第18話 茉那とのクリスマス②

「美衣子ちゃんの作ってくれたケーキすごくおいしかったよ……!」


茉那が嬉しそうに笑いながら自分のおさげ髪を優しく撫でていた。そんな顔を見ていると、美衣子も嬉しくなってくる。


「喜んでもらえてよかったわ」


2人ともケーキを食べ終えると、茉那が小さな声で、「あ、そうだ」と呟いてから立ち上がり、勉強机の上に置いてあった小さな袋を持って来た。それを、俯きがちに顔を赤らめながら渡してくる。


「あの、美衣子ちゃん。これ……」


可愛らしくラッピングしてあるのがクリスマスプレゼントであることはすぐにわかった。


「そんな気使わなくて良いのに。わたし何も持ってきてないからなんだか申し訳ないんだけど」


美衣子の言葉を聞いて、茉那が大きく首を振ると、柔らかそうなおさげ髪が無造作に揺れた。


「あんなに美味しいケーキ焼いてきてくれたのに、むしろわたしの方こそ全然ごちそう出せなくて、申し訳ないよ!」


「あんなのでいいならいくらでも焼いてあげるわよ」


「わあっ、美衣子ちゃんのケーキまた食べたいから嬉しいな。また焼いて欲しい!」


笑顔の茉那を見ていると、美衣子もなんだか気分がよくなってくる。


「これ、今開けても良いのかしら?」


美衣子が尋ねると、茉那が大きく頷いた。


「喜んでくれると嬉しいな……」


茉那が緊張した様子で美衣子の反応を伺っていた。


中から出てきたのは可愛らしいウサギのキャラクターのイラストの描いてある前髪クリップ。少し子どもっぽい気もするけれど、基本的には家で使う物だし問題はなさそう。


それに、茉那が一生懸命選んでくれたのかと思うと、微笑ましくなり美衣子は自然と笑みを浮かべてしまう。


「ありがと、茉那」


さっそく付けてみようかと思ったけど、せっかくだからと思って、茉那に髪留めを手渡した。すると、なぜか茉那がとても不安そうな顔をするから美衣子が首を傾げていると、震えた声で茉那が尋ねてくる。


「もしかして、嫌だった……?」


「そんなわけないでしょ!」


返品したわけじゃないのに、茉那がしょんぼりとしているから、美衣子が慌てて顔の前で手を大きく振って否定した。


「そうじゃなくて、茉那に付けてみて欲しいのよ?」


美衣子は自分の前髪を人差し指で指し示す。


「え? 美衣子ちゃんの髪に?」


美衣子が微笑みながら頷くと、茉那は前髪クリップと美衣子の前髪を見比べながら、迷ったように呟いた。


「いいの……?」


「わたしから頼んでいるのに、嫌なわけないでしょ」


美衣子がクスクスと笑うと、茉那は緊張した面持ちでそっと美衣子の前髪を束にして持った。


「つ、つけるね」


「そんな緊張しなくてもいいのに」


茉那が緊張した手つきで、ゆっくりと優しく美衣子の前髪に前髪クリップを付ける。美衣子自身の前髪と茉那の呼気がおでこに当たり、少しくすぐったかった。


できたよ、と茉那に言われて、美衣子はカバンから鏡を取り出した。


前髪には可愛らしいウサギのキャラクターがついている。茉那が選んでくれたものだと思うと、家で一人で洗顔やメイクをするときでもいつもよりも楽しい気分になれるかもしれない。


ありがと、と美衣子はもう一度伝えてそっと前髪クリップを外す。可愛らしいウサギをそっと指先でさすってから、ゆっくりと袋に戻しておいた。

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