第2章 水の底
変わっていった世界
いつからか知っていた。
自分が、世界を揺るがすかもしれない存在なのだと。
数えきれないほどの人々が犠牲になった、過去最大の災厄。
その原因を封印した魂を身に宿した、自分という存在。
自分という存在は、昔から必ず殺されてきた。
そんな自分が、どうしてここまで生きてこられたのかは分からない。
分かるのは、自分がいつ殺されてもおかしくないということ。
今は自分の正体に気付いていない両親が、それに気付いた瞬間、自分に
自分以外の人間は、信じてはいけないということ。
それだけだった。
自分の正体に気付いてから、急激に世界が広がって見えた。
今まで分からなかった両親の会話の意味が分かるようになっていたし、読めなかったはずの文字も読めた。
さすがに字を書くことまではすぐにできるようにはならなかったけど、それも練習しているうちに問題なくなった。
そして世界が広がると同時に、世界がどんどん冷めて見えた。
世界中で〝鍵〟という存在は殺されてきた。
遥か昔から、ずっと。
誰かも分からない他人に。
あるいは、信じていたはずの友や家族に。
世界はこんなにも残酷なんだ。
そんな世界で生きていくには、自分の正体をひたすら隠して過ごすしかない。
もしくは、誰かが殺そうと襲ってきても負けないように力をつけるしかない。
味方など、人間の中にはいないのだから……
とはいえ、幼い自分にはできないことばかり。
だから、自分は身の周りの環境を大いに利用することにした。
自分の世界は、広い森と小さな小屋。
人は全く訪れず、ここにいるのは自分と両親だけ。
ごくたまに迷い込んできた人も、もれなく父が連れていった。
この環境は、人知れずに自分の力を磨くにはうってつけだ。
自分の手には父からもらった魔法に関する本もあるし、両親を騙しながら力をつければいい。
それが、自分の出した結論だった。
そう決めてからは、毎日外に出るようになった。
今まではあまり外に出る自分ではなかったが、両親から隠れて力を蓄えるには、外で学ぶしかなかったのだ。
母は自分の変化に驚いてはいたものの、これも成長だろうと優しく見守るにとどまってくれた。
「やっぱり男の子ね。やんちゃなんだから。」
そう笑う母になんとも言えない気分になったけど、自分の身を守らなければいけないという危機感の方が強かった。
生き残らなければいけないと。
どうしようもなくそう思って、焦燥感に急かされていた。
そしてそんな日々がある程度過ぎた頃、自分は初めて彼女たちと話をしたのだ。
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