第9話 FC本部というのは何なのか
話が少しそれているようにも感じますので、改めて、フランチャイズオーナーになるということはどういうことかということに戻してゆきたいと思います。
本来、FC加盟店オーナーというのは、その文字が表す通り、「経営者」であります。
ですが、昨今、フランチャイズ形態をとる大企業の躍進により、このシステムは形骸化しているのが実情です。
残念ながら、FC加盟店オーナーには、本来「経営者」が持つべき権利を持つことが不可能である世の中となっております。
例えば、営業時間の決定、仕入れの決定、売上金の管理、人件費やその他経費の支払いなど、基本的にオーナーが独自に決定することに何らかの制限がかかっているのがFC加盟店オーナーであります。
こう書くと、本部側の立場の方からは、反論があるかと思います。そんな制限はない、「チェーンイメージ」順守のため「協力」をお願いしているだけだと。
経験したものから言わせると、あくまでも実情は、「制限だらけ」です。基本的に「自由裁量権はない」と思っていただいた方がいいと思われます。
どういうことかと言いますと、なにかにつけて、本部方針に逸脱していないかを検討する必要があるということです。そしてこの本部方針はあちらの都合でいくらでも変更できるものであることは言うまでもないことです。
結果、もうお分かりですね。
「本部の機嫌を損ねるな。本部の人間ににらまれるな」
そのような無言の圧力がかかります。
いえ、この無言の圧力は、ここ数年のあるFC加盟店オーナーと本部が争った訴訟を見れば、もうすでに、「無言」ではなくなったと言えると思います。
誤解を生まないように申し上げますが、私個人としては、かの訴訟のいきさつから結果に至るまで、どちらにも問題があると私は持論を持っております。
しかしながら、ここでその話をしても、なんら果実を生むものではありません。なぜなら、その訴訟の当事者はあなたではないからです。他人同士の争いなどはあくまでも参考資料にしかなりえませんのですから。
ともかく、本部とFC加盟店オーナーというのは非常に「微妙な」関係であるということです。FC加盟店制度というものが世に現れてすでに半世紀以上が経過している現在になっても、はっきりとした法制度も判例もほとんど存在しない上に、行政と司法で見解が分かれている部分もあったりと、まったくといっていいほど、確立された基準というものが存在しないのが、この制度の実情です。
もしあなたが、それでもFC加盟店オーナーになるというのなら、その点は肝に銘じておく必要があるということです。
「FC本部というのは何なのか」
結果から言えば、「超絶重要な顧客」と言った方がよいかもしれません。
あらゆる意味で、「重要」という形容がもしかしたら適切なのではないかと、私はそのように考えています。
しかしながら、本来顧客というのは「平等に」扱うべきものであるはずだと考える私には、「重要な顧客」というのは「厄介なもの」としか思えませんでした。
ここでいう「平等」とは「機会の平等」を言っているのであって、「懇意にしない」という意味ではないことをあえて、記しておきます。
加盟店オーナーからすると、自身の経営方針を余すところなく発揮することができない「目の上の
何よりも、個人では集積することのできない圧倒的なデータ量、商品開発力、製造基盤、メディア戦略、物流ルート等々、個人経営では絶対になしえない資金力によるバックアップは非常に強力にあなたの経営を後押ししてくれるでしょう。
はっきり言って、よほどのことがない限り、経営赤字を何カ月も引きずるようなことにはならないと言い切ってもよいと思います。
ある意味割り切って、その「超絶重要な顧客」とお付き合いしていれば、まず、くいっぱぐれることはないと断言できます。
それぐらい大きな力が本部にはあります。
ただし、あくまでも大手FCチェーンのお話です。
黎明期の弱小FCチェーンだと、投資分の回収が不能なまま月日が過ぎる可能性は充分にあります。
もし始められるなら、そのあたり、充分にお気をつけて決断してください。そして、始めたらすぐに、考えておいてほしいことがあります。
いえ、むしろ、始める前にはすでに考えておかなくてはいけないことだと思います。
「どうなったらやめるか、いつやめるか」
ということを、です。
それから初めの契約の時に、チェーンイメージを前面に出してくるFC本部とお付き合いされるのであれば、ある意味、「覚悟」をなさってください。
おやめになるときに「ひとのこころ」を保てているかどうか、ということをです。
大手本部の力はとてつもない規模を持っています。
それはあなたに莫大な富をもたらす可能性を秘めていますが、同時に、「人としての心」を蝕んでいく危険と表裏一体となっています。
どちらをとるか、保てるかどうか、それはあなた次第ということです。
教訓その8――「本部」は「重要な顧客」であって、決して「味方」ではない。正気を保てるかどうかはあなた次第だが、本部は容赦なくあなたの「心」を蝕んでゆきます。「覚悟」してください。
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