第7話 奴隷部屋
やっほー! わし、イリス!
御年600歳越えのロリエルフじゃ☆
鬼畜奴隷商人アーカードの奴隷だったけど、夜な夜な街で引っかけた
罰なのか何なのかわからんが、そのせいで児童売春を繰り返すドクズ、ゼゲルに1500万セルスで売られちゃったのじゃ!!
一週間で数人腹上死させるとヒューム的には連続強姦殺人扱いになるなんて聞いてないんじゃー!! 事前に説明しろー!! ていうか、あれは和姦じゃー!! 和姦だったんじゃー!!
「おい、早くこっちへ来い。」
「……はい」
ゼゲルとかいう腹のでっぱったクズに呼ばれて、帝都のはずれにある郊外の家に入るワシ。
いつものノリだとまた拷問されそうなので、しおらしくいくのじゃ。「……はい」とか実に清楚でいい感じじゃろ? しっかし、汚い家じゃのう。
ゼゲルがワシとミーシャとかいうロリ奴隷を連れて地下へと下ると、異臭がした。
「ここが部屋だ。入れ。」
うわ、やば。すえた匂いと腐臭。具体的にには酸っぱい匂いと苦い匂いと甘い匂いが吐き気をマシマシにしてくるぞ。もしかして、ここ奴隷の待遇悪すぎ?
一階は木造のくせに、地下は石造りだし。扉は鉄製だし鉄格子はまってるし。絶対に逃がさないぞという強い意志を感じるのう。
ミーシャも若干震えてる気がするし。
中にも奴隷がいるっぽいな。
仲良くできるといいんじゃが。
ギィィィィ、と鉄扉が開く。
うへえ、ミーシャなんでお前大丈夫なの? 絶対なんか腐っとるじゃろこの匂い。今晩吐きそう。寝ゲロしそう。
「あぐっ」
いきなり背中を蹴られた。閉まる鉄扉に鍵がかけられる。
何の説明もないし、やべえなここ。
闇の中から、じっとこちらを見つめる瞳が4つ。
んん? あれは草原の民グラスフットとドワーフの奴隷かの、どちらも女じゃな。ずいぶん幼く見える。10歳もいってないんじゃないか?
あと、あの隅の方にある塊はなんじゃ。寝てる人か?
「おい、おまえ。しんいりだな。」
グラスフットの幼女奴隷が話しかけてくる。
この種族は背が低く、すばしっこいのが特徴だがガリガリですばしっこさはなさそうじゃ。背が低いのは種族差というより、栄養失調かもしれん。
無言でグラスフットに手を引かれ、石床の染みの前に
風と一緒に吹き込んだ砂粒がじゃりじゃりした。
「はけ。」
え、何を?
なんかこの染み、ゲロみたいな匂いがするんじゃが。
「はけ!」
このがきんちょ、めっちゃド突いてくるんじゃが。
え、何? ゲロを吐けと? ここ奴隷同士でも拷問しあってるんか?
「ベルッティ。このひと、まだ何もしらない。」
「おれだってこいつしらない。いいから吐け。」
言葉が雑で要領を得ないが、ミーシャはマシっぽいの。ちょっと聞いてみるか。
「あの……なぜ吐くの?」
どやぁ! 清楚感バリバリおねだり!
弱そうに見えるじゃろう!! 上目遣いがポイントなんじゃ!!
「ここは、食べ物もらえないから。外にいって、食べたひとが、みんなにあげるの」
え? 一度食ったもんをここで吐いてみんなで分けるのか? ゲロを?
こくりと頷くミーシャ。
こいつら、性癖歪みすぎか?
わし、生理的に受け付けないんじゃが。
「吐かないと、どうなるの?」
もしかしたら新人をビビらせるためのジョークかもしれん。そんな鵜飼いの鵜じゃあるまいし。
「ハガネとベルッティが吐くまでなぐるよ。」
ハガネと呼ばれた奥で座ってるちょっとガタイのいいドワーフ幼女がこちらを見る。
うひゃあ! 目がギラッギラじゃあ!
絶対殺すという意志に満ちあふれておるんじゃあ!!
「それに、食べないと死んじゃうよ。」
ミーシャの視線の先にあるのは、部屋の隅の塊じゃった。
近づいて見てみると、エルフらしき幼女の死体にうじがうじゅうじゅして、ハエが飛んどる。流石にみんなもこれは食べないんじゃな。
エルフには気高いやつが多いから、ゲロを吐かされるのも食うのも嫌じゃったんじゃろうなぁ。
暴行された痕もすごいので栄養失調による衰弱死だけが原因じゃあないんじゃろうが、ひどいもんじゃ。
「外に出るには、どうしたらいいの?」
わしの言葉にミーシャが一瞬固まって、答える。
「夜のお客に買ってもらえれば外にでられる、シャワーとごはんももらえるの。」
「戻ってきたら、吐くことになるけど」
マジかぁ。
こんなんで何年も生き残れるはずがない。
こいつらは大人になれずに死んでくんじゃあ。
きっと、ゼゲル的にもその方が都合がいいんじゃろうなぁ。
児童売春を繰り返すクズだとは聞いていたが、想像以上じゃった。
本当に子供を使い潰している。
主人のゼゲルもやべえが、こいつらを買った客も相当じゃな。
虐待され、性的に消費されている幼女を助けようとするやつが一人でもいれば、聖堂騎士団あたりが飛んでくるはずなのに、そういうこともないっぽいし。
やっぱ、この世は地獄じゃな!
……もしかしてアーカードのやつ、わかっててやっとるんじゃないか?
いや、マジで完全に理解してやっとるんじゃないかこれ。
既視感というか、たぶん前にもあったやつじゃないかこれ。
アーカードは鬼畜じゃし、命を数字で考えるようなクズじゃし、情け容赦がないし、ちょっとわしが連続強姦殺人を起こしただけでキレる心の狭いやつじゃが、根は愉快なやつのはず。
ふっ。
わしとしたことがアーカードとの絆を疑うとは、我ながら情けない。
あいつは容赦なく奴隷を使い潰すし、騙すし、殺すし、ナチュラルに犯罪に手を染めるが、欲に忠実で利益が出るなら喜んで手のひらを返す、とても誠実なクズ野郎だということを忘れていた。
人類のために死ぬべき邪悪である反面、利用価値がある。
流れた血と金の絆というのは、切っても切れぬものよ!
フフ、フハハハハ!!
「おい、おぬしら聞け。」
赤い瞳を輝かせ、わしは言う。
「ここから出るぞ。そして、みんなでたらふく飯を食うんじゃ。」
奴隷どもの動揺が心地よい。
猫をかぶるのはもうやめじゃ、わしがお前らを守ってやるけえのう!!
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