終わりのはじまり 〜3年前の要目〜

 声だけが聞こえる。


「死んだ? だったらいいけど」

「分からないな。でも死んだも同然だろう。永遠の停止は、実質死だ」

「それにしても残酷です。解体して縫い合わせるなんて」


 そこから、どれくらいの時間が立ったのか分からない。

 次に気づいた時、室内には誰もいなかった。

 

 最期まで緋目と要目を守ろうと必死だった奏夜。

 最期まで要目を案じていた緋目。

 二人はいない。殺された。

 奴らが殺した。

 この時、要目は父と母の仇を討つことを決意した。


(体、うごけ! 動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け! 動け―――!)


 脳から体に電撃が走り、要目はやっと起き上がれた。よろける足取りで奴らを追う。


(忘れるものか、忘れるものか!)


 奴らの顔はしっかり脳に刻み込んでいる。間違えることはない。

 屋敷の外に出た時、突然ガクンとその場に座り込む。


(?)


 要目は走っているはずだった。だが、走っていたのはだけだった。要目の体はその場に残されている。


『解体して縫い合わせるなんて』


 その言葉を思いだし、服を捲る。腹を走る真っ黒な縫い目に気づいた。胸や腕、足にも縫い目はある。

 どこに縫い目があるのか探していた時、要目の両目から液体が流れた。

 忘れられない母の血。要目が飲み干したグラスの中身。

 要目は自分の体が以前と違うものになったと知った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る