第5話
そういえば,どうこうなった日の事
言う?
そうそう…
あれは…
ピンポン…
この時間…
やばい…かも?
出ない方がいいな.
オーナーの女の子に怒鳴られても怖いし.
女の子に声上げられるのってトラウマ.
まじで.
居合わせても駄目.
自分宛てとか宛てじゃないとか,もうほんっと関係なく.
うおっって思って,
自然に足が遠のく.
「るいー.
開けてー.」
・・・
?
オーナーの声が外からするな.
聞き間違いで無ければ.
一応,画面確認はするけど,
そうだな.これは.
「オーナー,どうしたんです?」
ほんと,どしたどした.
こんな時間に来るような人じゃない.
酒臭いし.
「帰る場所間違えたんですよね!?
タクシー呼びますよ?」
ですよねっ!?
こっち呑んで無いけど免許も無い.
おんぶに抱っこじゃ帰られない.
「水水水.」
「はいはいはい.
水道水しかないですけど…」
こっち,ミネラルウォーターとか飲む趣向無い.
足取りは,しゃんとしてるな.
「飲ませてー.被りそう.」
「飲めないなら言わないで下さいよ…」
ストローどっかあったかな.
めんどくさいなー.
無いよ,そんなもん.
キッチンの引き出し
おもむろに引っ張って見てるけど,
見付からない.
被って酔い覚めたらいいかもだ.
いやいや…待って待って.
片付けるの僕だよね…
「味が違うね.
水道水って感じがする.」
おぉいっ飲んでんじゃん!
「黙って飲んでて下さいよ…」
いらん事言うから,なんか荒らしちゃったじゃん.
また,ごそごそ戻し収納する.
「浄水器つける?」
「オーナーがいいなら付けたら良いじゃないですか.
僕は…」
いらない.けど…
「どちらでも良いですから.」
「洗おうか?」
グラス持ったオーナーが目に入る.
「そのまんまでいいですよ.」
「何か使うと,すぐにどうにかするよね?」
あぁ…
原状回復に務めてるから.
「落ち着かないなら止めます.」
あぁ,でもこれ言われちゃうと,
もう,ここん中酷い事になりそう.
楽だけど後が怖いな.
「どっちでもいいよ.」
「んじゃ好きにさせて貰います.」
どっちに向かって好きにしたらいいんだろう…
言ってて,もう分からない.
どっちでもいいって言いながら,
人って,こっちがいいってあるんだよね.
そっちに寄せなきゃだけど,
分からない時は今までと同じが変わり映え無くて,
色々と変わらなくていいような気がするな.
スマホをローテーブルの端っこに置いて,
オーナーの空グラス手に取った.
「まだ飲まれますか?」
「酒?」
「何言ってんですか…
置いて無いですよ.」
あ…
「呑みたいなら買ってきますけど.
きちんと細かな指定下さいよ.」
「行くなら一緒行くけど.」
はぁ…
「僕は呑みたくないですし,
もう,ほんと帰った方が良いと思いますよ.
家の人心配しますし.」
オーナーが笑った.
「お水は飲みますか?」
「もういいよ.有難う.」
「いえ.」
グラス持って行って洗って伏せた.
「オーナーどこのタクシー使ってましたっけ.
ここから直で使わない方がいいですよね?
流しの捕まえます?
この時間いるかなー.僕一緒に出ますから最終どうかしますけど.
こっから駅まで出て,そこで乗り換えて帰った方がいいですかね?
それは…」
それ位は出来ますよね?オーナー?例え酔ってても一人で.
僕そこまでは付き合えない…
アプリ見ながら…
顔上げると,オーナーが見てた.
「座ってやったら?」
まぁ…そう言うなら.
「どこのタクっ…」
顔上げてオーナー見たら…
近いな,これ.
少し離れて座ったのに,
寄って来たのか.
あぁ,
一緒に画面見てたのか.
だよなー.
自意識過剰過ぎー.
オーナーだよ.
何言ってんだよ僕.
「お風呂入ったの?」
「入りましたよ.
もう寝ようかと思ってましたから.
すみませんパジャマで.」
パジャマが失礼にあたるのか…
ボス迎えるのに,ちゃらけた格好になるのか…
着替えて出るのか…
外で待たせて…着替えた方が良かったのか…
常識ーどこにあるんだー.
「歯磨いた?」
歯…磨いた…?
「磨きましたよ?」
お父さん?
知らないけど.
きちんと出来ますよ.
身の周りの事くらい.
片付けも出来てんでしょうが.
やれますよ.
色々と.
ペットより巧く動けますよ.
可愛げは足りなかろうが,
人間様が負ける訳にはいかない.
「見せて.」
「はっ!?歯をっ!?」
何で?
信用が無いの?
嘘ついてそう?
「きちんと出来てますから.
何でも出来るんですよ僕.
何でも出来ますから.
大丈夫ですから.」
「何でも出来る?
大丈夫?」
「出来ますよ.
大丈夫ですよ.」
うん.だって本当に磨いてるから大丈夫.
「そしたら見せられるね.」
あぁ…
歯並び,あんま良くないんだよな.
はぁ…
・・・
何で僕上司に歯なんか見せてるんだろう.
顔近いな.
オーナー歯科医の免許も持ってたっけ…
な訳ないか.
ん?
あれ?
あらら?
僕の舌食べられてるな.
どうする?
どうしたらいいの?
酒臭いな.
どの位経っただろう.
長かったような短かったような
行方不明な時間.
「僕っ男ですっから…」
よく分かんないけど,
オーナーが連れてきたのは歴代女の子だったはず.
記憶の中の子たちは皆.
「本当?」
「本当ですって.
ほらっ.」
オーナーの左手を僕のペタ胸に当てて,
オーナーの右手を僕の股間に当てる.
ね,男でしょ.
まごう事なき男でしょ?
ん?
何だ何だ,この状況.
駄目だっ上司に,こんな事しちゃ.
「大胆だね.」
えっ!?
違う違う.
な訳ねぇー.
馬鹿馬鹿馬鹿.
碁盤の目のるい君 食連星 @kakumi
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