幕間 幼少期の2人〜納涼会と肝試し〜
茉那と美紗兎は、夏に開かれた子ども会のイベントで、納涼会を兼ねたお泊まり会に行っていた。
「ノーリョーカイって何?」
会場である、青少年自然の家で美紗兎に聞かれたけど、茉那もわからず、なんだろうね、と笑った。
夜になると、肝試しイベントがあったので、茉那と美紗兎も参加することになった。
肝試しといっても、青少年自然の家の近くの小山を子ども騙しな仕掛けの中で歩いていくだけ。だけど、子どもにとってはそれなりに恐怖を感じられるちょうど良い塩梅の企画だった。
「みさと、まなちゃんといっしょに回る!」
本当は低学年の子は5、6年生の子たちと一緒に回るはずだったのに、美紗兎は茉那と一緒が良いと、とても強く主張した。まだ4年生の茉那と、2年生の美紗兎。2人だけで回るのは怖いかもしれないけど、美紗兎がどうしても一緒に回りたがったから、茉那も了承した。
「みーちゃん、怖かったら、ちゃんと言うんだよ」
スタート地点で手を繋いでいた美紗兎は、恐る恐る頷いた。美紗兎も不安そうだったけど、人一倍臆病な茉那は本当は心の中でさらに震えていた。
(怖いけど、みーちゃんが不安がっちゃうから頑張らないと……!)
茉那は大きく息を吸ってから歩き出した。暗い道を歩くだけでもとても怖い。それに加えて、ところどころお化け役の人たちが驚かしたりするから、終わりがけの頃には、美紗兎は怯えてしまっていた。茉那の背中側から、お腹に手を回してギュッとくっついて歩く。
「まなちゃん、こわいよー」
「もう少しだから、頑張ろ」
そうやって声をかける茉那の声も震えていた。だから、茉那はお腹の辺りをぎゅっと抑えている美紗兎の手のひらをそっと離してから、美紗兎に向き直る。そして、そのままギュッと抱きしめた。
じんわりと体に沁みてくる美紗兎の温かさがとても心地よくてビックリした。不安な時に抱きしめる美紗兎は、茉那の心をとても和らげてくれた。気持ちが落ち着いてきてから、ゆっくりと息を吐き出す。
「あとちょっとでゴールだよ」
冷静に伝えると、美紗兎も小さく頷いてから、もう一度茉那の手を握って、ゆっくりと一緒に歩き出してくれた。
「怖かったら言ってね」
「まなちゃんにギュッてしてもらったら怖くなくなった!」
美紗兎が楽しそうに伝えてきた。安心したのは美紗兎も一緒だったみたいで、ホッとした。そのまま茉那と美紗兎は無事に肝試しを終えて、ゴールしたのだった。
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