4 夕暮れ
広大な花園は回るだけでも労力を費やし、見るべき箇所が多いせいで途中から何を見ていたのか分からなくなった。
今は花園から離れ、温室の購買店に入っていた。斎はトキワと要目を後ろから追う形で歩く。
要目とトキワが談笑していた。二人は花を模った髪飾りを手に、頭に置いて遊んでいる。
「トキワさんのその色ならこの色が似合うのではないでしょうか?」
要目は白と水色のグラデーションの薔薇の髪飾りをトキワの頭に飾った。
「ええ?そうかなあ?」
「よく似合っています」
トキワは頭の髪飾りを手で触ってとる。
次に要目は赤いカーネーションの髪飾りを手に斎の元にやってくる。
「斎にはこれが似合いますよ」
要目は斎の頭に髪飾りをつける。似合っているといわれても鏡がないのでどうなっているか分からない。だが、要目が満足しているのならそれでいい。
要目はふいに斎の肩をポンと叩く。見ると要目がまっすぐに斎を見ていた。
「? 要目?」
「斎? まだぼけっとしているのですか?」
「あ、いや……」
「空が」
「?」
「橙色に染まってきましたね」
斎は目を大きく開ける。確かに温室に差し込む光の色が変わっていた。それは花園に入ってからかなりの時間がたっていることを示していた。
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