第16話 ノブナガと私のデート回 in 京都~本能寺の真実~

「ねぇねぇノブナガー!いよいよ本州に渡って本格的に天下取りが始まるってことで忙しくなるじゃん?」


「ああ、そうだな」


「だからさ、だからさ!ここらで一発デートでしょう!」


「なんでそうなる」


「いいから行くのー!!!行かないと天下取り手伝わないから!!!」


「うーん、まあお前にも世話になってるからな」


「よっしゃあ!!!」


「で、どこに行くんだ?」


「ここである!!!」


「『戦国ミステリーツアー in 京都』!?」


「そう!めちゃめちゃ面白そうなツアー見つけちゃったんだよ!しかも京都!ノブナガと遠出してみたかったし、京都なんて旅行にぴったりだし!これっきゃないってビビッときたんだよ♪」


見るからにコ〇ン劇場版のような案件。行くしかないっしょ。色々な探偵たちが集まるらしいってネットで見たけど、こっちは名探偵どころか織田信長だっつーの!


優勝者には高級料亭のお食事券がプレゼントされるらしい。頼んだよ、ノブナガ!


「まあわかった。でもポータブルのVRダイブ機は持っていくぞ!連続ログインボーナスを取り忘れるわけにはいかないからな」


「わかってるって。それに天下取りできなくて発作が起きても困るしね」


「それにしても京都か久しぶりだな」


という訳で私とノブナガのドキドキワクワク京都デート編スタートだよ!






「やってきたぜー!京都ー!!!」


「やっぱ京都も戦国のころの面影は一切ないな。おもしれぇ」


「ほら!早速来てよかったじゃん!」


「で、これからどこに行くんだ?」


「うーんとねぇ、京都駅にツアーの人が来てるはずなんだけど、、、あ、アレだ!」


大河ドラマのような恰好をした男の人が『戦国ミステリーツアー』と書かれたプラカードを持って立っていた。


「みなさーん!こちらでーす!」


「着物にちょんまげのカツラでお出迎えなんて気合入ってるね!」


「ああ、それに他のツアー客もかなり個性的だぞ」


「皆さん揃ったようなので出発いたします!」



ツアー参加者は



神木 博


38歳


探偵




河野辺 洋子


22歳


歴女




橋本 啓介


56歳


歴史研究家




遠山 雄太


32歳


歴史小説家




井上 昭子


45歳


漫画家



マジかよ。いよいよ本当にコ〇ンぽくなって来た。もしくは金〇一。


そう言えば私たちのプロフィールも紹介しておかないとね。



大森 蘭


21歳


社長令嬢




織田 信長


50歳


第六天魔王



「それでは着きました。ここが今回のミステリーの舞台となります」


「え!?」


「マジか」


「ほ、本能寺じゃんかー!!!」


「その通り!皆様にはここで戦国最大のミステリー『本能寺の変』の謎を解いていただきます!」


いや、その謎全部知ってる人ここにいるんですけど。


「では皆さんは京都の町を見て回り、今日の午後6時にまたここに集まってください。そして各々の説を出し合ってもらいます。それをネットに公表させてもらい、投票を行います。明日正午までに一番投票数が多かった方に高級料亭『本能寺』の豪華コース無料券をプレゼントいたします。それでは皆さん!多くの人が納得するような本能寺の変の新解釈を見つけて来てください!」


そんな感じで私たちは自由行動となった。えっと、私たちはどうすればいいんだろう?


「ねぇ、ノブナガ。どうする?」


「?本当のことを言えばいいだろ。それで優勝だ」


「まあ確かに。それが完全なる正解だもんね。じゃあ私にも本能寺の変の真実教えてよ」


「ああ、別に構わないが。せっかくだからあそこの和菓子屋で話そう」


「そうだね!京都と言えば和菓子!」


こうして私たちは老舗っぽい感じの和菓子屋に入った。


お茶とお菓子が来たところでノブナガは話し出す。


「そもそも俺は光秀に兵を連れて本能寺に来るように言っていた」


「え!?」


「そして光秀と兵たちは夜中のうちに本能寺の前に揃った」


「ちょっと待って!不意打ちされたんじゃないの?」


「光秀に連れてきた兵は1万三千だぞ。甲冑を着こんだそんな大軍が向かっていたなら数キロ先からでもその音は聞こえる。というか寝ていられないほどの大音量だ。そんなもん自分で呼んでなきゃ、速攻逃げてる」


