第130話 女子会っぽい何か②
「え、ナー子ちゃんの好きな子って女の子なの……?」
茉那が頷いた時には、すでに空気が凍りついていることがわかった。少し引き気味な梨咲の友達の様子を見て、茉那は察した。
「えっと……」
泣きそうな顔で困っていると、横から救いの声がする。
「もうっ、この間は後輩のイケメンって言ってたのに、なんでちょっとウケ狙いしちゃってんのさ。みんな本気にしちゃってるじゃんか」
梨咲がケラケラと笑った。
「え? 冗談なの?」
「びっくりしたー」
梨咲の友達2人が元の調子に戻り、部屋の空気がまた温まる。
「すごい真剣に言ってたから、ガチのやつかと思ったよー」
なんて、梨咲の友達が冗談めかして言っていたけど、茉那の発言で空気を凍らせてしまったという事実は変わらない。茉那はその後、何を喋ったのかもよくわからず、とにかくずっと作り笑いをしてその場にいた気がする。
「ごめん、ナー子。あの子たちの態度絶対良くなかったよね」
2人が帰った後に、梨咲が謝った。
「いえ、別に気にしてないですよ」
気にしていても言えなかった。
「ほんとにごめん……」
「別に梨咲さんのせいじゃないですよ」
「ううん、あたしが誘っちゃったせいでこんなことになっちゃったんだから、わたしが悪いよ。それに、フォローとはいえ、あたしもあのあとナー子の真剣な恋を冗談みたいに言っちゃって、ごめん……」
「だから、梨咲さんは何も悪くないですから……」
そう言ってから、茉那は大きくため息をついた。
「わたし、幼馴染との恋愛早くやめたいんです」
「……今日のことがあったから?」
梨咲が恐る恐る尋ねてきたから、茉那は首を横に振った。
「違うんです。この恋は辛いだけなんです。わたし、あの子との今の関係変えたくないのに、好きになっちゃってるんで。……って意味わからないですよね」
茉那は苦笑したけど、梨咲は真面目な顔をしていた。そして、そっと茉那の両手を取って、じっと見つめる。
「ううん、わかるよ。あたし、高校時代に親友の女の子のこと好きになっちゃったことがあったんだ……」
「え?」
「だけど、恋心は当然伝えられなかった。本当は恋人同士になりたかったけど、伝えたせいで仲が悪くなったらどうしよ、とか引かれたらどうしようって思うと、何も言えなかった」
「梨咲さんにも同じようなことがあったんですね……」
「今は大学は違うけど、長期休暇のときにたまに一緒に遊ぶ仲なんだ。それがよかったのか、良くなかったのかわからないけど、今は恋心は無かったことにしてるよ。心の中からうまく消すことができたから」
梨咲は寂しそうに笑った。
「あの……、どうやって忘れたんですか……? わたしも、できれば恋心を無かったことにしたいです……」
「あたしはたくさん恋してる。誰かと別れたら誰かと付き合うんだ。恋心を思い出す隙がないくらい、たくさん付き合ってるよ。今いろいろな人と付き合ったり別れたりしてるけど、それは全部昔の恋愛を忘れるため。取っ替え引っ替えしてるっていうのは、そういうこと」
「そうだったんですね……」
茉那は大きく息を吐き出した。
「あの、梨咲さん。わたしも恋したら忘れられますかね……」
梨咲が曖昧に頷いた。
「わかんないや」
「そうですか……」
「でも、もしナー子が恋愛したいんだったら、あたしも手伝うよ。ナー子ならきっとその気になればすぐに彼氏できると思うし」
「ありがとうございます。ちょっと考えますね」
「あんまり深く考えすぎちゃダメだよ」
少し道が開けたみたいで、茉那はホッとした。もっとも、この道が正しい選択だったのかはわからないのだけど……。
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