第7話 ノブナガとの子供
え!?意味わかんないんだけど!ランの脳内彼氏改めネット内彼氏、アイヌをまとめ上げてるんだけど。
というか外で話を盗み聞きしてた私でさえも飲み込まれそうだった。
そんなわけでノブナガはアイヌを率いて天下取りに参戦するようだ。
案外このノブナガって出来る男なんじゃない?
いやダメダメ。プレイ時間を見たら完全なるゲーム廃人にしか見えない。どう考えてもニートだわ。ランは無駄に金持ってるから寄生されかねない。
やはり何とかしてこの二人の仲を裂かなきゃいけないわね。これがあのどうしようもないバカ娘の友達として私が出来ることだ。
そんな熱い決意をし、私は一旦ログアウトして昼食を取りに近所のスタバへ行く。ちなみに私がログアウトしてる間はAIがウヌカルを担当してくれる。
だったら最初から全部AIでもいいんじゃ?とも思うんだけど、まあお金くれるから別にいい。
私はサンドイッチを肴にフラペチーノをキメながらランを真っ当な人間にするにはどうするか考える。
そしてそれはサンドイッチを食べ切る前に諦めた。
とにかくあのノブナガという男との交際は阻止しなければいけない。100%ニートだから。
*
私はニートを飼っている。しかも50代の。
本来なら信じられない話だろう。
だが聞いて驚け!そのニートはなんと織田信長なのである!
「今日はほうれん草とベーコンのキッシュを作ってみたぞ」
どうだ!戦国時代の人間見てるか!私は今織田信長にキッシュを作ってもらっている!どうだ!
「ノブナガ!ゲーム内のレベルだけじゃなくて料理のレベルもどんどん上がってるぅー!!!」
マジでここ最近のノブナガの料理の腕は三ツ星シェフ並みだ。
「基本的に何をやるにしても天下を目指すタイプなんだよ、俺は。まあ根っから天下取りなんだな」
「うーん、根っからの天下取りってなんか嫌だね」
「おいおい、人は誰しも生まれついての天下取りなんだぞ?」
「いや、そんな世界じゃまるで戦国時代!、、、って、、そうか戦国時代だった。この人」
「とにかく今日はこのキッシュを食いながらアニメ見るぞ!」
「撮りためてたやつだね」
「ああ。やはりアニメはある程度溜めて一気に見たいからな。特にこの『戦国キングダム』は」
ノブナガはVRゲームだけでなくアニメや漫画にもハマっている。完全にオタクだ。オタク大名だ。
そんなノブナガの最近のお気に入りがこの『戦国キングダム』。
ファンタジー世界でノブナガっぽいキャラが世界統一を目指すといった話だ。
「これって一応ノブナガの仲間にヒデヨシとミツヒデがいるけど、これミツヒデ裏切るよね」
『戦国キングダム』は魔法と剣の世界での戦争ものだ。魔法とかエルフとか色々出てくるけど、主人公のノブナガは小国の長。いろいろ工夫したり強い奴を仲間にしたりしながら世界統一を目指す。
「いや、『戦国キングダム』は新しく作られている物語だ。ミツヒデが裏切るとは限らない。この話の流れだとヒデヨシの方が怪しいな」
「え?ヒデヨシめっちゃいい奴じゃん!超忠臣じゃん!」
だがノブナガの予想通り『戦国キングダム』ではヒデヨシが裏切った。
「いや、これが分かるなら本能寺の変も気づけよ」
「ん?ラン、なんか言ったか?」
「、、、いや何も言ってない」
ノブナガって案外抜けているところがあるのかもしれない。
*
こっからゲームでーす。
ノブナガがまとめ上げたアイヌたちは本州への挙兵の準備を進めていた。
「ノブナガさん!この鉄砲っていうのは何なんですか?」
ノブナガはこのゲームスタート時にすぐ火薬の生産を試み始めていた。
そして色々な国を回りながら、腕のいい鍛冶師も探していた。鉄砲を作るために。
ノブナガはサブ職業の鍛冶師スキル『兵器創造』で鉄砲を作ることはできるが、量産はできない。だから腕のいい鍛冶師がたくさん必要なのだ。
そのかいあってノブナガは蝦夷へと200丁の鉄砲を持ち込んでいた。
もちろん持ち込めたのは私の陰陽術スキルの一つ『無限収納』のおかげだ。えっへん!ノブナガのアイテムボックスじゃタカが知れてるからね。というか魚雷入ってたんだけどね。もうノブナガったら私がいないとホントダメなんだから。
「これを持って人を殺せ。これから相手にするのは獣じゃない。人間だ。覚悟を持て」
ノブナガはアイヌの民たちにそう言い切った。
3カ月間、ノブナガによる戦闘訓練を徹底的に受けたアイヌたちはいよいよ本州に向けて海を渡る準備に取り掛かることとなった。
*
まず大量の兵を本州に送るための船作りが始まった。
「前回の国取りでは海戦のことはあまり考えなかった。毛利水軍を相手にするときぐらいか。でも今回の俺の本拠地は蝦夷という島だ。なら巨大な船が必要になる」
「どういうこと?」
「海戦をするための船なら鉄甲船の方がいいが、今回は戦うための船でなく兵を送り込むための船だからな。デカいのが必要になる」
「でもそんなのどうやって作るの?」
