美少女という名のモンスターたち:みちこ
Take_Mikuru
美少女という名のモンスターたち:みちこ
◯高田家・中・夜
玄関ドアが開き、高田純也(34)が鞄を手に、スーツ姿で入ってくる。高田は鍵を閉める。
高田「ただいま~、お~、今日もいい匂いがするね~」
高田がそう言いながら振り向くと、物凄いスピードで斧が目の前を通り過ぎ、ドアに突き刺さる。高田は激しく動揺した様子で斧を見てから、恐る恐るリビングの方を見る。リビングの向こうからゾンビのような鳴き声が聞こえてくる。高田は一点を見つめて深呼吸をする。高田の目線の先には、ゾンビのような顔をした高田美智子(34)がエプロン姿で、片手にナイフを持ちながら獲物を見るように高田を見ている。2人の間に沈黙が流れる。すると、美智子が大きな叫び声を上げながら、ナイフを振り上げる。高田は思いっきり叫びながら土足のまますぐそこにある階段を全速力で駆け上がる。美智子は思いっきりナイフを投げ、階段の脇にナイフが突き刺さる。高田に命中しなかったことに気づき、美智子はまたもや大きな叫び声を上げ、ゾンビのように全速力で階段を駆け上がっていく。
◯高田家、寝室・中・夜
高田は全速力で寝室に駆け込み、勢いよくドアを閉める。高田はドアに寄り掛かり、激しく呼吸している。するとすぐにドアが外からドンドン叩かれる音がする。美智子が開けろと言わんばかりに激しく叫んでいる。高田は必死にドアとドアノブを抑えている。徐々に高田の力が弱まり、ドアが少し開く。高田は必死に抵抗するものの、美智子が思いっきり叫びながらドアを押し開けていく。高田は途中で諦め、部屋の中央にあるベッドに駆け上がって鞄を構えながら美智子の方を見る。美智子は勢いよくドアを押し開け、唸りながら高田を見る。高田はビビリまくっている様子で鞄で殴る動作を何回かする。美智子は少しベッドの方に近づく。高田はブルブル震えながら口を開く。
高田「ど、どうしたんだよ美智子」
美智子は大きな声で叫び、ベッドの上に飛び乗る。高田はビビッて叫び声を上げながら少し後ずさる。
高田「頼む、殺さないでくれ。もうなんでもするから、な?頼むよ美智子!」
美智子は首を傾げ、素早く高田のワイシャツの襟を掴み、思いっきり左側の壁に投げつける。高田は絶叫しながら思いっきり壁に体を打ち付け、床に倒れる。壁にはヒビが入っている。高田はあまりの痛みに唸っている。鞄はもう離しており、高田の横に転がっている。
高田「、、、みちこ、、、」
美智子はベットから飛び降り、高田に近づく。美智子は倒れ込んでいる高田を見下ろしている。高田はしばしじっとした後、いきなり叫びながら美智子の足首を掴んで力いっぱいに引っ張るが、美智子はビクともしない。高田は恐る恐る美智子を見上げる。
高田「あ、ご、ごめん、違うんだ」
美智子は少し笑い、高田の手を掴んで、思いっきり後方の壁に投げつける。高田はまたもや絶叫しながら壁に全身を打ち付け、床に倒れる。壁にはヒビが入っている。高田はこの上なく苦しそうに唸っている。美智子は高田に近づき、思いっきり高田を引っ張り上げ、壁に背中をつけて自分を向くように立たせる。高田は今にも意識を失いそうな顔をしている。美智子はじーっと高田を見ている。
高田「、、、もう少し優しく、接してくれよ、、、」
美智子は高田を思いっきりビンタする。
高田「、、、痛いよ美智子、、、なんで」
美智子は高田のお腹を思いっきり膝蹴りする。高田は大量の血を吐き出す。血が少し美智子にかかる。
高田「、、、な、なにがしたいんだ、、、」
少しの沈黙の後、美智子が高田に顔を近づけて言う。
美智子「たたかえ」
高田は怪訝そうな顔で美智子を見る。
美智子「たたかえ」
美智子はゾンビのような顔で高田を唸りながら威嚇する。美智子はそのまま高田を頭突きし、頭を床に叩きつける。高田はぜーぜー息をしながら床に倒れ込んでいる。美智子は高田に近づき、横腹を何回も蹴り上げながら言う。
美智子「たたかえ、たたかえ、たたかえ!」
高田は大量に血を吐き出している。美智子は蹴るのをやめ、高田の髪を掴んで持ち上げ、後方の壁に後頭部を打ち付ける。美智子は高田が自分を向いて立つように高田を壁に寄り掛からせながら立たせる。高田は血だれけの状態で、辛うじて目を開けている。高田は深く呼吸している。美智子は威嚇するようにぐっと高田に顔を近づける。
美智子「なぜたたかわない」
高田「、、、、しぬ、もう、しぬ、、、、」
美智子は高田の顔を離し、ゆっくり後ずさりしていく。ドアの前に来た辺りで美智子は立ち止まる。美智子の顔は人間のものに戻っている。高田は死んだような顔で美智子を見ている。
高田「、、、、みちこ、、、、、」
美智子「・・・離婚しましょ」
高田「、、、、、、」
美智子「聞こえたでしょ?離婚よ離婚」
高田「、、、、え、そんな急に、、、」
美智子「あなたが悪いのよ。だってここまでしたのに、それでも私と向き合おうとしないじゃない」
高田「、、、むき、あう?、、、」
美智子「そうよ。この9年間、あなたは一度も本音で私と話したことないじゃない。いっつも私が言って欲しそうなことだけ言って、内心、私のことを召し使いだとでも思ってたんでしょ?今日もご飯美味しそうだねぇ~、美智子、今日は一段と綺麗だねぇ~、その服、めちゃくちゃ似合ってるねぇ~、あれ?髪切った?髪型いいね!。全部、私に家事をさせたり、セックスさせたり、あとはあれだ、お前の大好きな膝枕耳かき。ピッッタリした白いTシャツにデニムホットパンツ姿の私に膝枕されながらの耳かき。この9年間のあなたの全ての言動と行動は、これをされたかったがために出たものでしかないんでしょ!!?もうウンザリなのよ!!!私はあなたと本当に愛し合いたかった!だから本音で向き合いたかった!!!だから今日ゾンビになってやった!!!半殺しにしてやった!!!ここまでやれば私に本気になってくれると思った!!!でもならなかった!!!ただずーっと泣き叫んでぜーぜー唸ってるだけ!!もうほんっっとに嫌だ!!!ほんっっとに期待した自分がバカみたい!!!もう私の9年間返してよ!!!」
高田は意識を失っている。少し体のバランスが崩れ、一気に床に倒れてしまう。美智子はそんな高田を心底軽蔑した目で見ている。
美智子「へぇ~、死ぬんだ。そうやって自分に都合が悪くなるとすぐいなくなるもんね。この9年間もずっとそうだった。すぐどっか出かけるんだよ。結局最後まで旦那に向き合ってもらえなかったなんて、あたしも可哀想な女ね」
美智子は自分を嘲るように笑い、ドアの方を向く。美智子は部屋を出てから立ち止まり、部屋の中を振り返る。美智子は目に涙を浮かべている。
美智子「・・・耳かきされたかったのは、私だったんだけどなぁ~、、、何で気づいてくれなかったんだろ」
美智子はドアノブを掴み、名残惜しそうに高田を見ながらドアを閉める。
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