第2話 「チェーンイメージ」という常套句に警戒せよ
「チェーンイメージ」という言葉を知っていらっしゃるでしょうか。
フランチャイズチェーンの多くがこの言葉を使っているものと思われます。
非常に「便利な」文言です。
加盟店でなにか問題が起きた場合、いわゆる犯罪ではないような懸案事項で、本部にとって都合の悪い事柄の場合、この言葉で片づけられます。
つまり、「オーナーさんのその対応はチェーンイメージを悪化させる恐れがありますので、気を付けてください」というような形で使われます。
はっきりとイメージダウンするからやめろとは言いません。あくまでも、やんわりと指摘、もしくは警告という形で使われます。
これまではそうでした。
ですが、最近になって、少し事情が変わったかもしれないと思える事案がありました。
先日、大阪地裁の判決において、明確に「チェーンイメージ」という言葉を用いて、判決が出されたためです。
もしかするとこの先は、この「チェーンイメージ」という言葉をより明確な形で示し、加盟店オーナーに対して圧力が掛けられるようになるかもしれません。
私自身の見解では、今回の判決は妥当ではないと思っています。
その点少しだけ踏み込んでお話しますと、
第一に、「チェーンイメージ」という言葉があまりにも抽象的過ぎて、何かを判断するにあたって不明確な基準であり、判断基準としてはそぐわないと思うからです。これほど不明確な基準で判断するとすれば、どんな事柄もこれに該当することになります。
例えば、トイレがある一定の時間のあいだ汚れていて、店員より早くお客様の方が気付かれた場合であっても、この「チェーンイメージ」に該当することになりかねません。
まさかそんなことで? と思う方もおられるでしょうが、本部と加盟店オーナーの関係が悪化してくると、こういう些細な事柄でも、「それが頻繁に起っていた」などという、これもまた不明瞭な情報を持ち出して、主張してくることは十分に考えられることなのです。
第二に、「チェーンイメージ」というのは本来、チェーン本部がそれを維持するべく努力する義務があるものであるからです。
これは加盟店の売り上げや収益は、そのチェーンの「イメージ」に大きく依存する傾向があり、加盟店側はこれに対して信頼して「ロイヤルティ」を収めているからであります。
つまり、代償を払っているのは加盟店の方であり、これによって、チェーン本部はこれを維持する責任があると言えるからです。
であるならば、本部として「チェーンイメージ」を維持する方法は、加盟店に是正や契約解除を発するのではなく、あくまでも、これは、その当該店舗の個別の問題であり、チェーン全体の「チェーンイメージ」を低下させるものではない、と言い切ることであると思うのです。
経営権は加盟店オーナーにあるという根本こそが、フランチャイズ契約の根幹となります。そうであるがゆえに、本部は各加盟店のオーナーに給料を支払う義務を持たなくてよいのです。各店の従業員に対しても本部は一切、給料を支払う義務はありません。すべて、加盟店オーナーがその責任を負っています。
であるのに、たった一つの店舗の行動がチェーン全体に影響を与えるとかんがえるのは、議論が飛躍しすぎています。ましてや、全国数万店舗という規模のチェーンであればなおさら、一店舗の影響力などそれほど大きいと考えるのはあまりにも行き過ぎた判断と言えると思われます。
例えば、ある飲食チェーン店において、ある地域で食中毒が起きたとして、遠く離れた同じチェーン店の売り上げに重大な影響を与えるでしょうか。
おそらく一時的にはいくらかの影響があったとしても、「チェーンイメージ」を完全におとしめるほどの影響はないように思います。
少し話が逸れました。
つまり、私はこう言いたいのです。
ある一店舗における問題はその店舗固有の問題であって、それはその店舗の経営者たる加盟店オーナーの裁量によるものであり、他の同一チェーンの、ましてや、違う加盟店オーナーが経営権を有する店舗に影響を与えると考えるのは、あまりにナンセンスと言わざるを得ない、という事です。
然るに、ある一店舗において起きた「問題」が「チェーンイメージ」なる不明瞭な基準を「低下」させることなどありえないのです。
当該裁判において、どうしてそのような結果となったのかについては、私は当事者ではありませんので、よくわからないとしか申し上げられませんが、新聞やネットの記事を読む限りで一般論でお話しますと、このような帰結が妥当であると私は考えています。
ですが、とても遺憾なことでありますが、現時点において大阪地裁の判決は判例として記録されることとなります。
今後、フランチャイズチェーンに加盟されることを検討されている方は、この点、ご留意されるのがよろしいかと思われます。
教訓その2――「チェーンイメージ」という言葉は、加盟店オーナーの経営権に対して制限をかけるのにはとても都合がよい言葉である
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