「設計図は俺が書くから、あとはアイヌたちを働かせて作ればいい。この3カ月で俺への忠誠値も大分上がっているだろうし問題なく従うだろう。そうだな。今回は鉄甲船ではなく巨大ガレオン船でも作るとするかな」
「それって私も手伝うんだよね?」
「当たり前だろ。ただしトリは呼ぶなよ。あんな燃えまくってるやつがいたら船も燃える」
「ぐぬ!」
「楽しようとしないで大人しく働け。あと『ぐぬ!』とか言うな。キモい」
「ウヌカルも手伝うの!」
「ああ、ありがとうな」
私のノブナガに今抱きついたのは、最近私たちの周りをちょろちょろしている幼女だ。ちっ!忌々しい。ことあるごとにノブナガに抱き着きよって!今程度のことで抱きつく必要あった?マジであざとい。私だってそんなに抱きついたことないのに。
「えっと、、、なんでランお姉ちゃんはウヌカルを仇のような目で見るの?」
「ふん!自分の胸に手を当てて考えてみれば?」
「ちっ!ランの癖に!」
「ん?ウヌカル今何か言った?」
「え?ウヌカルは何も言ってないの」
「そっか。なんかアバズレ系友達の声が聞こえた気がして」
「こいつ私のことそんな風に思ってたのかよ」
「え、何か言った?」
「何も言ってないの!」
さっきからウヌカルがなんかブツブツ呟いている気がする。
まあいいか。私も幼い子供に対して大人げなかったかもしれない。NPCだし。
というかこの世界のNPCが本物の人間にしか見えないのでたまにムキになってしまう。
落ち着こう。目の前の幼女はNPCだし、というかそもそも幼女だし。ノブナガが可愛がっているのは娘的な感じでだ。
私のように嫁的な感じで可愛がっているわけじゃない。そうだ!私は何をこんな幼女にイラ立ちを覚えているのだ!バカバカしい!
ノブナガと私は大人の関係。大丈夫。幼女が入り込める隙間などない。めっちゃ大丈夫。というか私とノブナガの子供として育てるのもありかも。
ああ!それだ!子供はいくらいてもいいからね!野球チームどころかサッカーチームを作るつもりだし。
よし!ウヌカルは長女として育てていくとしよう!おお!テンション上がって来た!
そしてゆくゆくは私とノブナガの遺伝子の結晶を。ぐへへへ。
ゲーム内でも現実世界でも。ぐっへへへ!
夢が広がる。というか未来計画が捗る捗る。ぐっへへっへへっへ!ぷぎゃー!
「ランお姉ちゃん!」
「なんですか?我が娘よ!」
「、、、気持ちが悪いの。それはそれは吐き気がするほど気持ちが悪いの」
ウヌカルが私を産業廃棄物を視るような目で見てくる。
、、、うん、まあ子供だからこういうこともあるか。
よしよし娘なのだから大丈夫。これが母の懐の深さよ。
懐の深さを発揮した私はアイヌたちと協力しながら大帆船建造のために働いた。
基本的に私たちは二班に分かれて作業した。私を筆頭とした船造り班、そしてノブナガ率いる鉄砲造り班だ。
ノブナガは火薬と鉄砲の作り方をアイヌたちにも教え、手伝わせていた。
「ノブナガ!船ができるまでに1年以上かかるみたいだよ!」
「ああ、時間かかりそうだな。だからついでに鉄砲も作らせてるんだ」
「なんか結構退屈な時間が続くんだね。まるで私の嫌いな修行パートの様」
「そう言うと思ったよ。とりあえず船と鉄砲はもうアイヌに任せておいて大丈夫だろう。だから取りに行くぞ!」
「え、なにを?」
「新しい式神に決まってるだろ。せっかく隠しステージに来たんだぞ!手に入るものは片っ端からかっさらう」
「そう言われてみれば」
「というわけで俺たちは遠征に出るぞ」
「お!北海道旅行ってことだね!!!」
ん?これはもはや新婚旅行では!?
「いやめっちゃ楽しそうな顔してるけど、蝦夷の獣は平均レベルくそ高いから過酷だと思うぞ?」
「なるほど!二人で過酷な旅を乗り越え、絆を確固たるものにするという訳だね!」
「、、、まあいいや。それで」
「ウヌカルも一緒に行くの!」
私たちが旅の準備を進めていると我が娘もついてくると言い出した。
ウヌカルはもう我が娘!こんな危ない旅に連れていくわけにはいかない!許せ!娘よ。
「そうか。じゃあお前も準備をしろ。長旅になるぞ」
「え??いいの!?過酷な旅なんでしょ?子供連れていくのはまずいんじゃない?」
「いやこのガキは重要キャラっぽいし、回復系の術が豊富に使える。かなり役に立つはずだ」
「そういえばうちの子は優秀なんだった!」
「過酷な旅になるからこそ回復役がいるとかなり助かる。あとうちの子って何?」
「では共に行こう!我が子よ!」
「ウヌカル頑張るの!」
「だからうちの子って何?」
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3日後、私たちは旅立ちの日を迎えたのだった。
最初の目的地は「カムイ・ミンタラ」。現代で言う「大雪山」だ。
この山はダンジョンになっていて、山頂には神狼「大口真神」がいるらしい。鳥の次はモフモフ系だ!腕が鳴るぜ!
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