呼び声
―――帰ってきたよ。
その言葉を聞いて、飛び上がる思いだった。
あの子が再びこの辺りに現れていたのは知っていた。
でもあの子は決して、こんな深くには足を踏み入れてこなかった。
ようやく来てくれた。
ずっと待ってた。
人の時間が狂おしく長く感じるくらい、待ち焦がれていた。
あの子は、急に私の前からいなくなってしまった。
あまりにも唐突で、現実を受け入れられなくて。
それからずっと、あの子の気配すら感じられなくて。
帰りを待っている間も、もしかしたらあの子は死んでしまったのかもしれないと、ものすごく不安だった。
長かった。
時間というものが、こんなに重たくて苦しいものなんだと初めて知った。
さらに、私はここを離れられないという現実がつらく胸に突き刺さった。
どんなにあの子を捜したくても動けない。
ただ待つことしかできない。
歯
でも、あの子がようやく帰ってきてくれた。
私が導けるほど近くまで、やっと。
早く来て。
森は深くて迷うでしょう?
だから、私が導いてあげる。
この森のみんなで、あなたを導いてあげる。
だから、早く…… 早く帰ってきて。
ずっと待っていたの。
会いたくて会いたくて、たまらないの。
あなたは、私とみんなが愛した子。
だから、早く―――
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