第23話 悩み事がないように見える人は、悩みを隠すのがうまいだけかもしれない

「うーん、いよいよって感じね。咲ちゃん、ちゃんと話してくれるかしら?」

「少なくとも、俺たちを呼んだってことは決心がついてるってことだから大丈夫だろ」


 俺と舞は小鳥遊家への道を歩きつつ、今日の事について軽く話をしているところだった。

 小鳥遊家へ歩いている理由はもちろん、咲さんからの相談を聞くため。今日の段取りとしては、咲さんの指定した時間にインターホンを押せば彼女が出てきてくれることになっている。


「そうだといいけど……意外と尻込みしちゃう場合もあるから」

「そうなったらまたくればいいよ。というか、咲さんなら大丈夫だと思うけどな」

「…………」


 なんせ、あの奏さんの妹なのだから。しかし、舞の表情はどこか浮かない。かなり咲さんの様子を気にしているようだった。

 そんな彼女の頭をぽんっ撫でる。


「舞がそこまで気に病む必要はないよ。あくまで今回の事は咲さん自身の問題なんだから」

『そうそう! 咲ちゃんの事を気にしてくれるのはありがたいけど、こればっかりは亮ちんの言う通りだから!』


 そして、この場に聞こえるはずのない第三者の声。その声は俺のスマホから聞こえてきたものだった。


「奏ちゃん……でも、やっぱり心配で」

『大丈夫大丈夫。今日がだめでも、それで終わりってわけじゃないから。また次の機会で頑張ればいいだけ。でしょ、亮ちん?』

「うん。奏さんの言う通り。だから大丈夫だ」


 スマホから舞の事を励ます声の主こそ、咲さんの姉である奏さんであった。しかし、ここにいるはずのない人物でもある。

 なぜ、秘密にしておくはずの奏さんと俺たちは通話を繋いでいるのか。

 話は咲さんから相談の一週間前に遡る――。






「いやー、日曜日はありがとね二人とも。咲ちゃんもすごく喜んでたよ!」


 小鳥遊家に遊びに行った次の日。いつもの部室で俺と舞は、改めて奏さんからお礼の言葉を伝えられているところだった。

 ちなみに、今回は前回の反省(教室で誤解を招いたあの時)を生かして、しっかりと俺たちしかいない部室でお礼を言うあたり、奏さんの成長を感じる。

 今回の事も教室で何も考えずに発言したらそれこそ、この前以上の誤解を招きかねないからな。


「いえいえ、どういたしまして。咲ちゃんが喜んでくれたのなら、私たちも遊びに行ったかいがあったってものよ。ねっ、亮?」

「そうだな。少なくとも悪い印象を持たれていないみたいで一安心だよ」

「安心して、二人とも好印象を与えられていたから。特に亮ちんは声だけの時より、実際の方が安心できたって」


 それは果たして素直に喜んでいいのだろうか? 奏さんの言葉に舞が「確かに」と頷く。


「亮って、画面越しだと特に愛想がないように聞こえるからね~。普段から、あんまり愛想はないだけど」

「ほっとけ。これでも、最近はもっと明るくなろうと努力してるつもりだ」

「まぁまぁ、そこが亮ちんの個性でもあるから気にしなくて大丈夫だよ!」


 ポンポンと肩を叩かれて奏さんに励まされる。うーん、励まされるのはいいんだけど、あの言い方だと咲さんにはこれまで怖い印象を与えていたのかもしれない。

 反省して、これからは今まで以上に声のトーンにも気を付けないと。


 それにしても、奏さんの言う通り実際に会うことによって咲さんに対して安心感を与えられていたのなら一安心だ。

 ……そうじゃないと、咲さんの方から「相談をしたい」なんて持ちかけられないからな。まあ、今は咲さんの気持ちを待ってる段階だから相談されるっていう確証はないんだけど。

 咲さんから相談を持ち掛けられたことはもちろん、奏さんには話していない。取り敢えずは咲さんの気持ちを優先している形である。これは舞と改めてメッセージアプリで話して確認した事だ。