「じゃ、じゃあなんで光秀は裏切ったのさ!」


「俺は朝廷を滅ぼそうと思ってた。自分たちを神だと言い張ってるようなバカは目障りだったからな」


「え!?どういうこと?」


「天皇っていう一族をこの世から消そうと思ってたんだよ」


「じゃあ朝廷に攻め込むために光秀を呼んだってこと?」


「ああ、光秀は天皇を崇拝してたからな。神殺しは信者が行うからこそ完全な否定になる」


「うん、エグい!」


「だからあいつは泣きながら言った。「敵は本能寺にあり」と。あいつは天皇を殺すことはできなかったんだ。まあこれは光秀の忠誠心をはかる賭けでもあった」


「光秀はそんなに天皇を崇拝していたの?」


「何よりもな」


「じゃあノブナガが悪いじゃん!そりゃ裏切られるよ!」


「それが俺の落ち度だ。あいつは天皇なんかより俺を選ぶと思っていた。だから俺にはあいつを責めることはできない。まあもし会ったら殺すがな」


「責めないけど、殺すんだ・・・。てか本当に神仏とか嫌いなんだね」


「この世で一番嫌いだな」


「じゃあこれをレポートにまとめて提出すれば優勝間違いなしだね!だってこれマジなんだもん」


私たちは考察とか一切せずに食べ歩きを続けた。考察っていうか答えがもうここにあるんだから。


6時になったので本能寺に戻り、侍コスプレのツアーコンダクターにレポート用紙を渡した。


結果発表は翌朝。ということで夜は京料理に舌鼓を打ち、温泉に入り、眠りについた。


翌朝朝食バイキングを食べて、お腹が膨れたところで侍コスプレがやってくる。さっさと私たちの優勝を宣言して。もうわかってるんだから。というか本当にガチな本能寺の変わかってるんだから。


「それでは発表します。皆さんの考察をネットに上げた結果、最も多くの投票数を得たのは、、、井上昭子さん!!!」


え?はぁ?


「彼女の実は秀吉と家康が黒幕説が最も『いいね!』を集めました!という訳で井上さんに高級料亭『本能寺』の無料お食事券が進呈されます!」


「マジか、、、」


「マジか。。。」





「なんで真実が仮説に負けるんだよぉー!コ〇ンならブチ切れてるよ!真実はいつも一つなんだから!」


「オーディエンスが求めてるものは違ったってことなんだろ」


「そんな~」


「だがサルと竹千代が俺を裏切るわけはない。あの二人だけは絶対にな」


ノブナガは懐かしそうな目をした。ノブナガにとってその二人は特別な存在なんだろう。ちょっと会ってみたくなった。まあ無理だけど。


いやいやいや、そんなんどうでもいい。ガチ負けしてるんだから!


「ノブナガさぁ、何でもかんでも正直に言ったらダメなんだよ。もっと派手な展開を読者は求めてたんだよ」


「いや、お前が本当の話聞かせろって言ったんだろーが」


「そうだけれどもさ!本当の話すんごい衝撃的でおもしろかったけれどもさ!きぃぃー!くやしい!」


「落ち着けよ、ラン」


「こうなったら『本能寺』より高い店に行ってもっとうまいもの食べるよ!」


「はぁ!?」


私はぐる〇びで調べて一番高級な料亭を見つけた。高級料亭『上洛』。私は間髪入れずに予約した。


ていうかーそもそもー無料お食事券なんて必要ないしー。


なぜなら私にはあり余る財力がー。


「美味しいね!ノブナガ!これは絶対『本能寺』の上位互換だよ!」


「確かにうまいな。『本能寺』で食ったことないからわからないけど、これ以上の料理はないんじゃないかってぐらいにうまい」


「私追加注文しちゃお~!」


「俺にはもっと酒をくれ!久しぶりの京だ。飲み明かしたい」


「いいねー!よっしゃー!店員さん!ジャンジャン持ってきて―!金ならあるからー!」


この日はノブナガと朝まで騒いだ。楽しかった。生きててよかったって思えるぐらいには。


お金しかなかった私に友達と彼氏ができた。夢のようだ。ずっと憧れていた。こんな夢の世界に。


私幸せだ。





今回の旅の総括。


ノブナガとの旅行、とても楽しい旅だった。ただ不満もありました。あんなにコ〇ンっぽい始まりだったのに一切事件が起こらなかった。


全然殺人が起こらなかった。ツアー客全員のプロフィールが出たら、普通誰か死ぬでしょ。コ〇ンなら1人、金〇一なら半数は死ぬ流れだよ。


そしたら私とノブナガでその難事件を解決するつもりだったのに。残念。


でもまあ総括して、、、ノブナガとの初旅行は、、、最高でした♡


明日からまた天下取り頑張るぞ!

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