第17話 とあるギャルの妹が引き籠っている件について
「……なるほどね~。だから、この部室でまいまいと亮ちんが一緒に活動していたと」
「そういうわけなんだ。ごめんな、なんか誤解を与えるような感じになっちゃって」
「いやいや、こちらこそ勝手に部室内に侵入しちゃったわけだし、お互いさまってことで。それにしても、これでようやく亮ちんとまいまいの関係性の謎が解けたよ~」
「この秘密は他の人には、黙っててもらえると助かるよ」
「もちろんだよ! アタシの口はダイヤモンドより堅いから、安心して!」
笑顔を浮かべる奏さんに俺はホッと胸をなでおろす。うん、誤解を与えずにうまく説明ができて良かった。
それでも、俺たちの関係を誤解ないように説明するのは、少しだけ骨が折れる作業だったけど。まぁ、奏さん自身ダイヤモンドより口が堅いと豪語しているので、この秘密が外に漏れることはないだろう。
「ちょっとちょっと! 私を完全に無視して、亮ってばなに全部話してるのよ!!」
そして、話を黙って聞いていた舞から鋭いツッコミが入る。いや、最後まで律儀にツッコみ待ちしてくれてありがとう。お手本のようなツッコミだったな。
まあ、舞の承諾なしに話してしまったのは、流石に反省すべきところではあるけど。
「だって、ここで変に隠してもしょうがないかなって。というか、こんな状況見られてどうやって言い訳するんだよ?」
普段、絡みのない二人が一緒の部室にいるって事だけで違和感だし、さらに言えば目の前には相変わらず流れ続ける、アニメ『レコレコ』の存在が更に状況をややこしくしている。
テレビで流れるアニメに、普段はあまり絡むことのない二人。うん、どうやったってきちんとした説明が必要だな。
舞がどこまで自分の事を奏さんに話しているかは知らないけど、一連の出来事から奏さんには話しても大丈夫だと俺が勝手に判断したのだ。いたずらに人の秘密をばら撒くような人でもないだろうし。
それに無駄に誤解を招くくらいなら、正直に全て話してしまったほうがお互いにとっていいと思うからな。
「ま、まぁ、確かにそうかもしれないけど……」
「というか、納得してなかったんなら、途中で止めればよかったのに」
「いや、あのタイミングでツッコんだら負けかなって」
「お笑い芸人じゃないんだから」
「……二人とも本当に本人? 教室での二人と今の二人、もはや別人ってレベルで違うんだけど」
部室での俺たちを見るのが初めてだった奏さんから、驚きともとれる声の指摘が入る。言われてみると、今の俺たちって教室での姿とかなり違うんだよな。
舞は普段、猫被っているようなもんだし、俺に至っては存在感すら皆無だし。……いや、最近は色んな意味で存在感が出始めたっけ(涙目)。
「そう? まあ、教室ではオタクだってこと隠してるしね。それに、優等生を演じてる部分もあるっちゃあるから」
「テストの点数があれな時点で、優等生っていうレッテルははがれてるかもしれないけどな」
「そこ、うるさい! 痛いところをついてくるんじゃないわよ!」
図星だったらしい。顔を少しだけ赤くする舞。いや、恥ずかしがるくらいだったら、俺に泣きつく前にちゃんと勉強してください。
そんな風に、普段通りの姿を見せていると奏さんがぽそっと一言。
「えっと、いきなりこんなことを聞くのはどうかと思うんだけど……二人は付き合ってるの?」
『つ、付き合ってない(わよ)!!』
とんでもないことを口にした奏さんに、今度は二人して顔を赤くする。いや、どこをどう見たらその結論に至るんだよ!?
