7 終戦
「要目……」
要目は上半身を起こす。服があちこち裂けており、汚れている。
トキワが右手で大鉈を肩に担ぎ、要目の方へ歩いてくる。
要目は膝をついて言う。
「正直、何気なく私達に接触してきた時は反吐が出そうでしたよ。無防備な背中に弾丸を打ち込みたいと何度も思いました。ですが、昼間に戦闘を起こせば関係ない人を巻き込む。だから」
要目は立ち上がる。
「今、ここで貴方を殺す」
要目はトキワに突進する。トキワも右足を後ろに、飛び出した。
二人の距離が縮む。トキワが手首を回転させ要目の首を刎ねようと狙った時、要目はスッとしゃがんで前転した。
大鉈が大きく空振りをするが、トキワはもう一度、要目の首を刎ねようと大鉈を振りかぶる。
その時、トキワの真下で屈んでいた要目が右手で何かを投擲した。トキワの喉に鋭いものが刺さる。
(あれは……)
トキワが薙ぎ切った要目の短刀の破片だ。おそらく斎がベランカと話している時にどこかで破片を拾い、隠し持っていたのだろう。それから要目はトキワとできるだけ距離を詰め、隙だらけの首元に短刀の破片を下から投げ上げた。
トキワの手から大鉈が落ち、後ろに倒れる。
「……勝負あったわね」
ベランカが噴水から足を抜き、背を向けて歩き出す。
斎はベランカに手を伸ばし触ることを考えたが止めた。ベランカのことだ。多分予測して対策している、無駄だ。
ベランカは背を向けたまま言う。
「もう出られるわよ。アナタを足止めする理由がないから」
斎はベランカの言葉が本当か確かめるために恐る恐る右手を伸ばす。
右手は空を切り、ベランカの言葉が本当だと知った。
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