「咲ちゃんもまた二人と遊びたいって言ってたから、また誘うかもしれないけど……二人は大丈夫そう?」

「大丈夫も何も、むしろこっちから誘いたいくらいよ。咲ちゃんのゲームセンスは私も見習う所がたくさんあったから。今度はちゃんと、ルーズリーフを持って遊びに行くわね!」

「……普段の授業もそれくらいの気概をもって受けてくれ」

「ゲームと普段の授業とは、それこそ雲泥の差があるから亮の願いはかなえられないわ!」

「胸張って言うことじゃねぇぞ。……まあ俺も一緒に遊んでて楽しかったから、また何時でも誘ってくれって伝えといてくれると助かるかな」

「うん、わかった! 咲ちゃんにも伝えておくね」


 屈託のない笑顔を浮かべる奏さん。その笑顔は妹とまた遊んでくれることを純粋に喜んでくれている、そんな表情だった。

 しかし、今度また家に遊びに行くときは間違いなく、咲さんの決心がついたときだろう。咲さんの性格的に画面越しで相談するとも思えないし、仮に不登校の理由を説明するのならば尚更だ。


「……だけど、本当にありがとね」


 不意に奏さんの声のトーンが少しだけ下がる。言葉だけ聞くと単純にお礼の言葉を述べただけであるのだが、それ以外の気持ちが込められていそうで……。

 舞も違和感に気付いたのか、心配そうな表情を奏さんへと向ける。


「どうしたの、また改めて? お礼ならさっきからたくさん聞いてるから、流石にこれ以上は――」

「いや、それでも言い足りないなって。……咲ちゃんが家族以外の誰かと話して、笑ってるのなんて久しぶりに見たから」


 彼女の言葉に、思わず胸をわしづかみにされたような、そんな感覚に襲われる。それは咲さんが不登校になって苦しんでいると同じくらい、妹の事で悩む姉の気持ちがよく伝わってきた。


「で、でも、あれは奏ちゃんが咲ちゃんの為に動いていたからであって、別に私たちが来たからってだけじゃないと思うわよ」

「確かにそうかもね。もちろん、私と話しても楽しそうに笑ってくれるんだけどさ……それで、何か解決したかって言われたら、何も解決しなかったんだ。それが、とっても悔しくて。咲ちゃんの本音は、気持ちはどうすれば引き出せるんだろうって。アタシ、咲ちゃんの事ちゃんと考えられてなかったのかな?」


 普段は底抜けに明るい奏さんが抱えていた、大きな悩み。姉として、妹に何もしてやれない悔しさ。そしてもどかしさ。

 悲し気に微笑む彼女からそのすべてが伝わってきて、俺の心まで苦しくなった。

 多分、奏さんはずっと悩んできたんだと思う。何とか普段通りに過ごすことはできても、結局のところ咲さんの不登校の原因を掴めずにいた。

 それが妹を想う姉として、許せないことだったのだろう。


 でも、だからこそ、これ以上に自分を責めてほしくない気持ちが俺の中に湧き上がってきた。奏さんは何もできていないわけじゃない。ちゃんと、咲さんの気持ちを考えて行動して、普段通りに咲さんと接して……そして、俺たちとゲームをするきっかけを作ってくれた。

 これほどまでに妹の事を考える姉が、どこに存在するのだろうか?


