第8話 トラブルは避けられない


 ここまで2話を使って、「お客様トラブル」についてお話してきましたが、では結局どうすればいいんだよ? 結論を言えよ? という声が聞こえてきそうです。


 私の考えでよければお応えいたしますが、これから始めようという方が読んでいるということを念頭にお返ししますと、第一には、


 「自分で考えてやってください」


ということになります。


 はぁ? 何だよそれ? という返しが聞こえてきそうですが、何よりもまず第一番目の答えとしては、これ以上的確なものはありません。

 一度でも経営者になられた方なら、言うまでもなく、この意味をご理解していただけるものと思います。

 

 つまり、答えはそれぞれの経営者様の「考え方と覚悟」によって変わるからです。


 ですので、私の考えであればお応えできますが、それはおそらく皆様にとっての「正解」ではないのではないかと思います。なぜなら、あなたのお店を経営するのは私ではなくあなただからなのです。


 第二は、


 「すべての人に好意を持ってもらうことは不可能であると心得よ」


です。


 商売である以上、誰かに「消費」をさせることになります。その「消費」がお金なのか、体力なのか、心なのか。

 いずれにしても、あなたが「利益」として得るものは、誰かの「消費」であるということを肝に銘じておく必要があります。

 その上で、いかに気持ちよく「消費」してもらうかを考えるのが商売というものです。

 この立ち位置がもし理解できないのであれば、残念ですが、「経営者」は不向きと言っても過言ではありません。

 「それでも俺はそれを実現してみせる」、という方がいれば、その方は私の意見など必要としないと思います。もしそのような方がいれば、私は心から応援致します。その方法を是非、探してください。それは人類にとっての大発明になると思います。


 最後に、


「覚悟せよ」


です。


 人から何かを得る行為が「商売」の根幹である以上、中には、「利益」以外のものを渡されてしまうことがあります。例えば、「恨み」や「妬み」、「誤解」、「敵意」などなど。


 覚悟してください。避けることはできません。



 ということで、私の考え方をここに記さないのはフェアではないと思いますので、書くことといたします。

 これをもって、今回のまとめといたしたいと思います。



 私は商売というものは、ひととひとのつながりであると思っています。

 それは一生に一度しかない奇跡の瞬間かもしれません。それが毎日延々と続くのが商売です。であれば、出来る限り、「納得して消費していただくこと」こそが売り手の目指すものであると思っています。

 あくまでもここでいうのは、間違っても「相手に得をしてもらう」ということではありません。し、そんなことは不可能だと私は知っています。

 買い手は基本的にはその取引では「損をする」ことになるのです。その後別の取引において次はその人が売り手になって、「結果的に得をした」ということは起こるかもしれませんが、この場合、やはりその取引の「買い手」は「損している」ことになります。

 ですが、売り手が提供し、買い手が手に入れたものがその後誰かに売られることがなく、消失してしまったとしても、「あの時、買ってよかったな」と思ってもらえることを目指し続けることが「売り手」のあり方であると思っています。

 その為に、仲間に協力してもらい、従業員さんに何かを消耗してもらって、買い手から「お金」をもらって、「利益」を上げることをあきらめずに追及してゆくことをただただ続ける。そして、その結果として、もらいたくないものをも受け取る覚悟をもって臨む。

 ただこれこそが、「商売人」であると考えます。


 良くも悪くも、人と人をつなぐもの、これこそが「商人」であり、それ以上のものではない。

 であれば、出来るだけ多くの人を、もしくは、できる限り強く人と人をつなげる存在であろうと日々努める存在でありたいとそう考えています。



教訓その7――「経営者」もたかが人である。であれば、自身の本分をわきまえ努めることこそその在り方であるといえる。すべての人に好まれるのは不可能と知れ、そして覚悟せよ。

 

 

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