「ほら、今だって息ぴったりだし、アタシ完全に蚊帳の外だし! それに、二人で話してるとき、滅茶苦茶楽しそうにしてたから。特に、まいまい」
「そ、そんなことないわよ! 亮と話してても、ぜんぜん普通だから!」
「ちょっと、それはそれで傷つくな」
つまらないって言われるよりは全然いいんだけど。いや、よくはないのか。普通って、異性で言う所の優しいとかと同じ意味だろうし。
「奏ちゃんも、余計な詮索を入れないで!」
「えぇ~? だって、せっかく面白そうな二人関係なんだよ? こんなのグイグイ行かないほうが損じゃん! それに、亮ちんは……ねっ?」
「……それはどういう意味でしょうか?」
「分かってるくせにぃ~。このこの~」
「ちょっ、頬をぐりぐりしないで……」
楽しそうに頬をぐりぐりしてくる奏さん。今の一連は、奏さんが俺の好きな人を舞だって知っているからこそだ。
完全に忘れてたけど、俺の好きな人が舞ってこと、奏さんにバレてるんだった。うーん、これは更にややこしいことに……。
俺が心の中で頭を抱えていると、急に右腕がグイッと引っ張られる。見ると、舞が少しだけ不満げな表情で俺を見つめていた。
「えっ? な、なに?」
「……はっ! え、えっと……あ、あまりにも亮がいやらしい目で奏ちゃんの事を見つめてたから! 奏ちゃんを守ってあげるための行動よ!!」
「えっ? りょ、亮ちんってばアタシにそんな色目を……」
「み、見てないから! 舞も変なこと言うなって」
「ふん、どうだか」
あらぬ疑いをかけられた俺は、舞に抗議の声を上げるも、その声は届いていない模様。奏さんも、両手で身体を守るようにしなくて大丈夫だから! 俺はそんなセクハラ親父のような真似、しないから!!
そんなこんなで話が逸れていたのだが、
「それでさ、二人がオタクだってわかったうえで折り入ってのお願いなんだけど……」
伏し目がちに奏さんが口を開く。これまでとは違った雰囲気に、俺と舞も思わず少しだけ身構える。
オタクだってわかった上でのお願いということは、もしかして奏さん自身もオタクだってことなのか?
……いや、それはないか。仮にオタクだとしたら、その持ち前のフットワークの軽さですぐに声をかけてきそうだし。そもそも、俺がオタクだってことを知ってるわけだしな。
「二人って、えふぴーえすってゲーム、知ってたりする? もし知ってて、仮にやったことあるなら、ちょっと助けてほしいなって」
彼女の口から出てきたのは『FPS』という言葉。意外な言葉に、俺と舞は思わず顔を見合わせる。
FPSとは大雑把に言うと、シューティングゲームの種類の一つをさすような言葉である(俺はあんまり詳しくないんだけど)。
操作するキャラクター本人の視点でゲーム内の空間を移動しつつ、武器等を使って相手を倒していく。「一人称視点シューティングゲーム」なんかとも訳されるらしい。
いつ頃から流行り出したのかはよく覚えていないが、最近急速にゲーム人口を増やしていき、世界的な人気を博している。
近年のゲームジャンルの覇権を握っているといっても過言ではない。頻繁に大会も開かれているくらいだしな。それに、有名実況者もこぞって配信していることからも、その人気を後押ししていると言ってもいいだろう。
オタクだけではなく、ゲームなどに詳しくない人でもFPSの実況を見るって人は一定数存在するはずだ。
とまぁ、簡単にFPSというゲームジャンルを説明してきたのだが、問題は何故彼女がFPSというゲームについて質問してきたかである。
「二人に頼んだのは、偶然とはいえオタクだってことが分かったから。何となく、アタシのイメージでしかないけど、オタクの人ってゲームが得意っていうイメージがあるじゃん? だから、二人も得意かな~って」
「なるほどなるほど。確かに奏ちゃんの気持ちもわかるわよ。実況とかを見る専門の人もいるけど、やっぱり実際に見てるとやりたくなるのよね~」
「オタクは生じて凝り性だからな」
「分かるわ。そこまで突き詰める必要のないところまで、突き詰めちゃうのよね」
苦笑いを浮かべる舞。興味のないことには一切、興味を示さないくせに、興味を持ったらどこまでも追及する。ある意味、オタクとしての悲しい性であり、一種の特殊能力だな。
一つ物事を突き詰めて最強になる。言葉だけ聞けばいい感じに聞こえるな。なろうアニメの主人公っぽい。
「だけど、それなら俺は奏さんの期待に応えられないな。非常に申し訳ないんだけど、俺ってほとんどFPSってやったことないんだよ。ゲーム自体、嫌いじゃないんだけど、やるとしたらRPGとかがメインだし」
実を言うと、俺は普段あまりゲームをやるタイプではない。昔から買い続けているシリーズ(ドラ〇エとか)であれば話は別だが、それ以外だとあんまりな~。スマ〇ラとか、ス〇ラもあんまり長続きはしなかったし。
ソシャゲも結局、ログインしかしていないものも多いし、ゲームをやる時間があればラノベを読んだり漫画を読んだりしている。
「私はめちゃくちゃやってるわよ! それこそ、古くはPU〇Gやフォートナイトから始まり、最近はエイ〇ックスとかヴァ〇ラントとか! まぁ、有名実況者の人ほど才能はないんだけどね。それこそ、エ〇ペックスダイヤモンド帯くらいまでしか行ったことないし」
一方の舞は、結構やり込んでいるみたいだった。正直、ランク帯の事はよく分からないけど、ダイヤモンド? というランク帯はそれなりに上級者でないといけないということくらいは何となくわかる。
本人は謙遜してるけど、恐らく舞はかなりの手練れだ。能ある鷹は爪を隠すとはよく言うし……だけど一体、彼女のどこにそんな時間があるのだろう? というか、ゲームのやり過ぎてテストの成績が悪いんじゃ?