「何度も思ったよ。私、お姉ちゃん失格だなって。苦しんでる妹の本音の一つも、分かってあげられないんだから」

「そんなことない!」


 俺にしては珍しく、声のトーンが強くなった。


「こんなに咲さんの事を考えている姉の、どこが失格なんだよ。というか、奏さんがしっかり咲さんの事を支えてあげているから、咲さんだって必要以上に思い詰めなくて済んでるんだ。そんな優しい姉のどこが失格だって言うんだよ」

「りょ、亮ちん、そんなに怒らなくても……」

「ううん、今のは私だって怒るよ。だって、奏ちゃん。さっきからずっと、勝手に自分の事を何もできてないって責め続けてるんだもん」


 普段の舞としては珍しく、少し怒ったような視線を彼女に向ける。俺に対して怒ることはあっても、それはあくまでイレギュラーなことであって、普段の舞はそれこそ怒ることなんてほとんどないからな。

 その視線を受けた奏さんはバツが悪そうに視線を下に向ける。でも、俺は舞が奏さんに対して怒ってくれたことが少しだけ嬉しかった。

 嬉しかったというのは舞も俺と同じで、奏さんが自分を責め続けることに対して怒ってくれていたから。

 自分だけが悪いと思い込んでいることに対して、俺たちは起こっているのだということを奏さんに理解してほしかった。


「咲ちゃんの事を考えられていないって話してるけど、そんな事絶対にありえない。奏ちゃんはすっごく、咲ちゃんの事を考えてるよ」

「そ、それは、姉妹として当たり前の事だから……」

「確かに、兄妹の事を考えることは普通かもしれないけど、引き籠ってる兄妹に対しては正直、何していいか分からなくなるものなんだよ。私もお姉ちゃんがいるけど、仮にお姉ちゃんが引き籠っちゃったらどうしていいから分からなくなるだろうし。だけど、奏ちゃんはちゃんと咲ちゃんの事を考えてあげた。引き籠ったことをどうしようって片付けるんじゃなくて、普段通り接してあげて、心のよりどころを作ってあげて……奏ちゃんはお姉ちゃんとして出来ることをちゃんとやってる。……ううん、やり過ぎてるくらいなんだよ」

「で、でも、まいまいだって優しいから、お姉ちゃんが引き籠ったとしてもアタシ以上にちゃんと接すると思う。だから、アタシが特別なわけじゃない」


 頑なに自分の事を認めようとしない奏さん。


「まあ、確かに奏さんの言う通り特別なことじゃないかもしれないな」

「でしょ? だからアタシのやってることなんて――」

「だけど、舞の事はあくまで仮の話であって、実際にはどうなるか分からない。その点、奏さんは現に咲さんから目を逸らさずにちゃんと接してあげてるわけだろ? 俺と舞は、その点を自分でも評価してほしいって思ってるんだ。ダメなところばっかり見るんじゃなくて、ちゃんといいところも見てほしいなって。じゃなきゃ、疲れちゃうだろ?」


 俺の言葉に奏さんはハッとしたような表情を浮かべる。

 人間という生き物はいいところではなく、どうしても悪いところばかり見がちだ。それが自分の事であっても、相手の事であっても同様に。

 奏さんは自分の悪いところばかりが目に入り、無意識的によい部分が見えなくなっていたのだろう。

 先ほどの話を聞いていればそれが一目瞭然だ。奏さんの咲さんに対する想いが俺たちには痛いほど伝わってきていたのに、肝心の本人が全くと言っていいほど理解できていない。

 これでは咲さんが立ち直る前に、奏さんの心が壊れてしまう。だからこそ、自分の行ってきた事をもう一度客観的に見てほしくて俺と舞は奏さんに対して怒ったのだ。

 奏さんのやってきた事は決して間違いじゃなかったということを理解してほしくて

 ……と言うのは後付けの理由で、この時はただ俺も舞も『何で自分を責めるんだ!!』って怒りに任せた言葉をはいただけなんだけど。まあ結果オーライだったからよし。


「亮の言う通りよ。確かに納得できてない部分はあるかもしれないけど、奏ちゃんがやったことの全てがダメなわけじゃない。それは、この前一緒に遊んだ咲ちゃんの表情からも十分に伝わってきた。だって、最初は顔も合わせてもらえなかったんでしょ? それなのに、私たちと遊べるところまで回復したってことは、間違いなく奏ちゃんのサポートがあったから。その事実までなかったことにしたら、咲ちゃんも悲しむと思う」


