5 開戦
外の屋台で饅頭を買い、再び初めてトキワと出会った噴水の縁に三人、左から順番にトキワ、要目、斎と並んで腰を掛ける。閉園間近だからか、誰も見かけない。
トキワは皮をはいだ饅頭を一口で放り込み、飲み込んでから尋ねる。
「楽しかったかな?」
「ええ。とても」
「いい思い出になったかな?」
「ええ……さしずめ」
要目は指についた饅頭のあんこを舌で拭い、その指を見つめた。
「さしずめ、これは最期の食事でしょうか」
閃光。マントから取り出した要目の拳銃が真っ二つに斬られている。要目は素早く噴水から離れ、再び拳銃を取り出すが、縦向きに旋回した大ぶりの刃物によってまた拳銃が切断された。
大ぶりな刃物――大鉈は縦向きに旋回しながらトキワの左手に戻ってくる。
(一体、何が?)
全てが一瞬だった。理解が追いつかない。
「購買で鉈の位置を確認して、取り出す軌道を読み、それを取り出す時間より早く拳銃を出せば勝てると思っていましたが……無理でしたね」
この言葉で、斎はあの時、購買店での要目とトキワのやり取りを思い出す。
あれはただ二人で買い物を楽しんでいたのではない。あれは要目は髪飾りをとろうとするトキワのマントの隙間から大鉈がどこにあるのか確認していたのだ。
遊戯場の件で思い知ったはずだ。要目の行動には無駄がない。全ての行動には必ず理由があり、意図があり、そして復讐相手より優位に立てるよう計画されている。
つまり、トキワは、
(要目の、復讐相手)
それだとすればかなり大胆に近づいてきたな、と思った。
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