第7話 お客様トラブルについて(2)
さて、次は民法的な観点からですが、結論から言うと、まったくと言っていいほど保護されていないと言って差し支えないでしょう。
と言いますのも、民法的に紛争を解決するためには、裁判所へ訴訟を提起しなければなりません。
しかしながら、個人で弁護士を雇っていたり、知り合いに弁護士がいる場合ならともかくとして、通常は弁護士に知り合いがいる個人経営者の方が圧倒的に少ないと思われるからです。
たしかに複数店舗を経営しているオーナーさん方の中には会社の規模が大きくなるにつれ、専門的な法的措置の相談や、万一の訴訟の為にあらかじめ顧問弁護士を雇ったりできるかもしれませんが、一店舗経営者にそのような金銭的余裕などないのが通常です。
そうなれば、本部のケアを期待したいところですが、おそらく、弁護士の斡旋や紹介をしてくれることはないでしょう。また、本部の弁護士へ相談するということも不可能だと思われます。というより、私の場合、どのような時でも対応してくれることは一度もありませんでした。
つまり、通常コンビニ経営において弁護士と関わることはほぼ皆無だということです。そうなれば、自身で弁護士を雇い訴訟を起こすことになりますが、損害金額が自分の生活や生命に深刻なダメージを与える事件でもない限り、訴訟の手間と経費を考えれば、やめておいた方が結局得だという判断になることの方がほぼ100パーセントです。
それに、訴えられた場合は別として、こちらから訴訟を起こすとなると、例えばある損害が生じたことについて、それが相手の行動の結果であると、確実に証明する責任は、訴訟を起こした側になるわけですから、場合によっては敗訴する可能性も0ではないのです。
そんなリスク、普通は冒せません。
以上から、民法による救済もほぼ望めないだろうということになるわけです。
ここまでお話ししてくると、「刑法も民法も自衛に使うことができないではないか」ということになるのですが、まさしくその通りだと言っておきます。
結局は少々荒っぽい言い方になってしまいますが、「自分の力のみが頼り」ということです。
ここでいう「力」というのは、腕力という意味も無くはないのですが、それよりもおそらく、「総合的な力」という方がしっくりくると思われます。
「交渉力」「経営力」「財力」「知力」「知識力」「対応力」などなど……。
ありとあらゆる「力」という文字がつくものすべてをあわせた「力」、ということになります。
しかし、一つだけまったく頼りにならない「力」があるとすれば、それは「フランチャイズ本部の力」です。これは「自分の力ではない」と肝に銘じておく必要があります。
それでは最後に、じゃあどうすれば自分のお店や従業員を守ることができるのか?
これについて、「CS」という観点から見ることにします。
顧客が満足してくれれば、お客さんが集まってくると言うあれですね。
残念ながら、これは「神話」でした。
「CS」によって売り上げが上昇し、利益が膨らんでいくというのは、一見まともな考え方に思えるのですが、結果から言うと、「見えないリソース」を消費し尽くしてゆき、最後には立ち行かなくなる方法となります。
前回の具体例をとって考えた場合、「じゃあトラブルを起こさないようにたちまわればいいんじゃない?」「お客さんに注意なんかするからだよ」「立ち読みなんか別にほっておけばいいじゃん、物盗まれたわけじゃないんだし」など、いわゆる「もめごと」が起きないように店舗運営すればいいじゃないか、そうすれば他のお客様にも「嫌な思い」をさせずに済むし、刑法や民法なども別に問題にならないしね、という考え方の方、もしかしたらこういう方がたくさんおいでなのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
お客さんとトラブルが起きたら、従業員さんたちに怪我をさせたりするかもしれないんだから、絶対それはダメだよ、そんな経営者は最低だよ、という「言い方」をされる方の大半が、実は自身が一番従業員さんを傷付けていることに気づいていないのではないかと思います。
これが「見えないリソース=従業員さんたちの心」を蝕んでいっていることに気づいていない、もしくは、そんなことは仕事なんだから当たり前だという方ではないでしょうか。
具体例のような「お客」に実際対峙して、言葉を交わし、悪態をつかれたり、強要されたりしているのはいったい誰なのでしょう。それを「仕事だから」の一言で我慢することをさらに強要しているのは誰でしょう。
前者は言うまでもなく、従業員さんたちです。では、後者は?
これが、いわゆる「経営者」なのです。
そもそもCSは、販促やサービスに「お金=経費」をかけずに売り上げをあげる方法として考え出された方策でした。
ですがこれ、「従業員さんたちの心」という、「お金=経費」ではない「資源」を消費して行ってきた売上アップ法だったのです。
なので、「見えない」んですよ。
知らず知らずのうちに、従業員さんたちは「心」をむしり取られ、切り刻まれ、傷つけられながら「CS」を行っているのです。
しかしながら、これも「資源」であるなら、無限であるはずがありません。
もしかしたら、あなたのお店にも過去に「心」を消費し尽くしてやめて行かれた従業員さんがいるかもしれませんね。
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