 いつの間にか奏さんの両手をしっかり握りしめて想いを伝える舞。

 舞のいいところは自分の想いをきちんと伝えられるところだと思う。そんな真っ直ぐな視線を受けた奏さんの瞳が少しだけ潤んだのが分かった。

 しかし、それも一瞬の事で奏さんは舞に握り締められていた手をゆっくりと解き、今度は舞へ身体を預けるように手をまわす。


「……アタシのやってきたこと、間違いじゃなかったのかな?」

「間違いなんかじゃない。奏ちゃんのやってきた事は本当にすごいことなんだから」

「すごいこと……か。思ったこともなかったや」

「そんなすごいことを奏ちゃんは人知れずやってたのよ。だからもう、自分を責めちゃ駄目。約束して」

「うん、わかった。……多分」

「多分って、もう……」

「えへへ」


 抱き付く奏さんの頭を舞が優しく撫でる。しかし、頭を撫でられる奏さんの表情からは先ほどまでの憑き物が少しだけ落ちたような、そんな気がした。


「それにどこかで言ったかもしれないけど、兄弟姉妹だからって言いにくいことも少なからずあるはずだからな。仲が良い悪いに関係なく」

「……二人もあるの?」

「もちろんよ。私だってエロゲを嗜んでいること、流石にお姉ちゃんに黙ってるから」

「えぇ……」

「それは一生黙っていてくれ」

「ふ、二人とも引かないで!! ストーリー! ストーリー重視のエロゲだから!!」


 先ほどまで抱き付いていたとは思えないくらいの早さで舞から距離をとる奏さん。うーん、これまで積み上げてきた感動が台無しである。

 舞は舞で必死に言い訳をしていたが、ストーリー重視だからといっていいということではない。こればっかりは奏さんの反応が正しいです。


「というか、亮は男なんだから私の味方でいなさいよ!! 少し前におすすめのエロゲを紹介した仲じゃない!!」


 意味の分からない流れ弾が飛んできた。どうしてこの話を俺に振るんだよ……確かに、エロゲを勧められたことはあったけどさ。


「えっ? 亮ちんもそっち側?」

「ちょっとまって、俺からも距離をとらないで!」


 エロゲを紹介されたという言葉を聞いて、俺からも距離をとる奏さん。今にも部室から出ていきそうだ。

 流石にオタクの趣味は理解できても、エロゲは理解できなかったらしい(当たり前)。


「そもそも、味方って……世間一般的には奏さんの反応が正しいんだって。というか、確かにエロゲは紹介されたかもしれないけど、実際にはやってないし」

「じゃあ、今度貸してあげるから! エッチなシーンはもちろん、ストーリーは本当に感動するから!」


 エッチなシーンという言葉がなければ最高だったのに。……ほらみろ。ドン引きした奏さんが、俺たちから信じられないくらい距離をとっているじゃないか!


