦具土神はこの『信長の覇道』で最強クラスの式神だ。そして覚醒して人型にまでなった火之迦具土神にはそんな小細工は通用しない。


トリは最強の一角なのだ。


真田十勇士ごときではもう荷が重い。


「焼き焦げろ」


トリは黒い炎をまき散らす。


「いや、トリさんや。連中は耐性持ってるんじゃないの?」


「おい、ラン。俺の炎が耐性ごときで本当に防げると思ってんのか?」


「だってさっき防がれてたじゃん」


「まだまだ俺の炎は黒くなる。さてどこまで耐えられるかな。この程度の耐性で」


「マジかいな」


トリは更に黒く、まるで吸い込まれてしまいそうな黒炎を吐き出す。


「ぐぎゃあ!!!」


「うがぁぁ!!!」


佐助と才蔵が焼かれていく。


そのうち悲鳴も聞こえなくなり、灰一つ残さず佐助と才蔵はこの世から消えていった。


「さて、片っ端から燃やしていくぞ。目障りだ。ノブナガ様の首を獲ろうとしている時点で身の程知らずも甚だしい」


おお!トリつよ!!!こんなに強かったの!?てかめっちゃ心強いんですけど!


トリの強さに感動していると今度はコロポックルズから連絡が入る。


『マカミと協力して真田十勇士たちを氷漬けにしてやるぜ!』


『十勇士たちは氷漬けなんだよ!』


「俺たちに任せろ。殿は武田を打ち破った。ならば真田程度俺たちでなんとかしないと殿に合わせる顔がない」


『ノブナガなんてどうでもいいけど、タライが望むなら私はどこまででも強くなれる!』


「お、お願い!!!」


コロポックルズとタライ&マカミペアは三好清海入道、三好伊佐入道、穴山小助、由利鎌之助を氷漬けにする。


「あと4人」


「上出来だ。後の4人は俺が殺そう」


「ノブナガ!?起き上がっていいの!?めっちゃ力尽きてたじゃん!」


「最後の仕上げぐらい俺がやるさ」


「えぇ、マジで大丈夫?真田十勇士4人ってかなり強いよ。だって全員動物と一体化してるしさ」


「ああ、そうだな。だが所詮動物と一体化してるだけの三下たちだ。ノブナガ軍と真田軍では格が違う」


筧十蔵は馬と一体化し攻め込んでくる。海野六郎は魚。川を通って水を操り攻撃を仕掛けてくる。根津甚八はモグラと一体化し地中から攻めてくる。望月六郎はカラスと同化し空から。


四方八方からノブナガの首を獲りに向かってくる。


「小賢しい」


しかしノブナガは背中から四本の黒い腕を生やし、一瞬で四人の首をもぎ取った。


え?


ノブナガ強すぎるんですけど。


そして私とノブナガは真田幸村の前へと辿り着く。、


「マジかよ。信玄なんてかわいく見える強さだな。はぁ、なんかバカらしくなってきたぜ」


「降参して俺の配下にでもなるか?」


「なるほどそういう選択肢もあるのか。でもせっかくの天下取りゲームだ。とりあえず最後まで戦ってみたい」


「いいねぇ。嫌いじゃねぇよ、そういうノリ。余計欲しくなった」


「ここで俺がお前を殺せば一気に形勢逆転だ。お前にはそれだけの価値がある」


「お前にもな。じゃあここでこの戦を締めよう」


「色々やったが結局最後は単純な勝負になったな。まあわかりやすくていいか」


「そうだな」


ノブナガはハバキリを抜く。


「来い、獣ども」


幸村の元に無数の獣たちが駆け寄ってくる。


―百獣の主―


百獣どころかそれ以上の獣たちを取り込んだ幸村はとんでもない化物へと姿を変えた。もう幸村というか人間の面影すらない文字通りの化物だ。あとめっちゃデカい。


ライオンの牙、大鷲の翼、熊の爪、鹿の角、亀の甲羅、何匹も取り込んだイカの無数の触手、象の大きさ、チーターのスピード、ゴリラの腕力、犬の嗅覚、猫の敏捷性、その他諸々ごちゃまぜって感じ。


というかこのゲーム戦国時代の日本なのに、日本にいない動物出てきすぎでしょ。カメレオンの時から嫌な予感してたけど。そもそもクラーケンとか出てきてたんだった。世界観めちゃくちゃじゃん。まあ面白いからいいけど。


私がゲームの世界観について考えているうちにノブナガと幸村がぶつかり合う。


なんか凄い感じでぶつかり合ってる。


うん、凄い戦いだね。


たぶん。


正直私には何が行われているのかいまいちわからなかった。早すぎるのか、パワーが強すぎるのか。光が輝き、爆音が鳴り響く。うん、雷みたいな感じ。


とりあえず凄い戦いだとは思うから、一応空気を呼んでシリアスっぽい顔はしておいた。


何が行われてるかはわからず、ひたすらシリアスな顔を貫いていた私だったが、最後の瞬間は見ることができた。


まあ終わり良ければ全て良しって言うし、最後だけ見れたらオッケーでしょ。


ノブナガは幸村が持つ無数の獣の首を次々と切り落としていたらしく、最後の一つ、幸村自身の首に切りかかった。


「やっぱ強いか」


「天下を取る男だからな」


「最近ワン〇ース読んだ?」


「ログイン前まで読んでた。ワノ国編をな」


「じゃあなんなよ、海賊王。じゃなくて天下人」


「ああ、そうするよ」


ノブナガは幸村の首を刎ねた。


そしてこの戦の勝者がアナウンスされる。


勝者 ノブナガ軍


敗者 武田軍 真田軍



「これで俺たちの完全勝利だ」


ノブナガは私の元まで戻って来てそう言うと、そのまま倒れた。


そして私たちが武田を破ったというニュースが日ノ本を駆け巡ったころ、もう一つ大きなニュースが流れた。


『織田信長、謀反により討たれる』

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