第157話 新しい関係②
食事が終わると、美紗兎と一緒にパソコンの前に座った。付き合って早々に撮ってみた交際報告の動画。撮った時には美紗兎も恋人同士になってテンションが上がっていたからウキウキして撮ってくれていたけれど、今は少し緊張気味だった。
「ねえ……、茉那ちゃん。これ本当にみんなに見られるの?」
うん、と小さく頷いた。
「いろんな意見があるかもしれないけど、わたしはみーちゃんと付き合うことになった報告はしておきたい」
茉那が真剣な表情で言うと、美紗兎も「わかった」と頷いてくれた。美紗兎と付き合うことになったばかりの、幸せたっぷりの動画を上げた。
報告動画として彼女を作った動画をアップすることはきっと色々な意見はあると思う。それでも、美紗兎と付き合うことになったことは知ってもらいたかった。慣れた調子で映っている茉那の横で、とても緊張している美紗兎がいた。ボタン一つで動画はアップされる。
「よし、これでオッケー」
「なんだか緊張しちゃう」
美紗兎が寄りかかって、頭を茉那の肩に乗せてくる。頬に当たる髪の毛がくすぐったかった。そっと髪の毛を撫でると、美紗兎が嬉しそうに笑う。
「ねえ、みーちゃん、ちょっとバルコニー行かない?」
茉那が声をかけると、美紗兎が頷いて、ついてくる。バルコニーはテーブルと椅子が置けるような広さで、外の景色もよく見えるけれど、今まではほとんど出たことがなかった。とくに出ようとも思わなかったけど、想像していたよりも景観が良くて、今まで出なかったことを少しもったいなく思ってしまう。
「わぁ、すっごい綺麗!」
美紗兎が手すりに掴まって、嬉しそうに空を見上げた。
「街の中でも意外と星って見えるんだね」
街といっても少し都心部からは離れているから、この辺は比較的星が見やすいのかもしれない。
手すりのそばではしゃいでいる美紗兎の後ろから、そっと首元に手を回した。
「みーちゃんと一緒に見られて嬉しいな」
「わたしもだよ!」
喜んでくれている美紗兎の耳たぶをそっと唇で挟み込んだ。
「ま、茉那ちゃん!?」
「嫌だった?」
「嫌じゃないし、むしろ嬉しいけど……!」
「みーちゃんの耳たぶ柔らかくて大好きなんだよね。ずっと噛んでたいな」
「ずっとは困りますけど……」
「じゃあ、一日一回は?」
茉那がクスッと微笑みかけると、美紗兎が顔を赤らめて俯いた。
「10回くらいまでならやってもいいよ」
「やった!」
茉那が後ろから抱きしめる力を強くして、さらに体を密着させた。そのまま首筋に頬をくっつけると、美紗兎がくすぐったそうに笑うのだった。
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