「というか、どうしてエロゲは駄目で前に貸したエッチな本はOKなのよ! 理不尽よ!!」

「ちょっ!? おま、それは!」

「むぐぐっ!?」


 再び余計なことを言った舞の口を慌てて塞ぐも、奏さんにはバッチリ聞かれてしまった模様。

 見たことがない、よそよそしい笑顔を浮かべる奏さん。


「……あはは。まあ、亮ちんも男の子だもんね。仕方ないよね……」

「ちょっと待って奏さん。誤解、誤解だから!!」

「ちなみに、咲ちゃんに手を出そうとしたら、〇すから」

「怖い! 笑顔が笑顔じゃない。そんなことしないから!」

「自業自得ね。全く、亮がエッチなのがいけないのよ?」

「元はと言えば舞が原因なんだろ。このエロゲ好き厄介オタクが!」

「ちょっと、その言い方は流石に酷すぎるわよ!」


 あまりに酷い会話に成り下がってしまったので、ここできらせてもらうが取り敢えず奏さんの悩みはかなり軽くなったとだけ言っておきます。

 あと、エロゲとかの誤解は一応解けました(本当です)。




 ――とまあ、こんな出来事があって今に至るというわけである。

 そして、奏さんと通話が繋がっている理由はあれから俺と舞で話し合い、やっぱり奏さんにも話を聞いてもらったほうがいいという結論に至ったからだ。

 理由はもちろん、奏さんの咲さんに対する思いの丈を聞いたからである。あの気持ちを聞いた後にこっそり咲さんと話し合うなんてこと、俺たちにはとてもできなかった。

 それに、あれほどまでに妹である咲さんの事を想っている姉が、自分抜きに話が進められていたと知ったら、余計に話がこじれかねる可能性もあったからである。


 ちなみに咲さんの話では今日、奏さんは友達と遊びに行く予定があり終日不在と聞いている。だからこそ、咲さんもこの日を選択したのだろう。

 姉が家にいる時に俺たちが訪問すると、どれだけ気を付けたとしても確実に顔を合わせることになるからな。

 そのため、奏さんには事前に今日の予定を話し、奏さんの予定をキャンセルしてもらっていた。まあ、俺たちが頼むまでもなく、彼女は予定をキャンセルしたと思うけど。


 しかし、奏さんが予定をキャンセルし自宅に残ってしまうと、逆に咲さんが今日の予定をキャンセルするだろう。姉に聞かれたくないからこそ、この日を狙ったわけだと思うし。


 だからこそ、この通話形式というスタイルで奏さんに参加してもらっているというわけである。

 これなら奏さんから大きな音を出さない限り通話しているということはバレない。咲さんにとっても、まさか姉に聞かれているとは思わないだろうから、本音を言わないということにはならない。まさに、うってつけの作戦だった。

 ちなみに、仮に相談を受けてからのその後は完全に奏さんに任せている。こればっかりは他人である俺たちがどうこう言える問題ではないからな。

 音声などの確認もこの前の出来事とは違い、ちゃんと事前に部室で済ませている。これで何にも聞こえませんでしただと、本末転倒だし。……一応、何度も練習したから大丈夫なはず。

 

 というわけで、今日は俺たちだけでなく奏さんにも間接的に咲さんの相談を聞く流れができたというわけだった。


「ところで、ちゃんと音声は聞こえてる?」

『うん、バッチリだよ! それに、イヤホンもしてるから普段より良く聞こえる!』

「それなら良かった。咲さんと話し始めたら多分、スマホもいじれなくなるだろうし」


 真剣な相談の最中にスマホをいじってたら、流石の咲さんも訝るだろう。そもそも、真剣な話をしている時にスマホをいじるなんて言語道断である。


『了解! まあ、聞こえなかったら聞こえなかったで二人から話を聞くことにするから』

「そうしてくれると助かる。……おっと、そろそろ小鳥遊家につくから」

『おけおけ。……二人とも、咲ちゃんのこと頼むね』

「任せとけ」「うん……」


 ここでも少し自信なさげな舞。そんな彼女の頭を今度は強めに撫でる。


「ちょっ!? 髪がぼさぼさになるじゃない!」

「……よし、少しは元気になったみたいだな」


 俺がニッと微笑むと、舞は少し顔を赤くしながら視線を逸らす。そして、結構強めに俺の脇腹にボディーブローを決めてきた。

 中々に重たい一発に、俺は思わず呻き声を上げる。


「うぐっ!?」

「……おかえし。でも、ありがと」


 お礼を言うならもっと違う方法があると思うんですけど。


『……様子は見えないけど、今すっごくイチャイチャしてたよね?』

「してない!」「してないわよ!」

『あーはいはい。ほら、もう家につくんじゃないの?』


 奏さんの言葉に俺と舞はハッと顔を上げる。見ると、小鳥遊家はもう目と鼻の先に迫っていた。


「よし、じゃあ頼むな舞」

「こちらこそ」


 そういいあった俺たちは小鳥遊家のインターホンを押したのだった。

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