幕間 幼少期の2人〜お泊まり会の夜〜
茉那の家でのお泊まり会の日の夜、茉那は美紗兎と共に眠ろうとしていた。それぞれ別の布団で寝るつもりだったのだけど、美紗兎がそっと茉那の近くまで来る。
「ねえ、まなちゃん。みさともまなちゃんのおふとんに入ってもいい?」
美紗兎が不安そうに尋ねてきた。まだ一人で眠るのは怖いのだろうか。
いいよ、と茉那が言うと、美紗兎はソッと茉那の布団に潜り込んだ。
「まなちゃんのおふとん、あったかいね」
「おふとんは同じやつだから、温度は変わらないよ」
布団に入って2人で横に並んで眠ると思っていたのに、美紗兎は掛け布団の中で体を丸めて、茉那の体にギュッとくっついてきたのだった。しかも、茉那のパジャマのお腹の辺りを咥えながら。
「みーちゃん、どうしたの?」
聞いたけど、何も答えなかった。代わりに布団の中から聞こえてきたのはスースーと音を立てる可愛らしい寝息だった。
「もうねちゃったんだね……」
変わった寝方をする美紗兎にしがみつかれたままだったから、茉那も横向きで眠ることにした。茉那にギュッとしがみついている美紗兎の頭をそっと撫でた。
「みーちゃんの髪の毛ふわふわしてて気持ちい良いな……」
美紗兎の温かい体と柔らかい毛はなんだか本物のウサギみたいだった。
(みーちゃんはやっぱり本当にウサちゃんなんじゃないかな?)
温かい美紗兎の体の上にソッと腕を乗せていると、茉那もそのうちに眠ってしまっていた。
だけど、それから数時間後、まだ夜が明け切っていない薄暗い陽の中で茉那は目を覚ましたのだ。美紗兎の泣き声と共に……。
「みーちゃん、どうしたの!?」
美紗兎が茉那の体から離れて、座りながら目をゴシゴシ擦りながら大きな声で泣いていた。
「大丈夫? どこか痛いの?」
茉那が美紗兎のことを抱き寄せて、心配そうに背中をさすっていた。
「うぅ……、まなちゃん、ごめんなさい。みさと、おねしょしちゃった」
美紗兎のパジャマの袖が涙を拭き続けたせいで濡れていた。
「そんなの気にしなくてもいいよ」
「まなちゃんのパジャマもぬらしちゃった……」
くっついて寝ていたから、ちょっとだけ濡れてしまってはいたけれど、そんなに気にすることでもなかった。でも、美紗兎はおねしょをしてしまったことに、とても罪悪感を持っているようだった。
「大丈夫だよ、ちょっと待ってて」
茉那は洗面所に行って、ドライヤーを取ってくる。
「これで乾かしたらバレないから」
茉那は片手で美紗兎の頭を撫でながら、もう片方の手で手際よくドライヤーを布団に当てていた。テレビアニメのキャラクターが布団にドライヤーを当てておねしょを乾かしているのを見たばかりだったから、その技を借りた。
「……まなちゃん、ありがと」
美紗兎がギュッと茉那にしがみついた。布団のおねしょが乾いた頃には、美紗兎の涙も止まっていたのだった。
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