俺の心配をよそに、奏さんは安心したとばかりに舞へ抱き付く。
「よかった~。心配だったけど、まいまいがいれば百人力だよ!」
「ふふっ、任せときなさい。奏ちゃんも、ついでに亮もしっかりフォローできるくらいの実力はあるから」
「俺はついでなのかよ。……ところで気になったんだけど、なんでFPS?」
俺は疑問に思ったことを素直に奏さんにぶつける。ちゃっかり、俺もやる前提なのにはツッコまない方針で。
FPSを一緒にやりたいだけなら、頭を下げてまで頼んでくることなんてないと思うんだけど。特に、舞と奏さんは友達なわけだから、もっと気軽な感じでいいはずだ。
そもそも、奏さん自身があまりゲームをやるタイプに見えないのでそこが不思議なんだよな。いや、舞のように隠しているだけかもしれないけど。
その疑問は、奏さんの言葉ですぐに判明することになる。
「……実はね、アタシとやってほしいってよりは、アタシの妹とやってほしいの」
『妹?』
俺と舞の声が被る。彼女に妹がいること自体、初耳だし、そもそもなぜ妹とゲームをしてほしいんだ?
二人揃って首を傾げていると、奏さんが苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。これはなにやら、あまりよくない事情がありそうだ。
「……アタシの妹、今はずっと部屋に引き籠ってるんだ」
『えっ!?』
またしても俺たちの声が被る。事情があるとは思ったけど、想像以上に重たい事情だった。
「……その、奏ちゃんの妹の事と、FPSのこと。それって何が関係あるの?」
「
少し長くなったので、奏さんの妹、
年齢は俺たちの一つ下。つまり普通なら、高校1年生である年齢だ。しかし、とある事情(流石に詳細は聞けなかった)で中学2年生の途中から不登校になってしまったらしい。中学自体は少人数学級に通うことで何とか卒業。
高校受験も行ったそうなのだが、入学式の日に登校できず、部屋に引き籠ってしまうようになったとのこと。
ちなみに、受験した高校はまさかの俺たちと同じ高校。姉がいるということで、受験したらしい。
ここまで聞くと、姉妹仲も心配になってしまう。しかし姉妹仲は悪くなく、むしろいい方の部類に入るんじゃないかとは、奏さんの談。
普段もたまに部屋に入って話すこともあるらしく、姉といるときだけは咲さんも安心して話してくれる。ただ、咲さんが好きなゲームだけが唯一共有できず、奏さんは密かに悩んでいたらしい。
もちろん、奏さんも何とかしてゲームの腕を上達させようとしたのだが、元々ゲームをやるタイプではなかったため、彼女のレベルにまで至ることができなかったとのこと。
ちなみに、咲さんはかなりの上級者らしく、一度戦闘シーンを見せてもらった奏さんは、画面上で何が行われているか全く理解できなかったと言っていた。
うーん、確かにFPSのうまい人って気付くと相手を倒していることも多いしな。俺もいわゆるトップランカーの動画を見たことがあるのだが、それこそ何をしているのかよく分からなかった。
終いには、その動きを見ているうちに、若干画面酔いを起こしてしまうほど。あんなにガンガン視点が動いてよく、相手の動きや弾道を予測できるものだ。
それに、引き籠っているのであれば、無限にゲームができるわけで、妹さんの腕はかなりのモノなのだろう。……これは少しだけ、引き籠りに対する偏見が入っているかもしれないが。
そんな折に、俺がオタクであることがクラスで知れ渡ることとなり、またあの教室の一件で俺と奏さんの間につながりができた。これをチャンスと見た奏さんは、何度かその機会を伺い、相談しようと思っていたらしい。
部室に入ってきたのも、ちょうど誰もいなさそうな部屋に俺たちが入って行くのが見えたので、これはチャンスとばかりに飛び込んできた。なぜ、舞と一緒に部室に入っていたのかは深く考えなかったとのこと。まぁ、友達だしついでにって思ったんだろうな。
そして、まさかその流れで俺と舞の秘密にしていた関係を知ることになり、まさかその親友がFPS上級者だと知ることになる。
