同級生に相談


最近、お姉ちゃんの様子がおかしい。

ううん、前からおかしかったんだけど、今はもっとおかしい。

そのおかしな姉が現在、私の膝の上にのっている。


「う~ん、満足」

「……そう、良かったね」

「うん、よ・か・っ・た・わ」


うん、唇が無意味にセクシーだ。

いいんだけど、妹にその対応はちょっとやだな。

なんというかセクハラだ。

あのとき以来、お姉ちゃんはたびたび耳かきをお願いしてきた。

余談だが、彼氏さんとは上手くいっているらしい。大人の階段を上ったのかどうかはわからない。

変な扉は開いちゃってるみたいだけどね……

大丈夫かな、この人?





そして私の目の前にいる友人に相談している。


「で、それが相談の内容なのね?」

「うん、そうよ」

「はぁ……ひさびさに奈美の部屋にお呼ばれされたのに、恋バナじゃないの?」


さもガッカリとした様子で幼馴染であり、親友である鈴木すずき梨子りこが私を見る。小中と同じで、高校からは学校が分かれてしまったが、今でも良い友人としてちょくちょく遊んでいる。

いつもは外で皆で遊ぶのに今日は久方ぶりのお家。なので、どうやら恋愛絡みの相談ごとだと思ったらしい。

梨子に相談相手の白羽の矢がたったのも、彼女は古くからお姉ちゃんのことを良く知る幼馴染の一人だからだ。


「でも、言っちゃなんだけど悠美姉ちゃんって、もともとちょっと変わってるよね?」

「まぁね……」

「じゃあ、大丈夫なんじゃないの?」

「いや、大丈夫じゃないの。私の精神衛生上に!」

「ふ~ん、まぁ、奈美はお姉ちゃん子だしね」


え?

そうなの?

そういう扱いなの?

別にお姉ちゃんは嫌いじゃないけど何か嫌だな、その評価。

そんな私の内心に気づくことなく、梨子は改めて聞いてきた。


「とりあえず確認するね」

「うん」

「悠美姉ちゃんが最近、男と付き合うようになった」

「うん」

「その初デートの前日に耳が汚いかったから、耳かきしてあげた」

「うん」

「それから悠美姉ちゃんが、やたらと耳かきしてくれって言うようになった」

「うん」

「で、どこが変な話なの?」

「え?」


何だ?

話が繋がっていない。


「いや、変でしょ?」

「でも、悠美姉ちゃんは、そもそも変でしょ」


あ、それはわたしと同一見解なんだ。

ちょっと安心した。


「いや、変て言ったらダメだな。ほら、アレ、残念美人ってヤツ」


おっ、言い換えた。

ここはわたし的には反対したいとこかな。

お姉ちゃんは残念なだけで美人ではない。

決してない。


「じゃあ、具体的に何が変なの?」

「何か最近色っぽくなった」

「そ、そうなんだ……まぁ、彼氏が出来たんだしね」


私の言葉に何かを感じたのか梨子の頬が赤くなる。

そして興味津々に聞いてきた。


「ちなみにどこまで進んでるの?」

「梨子、距離が近いから」

「おっと、ゴメンゴメン」

「多分、梨子が思ってるほど進んではいないと思うよ」


そう、大人の階段は上っていない。

そのはずだ。

お姉ちゃんは残念な人だが、身持ちの軽い女じゃない。


「ふ~ん、まぁその辺は置いといて。奈美が言いたいのは『耳かきされてるときの悠美姉ちゃんが変だから、どうにかして欲しい』ってことなのね?」

「うん、そう」


ようやく話がつながったことに安堵する。

しかしそんな心の平安は長くは続かなかった。


「だったら話は簡単ね」

「え?そう」

「そうよ。まずは悠美姉ちゃんの立場になって考えればいいわけよ」

「立場って?」

「超・簡単」


我が意を得たりとばかりに破顔して自信満々に言ってきた。


「あたしが奈美の耳かきを受けて、何が変なのかチェックしてあげるわ」

「は?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る