3 復讐の始まり
斎が知る限り、この世界は〈人外〉と〈異能力者〉で構成されている。
〈人外〉とは文字通り、人から外れた者のことを指す。例えば、植物の化身である斎が〈人外〉にあたる。〈人外〉のほとんどは人の姿をとり、完全に人間の中に溶け込んで生活している。どれだけ存在しているのかは分からない。
一方、〈異能力者〉は異能力をもつ人間である。人間であることが〈人外〉と決定的に違う点である。むしろ異能力を持っていない方が珍しいくらい、皆何かしらの異能力を持っている。
少女は慣れた様子で暗闇を駆け抜ける。斎はその少女の後をただついていく。
少女は入り組んだ建物の隙間を潜り抜け、人目のつかない場所へと移動した。
自由になった斎には、これ以上少女の世話になる必要はないが、全く知らない場所で単身逃げ切る自信はなかった。
とりあえず少女についていけば逃げ切れる、そう判断しての行動だった。
少女は立ち並ぶ建物のうち一軒を選ぶと滑り込むようにして室内に入る。斎もそれに続いた。斎が入ると少女は素早くドアを閉める。
斎は振り返る。
月のない夜空を背に、少女は斎に言い放った。
「わたしは
斎は黙って天井を見上げた。暗闇で何も見えない。
いきなり復讐云々と言われても驚きはない。興味がないし、どうでもいい。
「復讐には貴方が必要なの。だから危険を犯してまで貴方を助けた。どうか、わたしの復讐に協力してくれませんか?」
どうやら少女――要目は、斎に復讐に加担してほしいという。
だが、斎にその復讐を協力する義務はない。必要性も感じていない。
しかし、このまま要目と別れれば、斎は単身で逃げ切らないといけない。ここは本当に知らない場所だ。どこに行けばいいのか分からないし、変に行動すればまた捕まるかもしれない。
囚われるのは御免だ。それなら要目の言う復讐に協力する方がまだマシだろう。
(仕方ない)
斎はさっきまで管が刺さっていた首をさすり、すぐに手を降ろす。
全ては、生き残るための判断だ。それに一時的なものでもある。逃げ切れるようになれば要目を見捨てればいい。それまでの辛抱だ。
「分かった……」
さあ、復讐譚のはじまり、はじまり。
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