第4話 接客業という括りはあまりに大雑把すぎる
「商売はサービス業」だと言われる方がおられます。
ですが、この考え方はやはり少し本質を見過ごしてしまう傾向があるように思います。
本来「サービス業」というのは「
これに対して、商品を売ってその代金を受け取る仕事を「小売業」といいます。こちらはものが取引の対象の本質であり、それを提供する際の行動には価値が付与されていませんし、代金を請求することはありません。
多くの商取引の中で、近年人々は、その取引内容に当事者の行為を含めて考えてしまう傾向が強くなってきたように感じます。これには、大量消費時代の終焉が大きく影響していると私は考えているのですが、本稿はこの話ではないので、それについては先に譲ります。
起業をされるときに一番に考える必要があることは、「何を提供して代金を得るのか」ということだと私は考えています。
例えば、こういったことをお話しする際に例に挙げるとわかりやすい事象を申しますと、お金を払ってお酒が飲めて、女性店員さんがいるお店の例でしょうか。
「お酌」を要求することができるかどうか、ということです。
お店の形態、つまり、そのお店が何を商品としているかで答えは変わります。
「サービス」を提供しているお店であれば、「お酌」の要求は可能かもしれません。これはお店のサービスの度合いに応じて段階的なこととなるでしょうから、度合いには差はあれど、要求自体は可能であると思われます。
しかしながら、「お酒という商品」を提供しているお店であれば、「お酌」の要求はできないものであると言えます。なぜなら、「お酌というサービス」は売っていないから、もしくは、売れないからであります。もし仮に、これを知らずにしつこく要求した場合、刑法上「強要罪」にあたる可能性が生まれます。
じつはこれ、法的な問題なのです。詳細は省きますが、「風営法」というやつですね。なので、そもそもお店の法的区分が異なるので、「売れるもの」に差異が生じるというわけです。
ところが昨今の商環境においては、「店員の笑顔がない」とか「言葉遣いがなってない」とか「なんとなく嫌な顔をして応対された」などといういわゆるクレームがおおく本部に寄せられています。
しかしながら、これは正当なクレームとは言えないのです。
賢明な方であれば、そんなことは当たり前だとご理解いただけるのでしょうが、残念ながら、この問題、ものすごく根が深いところでこじれています。
現代商社会においては、「これら」の行為を含めて商売だと考える風潮がものすごく強く根付いてしまっているからなのです。
そのような社会に長く触れていると、それがあたかも当然であるかのような錯覚に陥ることは何も不思議なことではありません。
かく言う私も、経営者になるまではそのことを信じていた口だからです。
一例として、ここに挙げるとすれば、わたしは「販売拒否」ということができるのかどうかがわからずに、調べてようやく「していいんだ」となったという経験があるぐらいです。
つまり、お店に並べて値段を付けているものであれば、お客さんが要求した場合、相手がどのような人物であるかどうかにかかわらず、必ず売らなくてはならないと思い込んでいた時期が実際にあったということです。
今考えれば、実に恐ろしいことなのですが、こういった基本的なことすら本部の研修では教えてくれません。
「知っていて当然だろう、それはあなたの勉強不足では?」
というお声、はい、そのとおりなんです。まったくの自身の勉強不足によるものなので、これについて研修中に本部が教えてくれなかったとしても、本部に落ち度があるとは思いません。
ここで私が伝えたいのは、そのぐらい経営者側でない人間というのは今の社会に錯覚させられているということです。
そして、そのように思いこまれている方々があなたの商売の対象となるお客様方であるというのが現代社会の状況だということです。
そして、何を隠そう、その錯覚を生み出し、今もなお拡大し続けている元凶こそ、いわゆる「経営者サイド」、そうです、あなたがこれからなろうとしている側なのです。
これにより、「カスハラ」が横行する時代が到来したのです。
次項でこの点につきもう少し掘り下げていきたいと思います。
教訓その4――因果応報。自分の都合に合わせて捻じ曲げた結果はそのうち自身の身に災厄となって降りかかるということを肝に銘じておく必要がある
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