これが俗にいう怪我の功名ってやつだな(絶対に違う)。怪我したのは主に俺たちだし。災い転じて福となすという言葉の方がピッタリかもな
「……なるほどね~。つまり、いつも一人でゲームをやってる妹と一緒にゲームをしてほしいと。そして、あわよくば部屋から出てくるきっかけになってくれれば、それが一番望ましいと」
「うん、大体はまいまいの言う通り。引き籠り始めた時もそうだけど、咲ちゃんは極度に人との関わりを恐れてる感じがして、それこそ最初の頃はアタシと話すことすら拒んでたくらいだから」
「マジか……」
実の姉を避けるなんて、何があったか分からないが、咲さんは相当心に傷を負っているのだと、その話を聞いているだけで分かる。
「昔はもっと積極的で、人付き合いも得意だったんだけどね。それだから、余計に学校で何があったんだろうって」
「奏ちゃんには教えてくれないの?」
「うん。アタシだけじゃなくママにも教えてくれないしね。もしかすると、アタシたちは身内だから逆に話しづらいのかもしれない。だけど、まいまい達になら話してくれるかもしれない。……まっ、これはアタシの希望的観測にすぎないんだけどね」
悲し気な顔で、それでも笑顔を浮かべる奏さん。確かに、身内の方が言いづらいことってあるしな。逆に身内でないからこそ、言いやすいことがあるのも、また事実である。
だからこその俺たちなのだろう。辛いことを誰にも話さず、隠し続ける方のはかなり辛い。それならば、誰かに話すことで少しでも楽になってほしいというのが、奏さんの願いなのだろう。
しかし、咲さん気持ちは咲さんにしか分からないし、そもそも本当に話したくないのかもしれない。こればっかりは奏さんの言う通り希望的観測にすぎないし、本人しか知り得ないことだ。
「兎にも角にも、まずは咲ちゃんと仲良くなるところから始めないといけないわね。そうじゃなきゃ、本音も聞けないだろうし」
「舞の言う通りだな。まぁ、だけどまずは普通にゲームを楽しむところから始めよう。無理につき合わせてる感が出るのが一番よくないだろうし」
まっ、奏さんに協力すると今は余計な推測はしないほうがいいだろう。それに元が奏さんのように明るい性格であるならば、意外と早く心を許してくれるかもしれないからな。
一緒に遊ぶ時は、あくまで自然体を装うのが大事である。もしかすると、奏さんが気を遣って……ということは伝わってしまうかもしれないが、俺たちが本当に楽しんでいるということが伝わればその気持ちも徐々に和らいでいくことだろう。
「ごめんね、二人とも。ウチの事情に巻き込んじゃって」
「いいっていいって。私は全然気にしてないし、何より大好きな奏ちゃんの頼み事だから」
「ま、まいまい……大好きっ!」
「ちょっ!? も、もう……」
舞の言葉に感極まったらしい奏さんが、再び舞にギュッと抱き付く。いきなり抱き付かれた舞は恥ずかしそうに身をよじるも、まんざらでもなさそうだ。
うーん、可愛い二人が抱き合うその姿。実に感服だ。目の保養にもちょうどいい。
「あと、亮ちんもごめんね? 本当はえふぴーえすってゲーム、やったことないのに」
「気にしなくて大丈夫だよ。それに、奏さんにはあの時の一件でお世話になってるし」
あの時の一件とはもちろん、舞の事を庇うために教室に突入したときのこと。改めてお礼をしなければと思っていたところだったので、早速恩を返す機会に恵まれてちょうどよかった。
舞も舞で、あの時の一部始終を見ていたからこそ、快くOKしたのだろう。
しかし、俺には一つだけ懸念していることがあった。
「だけど、大丈夫なのか? 俺たちって、初対面だし、それこそ拒絶されて終わりなんじゃ?」
それが一番心配だった。特に、人間不信で不登校になったとのことだから余計に。
「うーん、その辺は正直やってみてって感じかな。それこそ、最初は私とやるって感じにして、それからちょっと紹介したい人がいるって形にもってけば大丈夫な気がする! それに、初対面だからって今更関係ないでしょ?」
