第12話 ノブナガ、AIを疑う

私とレベル上げをして帰って来てすぐにノブナガはランと二人きりで何か話してる。


あ、私はウヌカル a.k.a みっちょんね。


「ウヌちゃんとのレベル上げはどうだったの?」


「まあ一生懸命頑張ってたよ。だが少し気になってな」


「ん?何が気になったの?」


「一生懸命すぎる」


「それがどうしたのさ!かわいいじゃん!てかこのゲームのAIマジすごいよね!本物のの人間みたい!」


「、、、AIなぁ。俺はそのシステムについて詳しくは知らないが、機械が感情を持つとは思えないんだがな」


「え!?でも現にこのゲームに出てくるNPCたちって本物の人間と変わんないじゃん!」


「もし本当にそうなら。これほどの絶望はないな」


「どういうこと?」


「感情を作り出せるなら人間という存在は唯一持っていた特別性を失う」


「ん?難しいんだけど」


「要するに天下なんて何の意味もないものになる」


「ど、どうしたの?ノブナガ。急にシリアスになって。もしかして天下取り止めるとか言わないよね?」


「やめねーよ。俺はAIなんてものを信じてないからな」


「え、信じてないの?でも公式サイトにAIって書いてあったよ?」


「AIの時もあるんだろう。だがAIとは思えない反応をする時もある」


「そうかなぁ?」


「おそらくNPCの中身は俺たちと同じ人間。だが一人の人間がずっとNPCの中に入っているのは無理がある。だから中に人が入っている時とAIの時があるんだろう。なんでそんなことをしてるのかはわからないが。なあ、違うか?ウヌカル」


え!?急に私!?心の準備出来てない!ふぅーふぅー、落ち着け、私。


やっぱりノブナガさん鋭い。というか鋭すぎる。でもこの事は口外してはいけないと契約書にサインさせられてる。破ったら確か訴えられるんじゃなかったっけ。


ヤバいどうしよう。


『それは禁則事項なの♡』


ん?今ウヌカルしゃべった?え?私なにも言ってないけど。


『もし詮索するのであれば私たちはそれなりの対応をしなければならないの♡』


え?また勝手に。というか逆に私がコントロールできない。声も出ないし動けない。


「こっちがAIだ。まあ別に詮索するつもりはないし、ネットに上げたりすることもない。俺はただ天下を取りたいだけだからな。だが天下取りがつまらないものにならなくて安心した。それだけだ」


『しばらくの間監視対象になるの♡その上で危険行為が見られた場合は強制的にアカウントを削除させてもらうの♡』


「わかった」


『それでは楽しくプレイするの♡』


「あっ」


あ、声が出た。体も動く。今のは運営ね。強制的にウヌカルを乗っ取られていた。まったくもう!これ私怒られたりしないよね。てかノブナガにばれたのは火之迦具土神のせいなんだから、クビにするならあっちにしてよね。


「元のウヌカルが戻って来たか」


「??ウヌカルはずっとウヌカルなの!」


「、、、そうだな」


はぁ、焦ったぁ。なんか嫌な汗かいちゃったよ。もう!


