第9話 次元と反転、オオカミと大神

一方から見れば善でも、他方から見れば悪。

視点を絞って見れば悪い事でも、全体像で見れば良い事もあります。

世の中で起きている争い、不幸の原因は、こんなところにあるように思います。

次元と視点のお話をしていきたいと思います。


1926年、アメリカのイエローストーン国立公園では、最後のオオカミが駆除されました。


その後、約70年間大型捕食動物は姿を消しますが、1995年に再び14頭の狼が解き放たれる事になります。


一時的に鹿の生息数は激減、逃げ惑う鹿を見て、オオカミを放った運営側は

『取り返しのつかない事をしてしまった』

と頭を抱える事に。


しかし、この事件が後に全体を救う事になります。


その後も国立公園で長年にわたり減少し続けてきた、野生動物。

特にビーバーやうさぎ、キツネや鷹などの減少は著しく、

『やはり狼は排除しなければならない』

そう考え始めた頃、


鹿が去った土地に新たな植物が芽吹き、木々が急速に成長、ポプラや柳、ハコヤナギが生い茂り、かつての森が蘇ります。


森の再生とともに鳥が戻り、かつて生息地を失ったビーバーも戻ってきました。


木をかじり倒してつくるビーバーの天然のダムは

カワウソやアナグマ、鴨や魚に生息地を提供。


オオカミはコヨーテを狩り、その結果、ウサギや野ネズミの数が増え、同時に鷹やイタチ、キツネの数が増えます。


驚くべきは、この先にある『環境の変化』でした。

『川の流れ』に変化が現れたのです。

河川の蛇行は減少、土壌の侵食も減り、川幅は狭くなり、深さが増します。

川の流れの安定です。


鹿の食害が減った地域では、植物の回復が促され、土壌侵食も減りました。


国立公園の生態系だけでなく、地形まで改善されるという、大きな結果をもたらすという事は意外だと思うかもしれません。


〜ジョージモンピオ〜

『狼の存在が大自然に多くの命をもたらしていることはあまり知られてはいません』


世界規模で活躍する英国のジャーナリスト、環境活動家。その卓越した調査能力、オリジナリティー、論考の深さは広く認められ、英国「ガーディアン」紙の彼のコラムは世界中で読まれている。また彼自身のウェブサイトは、コラムニストのサイトとして世界的な人気を誇る。環境運動での業績に対し、国連「グローバル500」賞をネルソン・マンデラから受賞。オックスフォード・ブルックス大学構築環境学部客員教授


※youtube イミシン『1995年14匹の狼が放たれた。23年後人々は目を見張った。』より抜粋

https://youtu.be/qGQx324V-rA


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鹿から見れば憎きオオカミ。

短期的に見れば憎きオオカミ。

全体で見れば、

『良い』に、『けものへん』で【狼】で

大神オオカミと言えるのかもしれません。


世の中で起きている分断、⚪︎か×か、勧善懲悪、

すべては視点の問題であって、一方から見れば悪でも、他方から見れば善。

視点を絞れば悪でも、視点を広げれば善。


視点を広げて見れば、見えてくるもの、理解できる『抽象的な』『全体像』


そして、視点を絞ってみて『感じる』もの。

絞ってこそ見える『具体的な』知識。


視点、次元の大きい小さい、高い低いは、お花見を例にするとわかりやすいと思います。


お花見は主に、花の美しさ、枝葉である、花を見ます。

視点を絞る事になりますから、いわゆる低次元的な視点になります。

大きな視点、いわゆる高次元的な視点なら幹、全体像を見ます。


幹を見れば、木の健康状態など、先の事がわかる事もあります。


しかし、『美しさを感じる』という意味では、

枝葉である花を見たほうが、感じると思います。


次元を行き来する時空間トラベラーである人間は、いろいろな経験から、『自分軸』という確固たるものを立てていきます。


『花を見て感じる』事も、『幹の状態』を見て知ることも両方必要であるかもしれません。


しかし、幹の健康状態を見て、花を切り落とす必要があった場合、

お花見の視点で見れば、『とんでもない事』なのです。

鹿の家族の視点から見れば、オオカミを放った事は『とんでもない事』であるのです。


大神オオカミ、良いけものへん、などとは言ってられません。


争いのほとんどが、視点の違いから起きていると思います。


もちろん、すべての視点が一番だとは思いますが、どうか心おだやかに。


あくまでも、自分の視点が一番という意味では、間違いという概念は無く、自分の軸、心の底からの言葉、ウソでないのなら、すべて正解と言えるのでしょう。


もし、何かに怒りを感じるのなら、それも自分の映し鏡であり、自分に必要な片割れ。

『それも必要』だとすべて受け入れて、認めてしまえばいいのでしょうが、それができないからこそ、生き(イキ)ているのです。

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