第35話 ノブナガの反撃
ここは春日山城。
ノブナガの前にはウチの幹部たちが勢揃いしていた。
上杉謙信、伊達政宗、パプル、タライ、そして私。私のひざの上にウヌちゃん。
あとは式神たち。式神のメッカ蝦夷上がりの私たちは他に比べてとにかく式神が多いのだ。
というか全員無事帰ってこれました。
「さーて、なんとかここまで戻ってこれたが、兵は結構失った。今回は完全にウチの負けだな。さすがだわ、武田信玄」
淡々とノブナガはそう言った。でもなんか悲観的じゃなくて少し楽しそうにも見えた。
「殿、武田を倒すためにはあの気持ち悪い騎馬隊をなんとかしないといけません。私が戦ったときは天候を荒れさせ連中の機動力を奪いましたが、今の私にその力はありません。他の策が必要ですね」
謙信がまず口を開く。
「足場を悪くすることは俺たちも出来る。マカミとコロポックルズがいるからな。ただそれじゃあ無理だろうな」
「はい、地面が凍ったぐらいではあの強靭な騎馬たちを滑らせることは無理でしょうね」
「マカミとコロポックルズ、ここにトリも加わればぬかるみも作れるけど。これでもダメなんだろ?」
「はい、武田の騎馬隊は足元をなんとかしても問題なく駆けて来ます。戦力を削ぐとしたら一体化している人間たちの方です。武田軍の人馬一体は強力ですが、行動を指示しているのは背中から生えている人間ですから。だから私の天候操作は馬ではなく人間に対してのものでした。視界、聴覚、精神を蝕むための」
「なるほど。じゃあ天候が操れず、鉄砲隊も機能しない今の状況は絶望的と言っていいな」
そう言いつつもノブナガの顔は全く絶望してなかった。武田を倒す策はもう完璧ってことだね、ノブナガ。ふふふ、妻である私にだけはわかるのよ。全くノブナガったらお茶目なんだから。でも無駄に部下を不安にさせるのはメッ!だぞ。しょうがない。旦那の不手際は妻である私がなんとかしてあげますか。もう、ノブナガったら本当に私がいないとダメなんだから♡
「ノブナガ~。みんなに意地悪しちゃだめだよ~。もうとっくに武田を倒す策は出来上がってるでしょ」
「、、、はぁ!?そんなものないが」
、、、またまた~。
「だからそういうのいいんだって!ノブナガ!もうバレバレだからさっさと言っちゃいなよ!必勝の策をさ!」
「いや、だからないって」
「、、、マジでないの?」
「ずっとそう言ってるだろ」
「えぇーー!!!じゃあマジヤバいじゃん!!!どうすんの!どうすんの!私はどうすりゃいいの!?」
「いきなり取り乱すなよ。怖いから」
「でもさ!でもさ!」
「策はない。勝ち目もない。だが安心しろ。それでも俺は負けない」
ノブナガは落ち着いた声でそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべる。
かっけぇー!!超かっけぇー!!!これは反則でしょ!こんな顔見せられたら武田の前に私が降伏しちゃうよ!!!
「さっすがノブナガ!そこに痺れる!憧れるぅ!」
「現状は別に複雑じゃない。戦略的な何かじゃないからな。状況は単純だ。人馬一体の武田軍が強い。ただそれだけだ」
あ、スルーされた。
「ですが殿、それが一番手強いのでは?」
あ、政宗もスルーした。ああ、そう。全体でスルーしていく感じね。なかったことにするタイプのやつね。
「強みが一つしかない軍は弱い。一つ崩せば一気に倒れる」
「ど、どこを崩せば!?」
「わかんねーよ」
「え?」
「まだな。だから今はゆっくり待ってろ。ウチの忍びたちが帰ってくるまでな」
*
「殿!一気に春日山城まで攻め込みますか!?」
「ったく、かかってんじゃないよ。優勢な時こそどっしりと腰を据えるんだ。向こうはウチの騎馬隊さえなんとかすれば一気に盤面をひっくり返せると思ってる。なら圧倒的に優位なこの騎馬隊を囮に使う」
「え?それは一体どういう」
「黙って俺に従え。ノブナガの首はちゃんと俺が獲ってやる」
「は、はい!!!」
ノブナガは籠城戦なんてやるつもりはない。春日山城に俺たちをひきつけたところで何かしらの策をうってくる。
ならどうする?
春日山城に攻め込むのは止めるか?
いいや、それじゃつまらない。
ノブナガが春日山城にいるのは間違いないんだ。
乗ってやろう。その上で叩き潰す。
ノブナガ軍がウチの騎馬隊に夢中になっている隙に俺はノブナガの首を獲る。
*
「どうするの?ノブナガ!」
「そうだな。信玄の前に真田幸村をなんとかしないといけない。というか殺さないといけない」
なるほど。なるほど?つまりどうしたらいいの?
「、、、どうしたらいいの?」
「ウチの戦力の中で一番暗殺に向いてるのはトリだ」
「つまり?」
「トリに真田を討たせる」
「、、、ま、マジか。かなり責任重大なんだけど」
まさかこんなところで私にこんな大仕事が回ってくるとは。、、、どうしよ。
「大丈夫だ。お前は別に何もしなくていい。というか期待してもいない。俺が期待しているのはトリの方だ」
『ノブナガ様。私がお役に立てるのですね。光栄ででございます』
呼んでもないのにトリが現れた。しかも言葉遣いも変わってる。完全なるノブナガの配下といった感じだ。、、、私の式神だよね。
「あの~、トリさんや。私には何か言うことないの?まずは主の私に声をかけるべきじゃないかな」
『なんだよ!お前もいたのか、ラン』
え、嘘でしょ。これ私に言われてる?主人である私に?
「いやいや、トリって私の式神だよね?だよね?」
『ああ、そういえばそうだったな』
そういえばそうだった!?
「いやいや、そうでしょ!!!」
「今はそんなことはどうでもいい」
え!?ノブナガ!?どうでもいいことないよ?大事なことだよ?
『そうですね、ノブナガ様』
そうですね?
「そうだ」
そうなの!?
「トリ、真田幸村は武田軍の要だ。つまり後方で守られている。そこに行けるのはお前だけだ」
『なるほどですね』
ん?私は全然無視な感じ?
「俺たちは春日山城でトリが真田を討ってくるまでのらりくらりとやり過ごす。だから絶対に真田の首を獲ってこい。真田を討たないとウチに勝ち目はない」
『了解しました!』
「ねぇねぇ、ノブナガ!私のやることは?」
「お前は式神たちへのバフ、そして式神たちと密に連絡を取り俺の傍でそれを伝え続けることだ」
「そばにいろって。それもうプロポーズじゃん!」
「もうそれでいいから俺の傍を離れるな。お前がいなくなった瞬間にウチの軍の負けが決まる」
「わかったよ!永遠に離れませぬ!!!」
もうノブナガったらなんて大胆な。でもこの大勝負の最中のプロポーズ。良き!!!戦国っぽくてロマンチック!!!
「タライとマカミも頼むぞ」
「わかってるさ。俺とマカミがいればこの城は鉄壁だ」
「タライと一緒なら私たちは最強よ!」
「じゃあ武田に勝とうか」
「「「おおおお!!!!」」」
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