確かに彼女の提案は有効かもしれないが、一種のだまし討ちに近い感じだな。今の表現は、ちょっと大げさかもしれないけど。
「……だけど、やっぱりちょっと心配よね。女である私は多少、ましかもしれないけど、亮は男なわけだし」
「確かに……」
舞の言う通り、男とゲームって結構ハードルが高い気がする。一応、姉の紹介する男子ってことで少しだけハードルは下がると思うが、それでも普通は警戒するはずだ。
「大丈夫、大丈夫! その辺は適当に誤魔化そうと思ってるから。それこそ、亮ちんは男の子が好きって設定にすれば万事おっけー!」
「あっ、その作戦はいいかも! 男の子が好きって設定だったら、咲ちゃんも恐怖が和らぐかもしれないしね」
「よしっ! まいまいの許可も得たことだから、この作戦で行こー!」
「えっ? 俺の意見は?」
「奏ちゃんの大事な妹ちゃんの事がかかってるのよ? 文句言わない!」
どうやら俺の意見は聞いてもらえないらしい。まぁ、二人は嘘って分かってるからいいけどさ。
仮に咲さんが心を開いてくれた場合は、後から説明し直せばいいし。
……うまく説明できるだろうか? 二人にはきちんとフォローに入ってもらうことにしよう。
作戦も無事? 決まったところで、次は一緒にゲームを行うタイミングだ。
「それで、咲ちゃんとのゲームはいつにする?」
「やるなら早い方がいいと思ってるから、ぶっちゃけ今日、二人の予定が合えばやりたいんだよね」
「今日は金曜日で、どうせ明日は休みだからいいかもね。私は大丈夫だけど、亮は?」
「俺も今日はバイト休みだから大丈夫だよ」
舞の言葉に頷く。たまたま、バイトが休みでよかった。
「じゃあ、決まりね! 奏ちゃん、時間はどうする?」
「そうだな~……とりま、9時からでも大丈夫?」
「うん、それなら大丈夫よ」
「俺も、問題なし」
サクサクと日付と時間が決まったところで、今日の部活はいったん、お開きということになった。
まぁ、今日やることといってもどうせさっきのアニメを見て終わりだっただろうしな。
「あっ、ところで二人ってヘッドセットは持ってる?」
「えっ? 普通にイヤホンじゃ駄目なの?」
「それじゃあ、肝心の会話ができないでしょ。それに、連携をとる時だって困るじゃない!」
「な、なるほど……俺はてっきり、チャット打てば解決だとばかり」
「何時の時代のモン〇ンよ! そんなんじゃ、銃弾が降り注ぐ戦場でやっていけないわよ」
どうやら俺の知識はかなり古いものだったらしい。普段から、FPSの実況なんかも見ないから、知識がアップデートされないんだよな。
「そ、そんな厳しい世界なんだ……でも、言われてみれば確かに、咲ちゃんもヘッドセット付けながらプレイしてたかも。それに、モニターもお年玉を使ってネットで注文してたような……」
「一瞬のラグも命取りの世界だからね。いいモニターを買うに越したことはないのよ。かく言う私も、モニターにはかなり気を遣ってるしね」
うーん、モニターにまで気を遣うとは……。一言にシューティングゲームといっても、意外と奥が深い世界なんだな。というか舞は、謙遜してたわりにはやっぱりガチじゃん。
「アタシも亮ちんと同じでヘッドセット持ってないよー」
「それなら、今から買いに行きましょうか? 確か、駅の近くに家電量販店があったはずだし。そこなら確実に売ってるはずよ」
「モニターはともかく、今の話を聞いてるとヘッドセットは確実に欲しいからな。ちなみにお値段は?」
「ピンからキリまであるから何とも言えないけど、2000~3000円くらいでも買えると思うわよ」
「それなら、俺は何とか大丈夫そう。奏さんは?」
「アタシもバッチリだよ! 丁度、お財布の中身が無くなるくらい」
笑顔でグッと親指を立てる奏さん。それは果たしてバッチリと言えるのだろうか? まぁ、足りなかったらいくらか俺と舞で補えばいいか。
そのまま俺たちは家電量販店でヘッドセットを揃え、咲さんとのFPSに備えるのだった。
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