「ん?ノブナガ、要するにどういうこと?ウヌちゃんがレベルアップして難しい言葉も使えるようになったってこと?」


あ、やっぱバカだ、この子。でもバカでよかった。あんたのバカさが今日ほどほっこりさせてくれたことはないわ。


「まあそう言うことにしとくか。それよりも早く出発するぞ!日が沈むまでにできるだけ進んでおきたい。目指すはオプタテシケ山だ!」





「オプタテシケ山には何がいるんだろーねー。てかなんかいないとアイヌたち皆殺しなんだけどー」


「なんだお前らオプタテシケ山にいる式神知らないで行くつもりなのか?」


「タライの元ジジイ!もしかして知ってるの!?」


「蝦夷にいる式神は全部知ってるが?」


「だったらもったいぶらないでよ!この元ジジイ!!」


「タライに失礼な口をきくと氷漬けにするわよ?」


マカミさんが物凄い冷たい目で睨んできた。殺されるって思いました。


「ごめんなさい。カッコいい元おじいさん。オプタテシケ山には何がいるのか教えてください」


マカミさんに逆らったら命はないと私は直感した。


「そんなにかしこまらなくていい。気持ち悪いから。オプタテシケ山にはコロポックルがいる」


元ジジイめ、下手に出たら気持ち悪いとか言いやがって!、、、ん?コロポックル、、、


「ちょっと待って!コロポックルってちっちゃくてめっちゃ可愛いやつじゃん!私絶対に式神にするよ!クレジットカード切るよ!」


「切るな」


ノブナガから冷めたツッコミが入る。ノブナガったら嫉妬かしら。


「じゃあ現ナマ積むよ!」


「それも積むな。そういうイベントじゃないから」


「そう言えばその山ってここから近いの?」


「ああ、近い。70キロぐらいだ」


「うん、それは遠いね」


「今回ばかりはランお姉ちゃんが正しいの。さすがにそれは遠いの」


「正直俺は100㎞以下は近いと思ってるけどな」


タライが呟く。


「ほら見ろ。これが戦国クオリティだ」


ちっ!元ジジイがノブナガに賛同しよった。


でもまあ行くしかないんだよなぁ。アイヌの集落を出てからすでに3カ月。帰りを考えたら行ける場所は限られてくる。


「ちなみにオプタテシケ山のあとはどっか行くとこ決まってるの?」


「アイヌの連中に聞いた感じだともう1か所行きたいところがあるな」


「そっか。よし!じゃあ急がなきゃだ!いっくぞー!」


今は準備段階。出来るだけこの蝦夷で力をつけ、北から天下取りを始めるのだ。きっと本州の連中は北から攻めてくるとは思っていない。前例がないから。そしてきっとノブナガはそれを狙っている。


「ついて来いよ、ラン」


「モチのロン!!!」





オプタテシケ山の麓までたどり着いたところで、私はログアウトし学校へ向かう。


ノブナガはその辺でレベル上げをするらしい。


このゲームはゲーム内でも睡眠がとれるからいちいちログアウトするのが面倒な人には便利だ。そう、私だ。


ただゲーム内の体感時間は現実の12倍だが、睡眠はそれに当てはまらず、現実と同じだけ寝てしまう。つまり健康的に8時間寝ると4日経ってしまっている。なのでゲームに入って睡眠時間を12分の1にすると言うのは無理なのだ。


まあさすがに現実世界の体にまでは影響を及ぼせないということだね。


もしそれが出来ちゃったら睡眠時間短縮のためだけにゲームを使う人が溢れそうだもんね。てかそれが実現出来たらVRゲーム機めちゃめちゃ売れんじゃね!


おっと話を戻そう。、、、ん?どこにだ?


うん、私の話に戻るところなどなかった。


とりあえず私は大学へ行くのだ!


「みっちょーん!」


今日も今日とてみっちょんがいる。


「いるわよ。むしろあんたより大学には」


「え!みっちょん私の心読んだ!?」


「いや声に出てたから」


「不覚!」


「てかご機嫌じゃない?」


「そりゃそうだよ!ついにコロポックルに会えるんだから!」


「うん、知ってる」


「え?なんか言った?」


「ううん、なんも言ってない」


「てかいつもならコロポックルってなに!?いよいよ頭おかしくなったの!?って突っ込んでくるところじゃない!?」


「ああ、もうあんたが頭おかしいことは諦めたから。そういうのめんどくさくなった」


「ちょっとちょっとみっちょん!みっちょんのツッコミがないと成り立たないよ!私が!」


「大丈夫よ。あんたとっくに成り立ってないから」


「みっちょーん!」


みっちょんと一緒に講義を受けて私はオプタテシケ山攻略のため足早に家へと帰る。守銭奴みっちょんは今日も今日とてバイトに向かって行った。

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