第59話 久しぶりのボッチの味②
「ごめんね……」
「茉那さんは何も悪くないんですから、謝らないでくださいよ……。わたしがちょっと変なこと言っちゃったのが悪いんですから。ていうか茉那さんさっきから何回謝ってるんですか」
美紗兎が目を細めて茉那のことを優しくみつめる。まだ息が整わない茉那を見て、美紗兎が何事もなかったかのように話し続ける。
「でも、また茉那さんと会えて嬉しいです。なんだか一緒に居たら茉那さんってすっごく落ち着くんですよね。ギュってしたらあったかい気持ちになれるんですよ」
そう言うと、美紗兎が茉那のことをギュッと抱きしめた。
「みーちゃん!?」
茉那も美衣子と抱き合ったときに幸せいっぱいな気分になれたから、理解できないでもない。だけど、それは美衣子みたいに魅力的な子だから嬉しい気分になるわけで、わたしなんか抱きしめてもメリットはないのに、と茉那は思った。
「子どもの頃よくギュッとしてもらったからなんですかね。わたし茉那さんに抱き着いてると、なんだか心が落ち着いてくるんです……」
久しぶりに再会したばかりにも関わらず、抱き着かれて落ち着くのは茉那も同じだった。
少しの間、茉那も温かさに浸っていると、ベンチで横に座ったまま茉那のことを抱きしめていた美紗兎の身体がグッと重くなる。美紗兎は脱力して、体を茉那に預けきっていた。
「みーちゃん、重いよ……」
美紗兎は身長は女子高生の平均くらいで体型は細身な方だけど、小柄な茉那は突然体重をかけられてしまったら動けなくなってしまう。静かになった美紗兎の背中を軽くポンポンと叩いて、体を起こすように促したけど、反応はない。
「みーちゃん、いきなり静かになってどうしたの……? って、もしかして眠ってる?」
茉那の耳元でスースーと小さな寝息が聞こえてきていた。
「あの……、みーちゃん、起きて」
茉那は引き続き、痛くないように優しく背中を叩くと、茉那の耳元でクスクスと小さな笑い声がした。髪の毛が揺れて耳に当たりこそばゆかった。
「さすがに本当に寝てはないですよ。もうわたし、さすがに茉那さんのこと抱きしめながら眠る歳じゃないですし……」
小学校低学年のころくらいまで、茉那の家にお泊りをした美紗兎は眠るときには絶対に茉那の身体に触れながら寝ていた。手を握りながらだったり、髪の毛を掴みながらだったり、体全体でハグしながらだったり(さすがにハグされた日は茉那も寝苦しかったから美紗兎が眠ったのを見計らって体から離れたけど……)。
ゆっくりと美紗兎が茉那から身体を離した。
「でも、茉那さんに抱き着いてたらすっごく気持ち良くて、あったかい太陽の光と合わさったら本当に寝ちゃいそうになりました」
えへへ、と笑う美紗兎に茉那も笑い返した。
茉那の方も抱き着かれてすっかり気持ちも落ち着いていて、いつの間にか涙もすっかりおさまり、呼吸も整っていたのだった。
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