03-06

「お姉ちゃん。

 あのね、

 今日は学校で、運動会がありました。


 疲れたあ。

 身体もだけど、どちらかといえば精神的にくったくたに疲れた。


 わたしは四百メートルと、障害物をやったんだけどね、もうすぐ四百メートルの集合っていう時に、正二さん、フラワーたち四人が、謙斗くんと一緒に応援に来てね。

 ええとね、なんで正二さんのことフラワーといい直したかといいますとね、

 なんと学校だというのに、あのバンド練習しているときの格好できちゃったんだよおお。

 悪魔陛下みたいな、真っ白い顔で。

 それやめて絶対やめて、ってキツくいっておいたのにさあ。


 めちゃくちゃ恥ずかしくて、そのせいで集中が出来ずにスタートも出遅れちゃったんだけど、でもね、諦めずになんとか頑張って巻き返して、四百メートル、一等になったよ。


 ゴールのとこでマッキーがね、持ってきたギターをジャンジャガジャンジャガやってんの。

 ぶんぶん頭を振りながら。

 知り合いと思われる、って最初は本当にすっごく恥ずかしかったんだけど、開き直ったのかだんだんおかしくなってきてね、わたし、ゴールの時なんかイエエーイなんて大声で叫んじゃったよ。


 で、そのご老人たちなんですがあ、

 まあ当然というべきでしょうが、先生たちにつかまって、家族を呼ばれて、こっぴどく怒られてた。

 あの悪魔陛下な格好を、わたしや謙斗くん、老人会の人、以外に見られたのは、なんか初めてみたい。

 家族の人たち、みんなびっくりしていたよ。


 でもそのうちにね、そのかっこでいつも商店街を歩けばあ? とかそんな話になって盛り上がって、叱って欲しかった先生が困っていたよ。


 とにかくそんなわけで、今日はとーっても疲れたけど、

 でも、

 とーっても楽しかったあ。


 生きている。

 ただそれだけで、楽しいこといっぱいあるんだよね。

 だから、生きているって、ただそれだけでほんと素敵なことだよね。

 なんて、ちょっといいこといって強引にまとめてみましたあ。強引すぎるかな。


 さ、そろそろ寝よう。

 わたしは寝ます。

 では、おやすみなさい」

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